2014年1月24日金曜日

月刊神戸読書アラカルテ(9)


 【海】史(10―9

 『月刊神戸 読書アラカルテ』(9

市井仁(その3

 第17号に『本棚の片隅から 雑誌篇() 「面白半分」臨終号』寄稿。

『面白半分』という雑誌があった。197112月創刊。発行人、佐藤嘉尚。初代編集長・吉行淳之介はじめ人気作家が交代で編集長を勤めた。野坂昭如、開高健、五木寛之、藤本義一、金子光晴、井上ひさし、遠藤周作、田辺聖子、筒井康隆、半村良、田村隆一。

 野坂時代の72年、永井荷風作といわれる小説「四畳半襖の下張」を全文掲載したが、わいせつ図書で発禁。腰巻大賞というのもあった。しかし、80年廃刊。


『臨終号』では歴代編集長が寄稿。

ヒキガエルの目  開高健

残り時間の予約  五木寛之

サパ・ヒントの家  藤本義一

四人のお姫様  井上ひさし

雑誌「面白半分」の倒産  野坂昭如

最初の記憶  筒井康隆

腰巻大賞のこと  田辺聖子

――〈比較文化論的研究〉のサブタイトルのもと、「岩波書店と面白半分の場合」という原稿が、アホウドリこと阿奈井文彦の〈葬式ルポ〉とともに、それぞれ4ページを占めていて、ともに大変興味深い内容である。創刊の企画段階から、今回のこの臨終号の広告集めにまで、終始関わってきた吉行淳之介の「初代編集長の弁」、最終頁の「冥途より」の元発行人佐藤嘉尚の2人の言葉と、面白半分のアシアト(目次・タイトルでは足形のイラストが4つで表現されている)とではほとんど過不足なく「面白半分」の消長を知ることができる。ウスッペラな頁数ながら、見事な編集手腕というほかない。――

 市井は、「これはと思い得る雑誌が出たときは、とことんつきあう主義」=[定期購読、完全読破]だが、『面白半分』はそうではなかった。実は、9年も存続するとは思っていなかった。編集長、オーナー、関係者たちの健闘を讃えている。

――本誌とは別に臨時増刊の形式で相当数の特集が組まれたが、これらは貴重な記録(特に「四畳半裁判証言全記録」のシリーズ)である。「面白半分」よ、成仏せよ。南無!――

 

 

 市井仁の寄稿は南天荘書店のPR誌『野のしおり』で続いていく。『野のしおり』については後日改めて。

 写真、「市井仁」が本名で出版した『本と人を糧に』(編集工房ノア、2002年)。

(平野)

2014年1月23日木曜日

月刊神戸読書アラカルテ(8)


 【海】史(10)―8

 『月刊神戸 読書アラカルテ』(8

市井仁(その2

15号掲載 『本棚の片隅から 雑誌篇() 「落丁」――書店読書誌の先駆――

「書店読書誌」の先駆的存在、大阪「書肆青泉社」発行『落丁―読書のしおり――を紹介する。

「青泉社」は堂島にあった本屋。経営者・木村英造は本屋のかたわら私財を投じ「淡水魚保護協会」を設立。出版活動を通じて自然保護運動に尽力した。協会は94年に解散したが、木村はその後も活動を続けた。「青泉社」閉店の正確な時期は不明(現在出版界のドンに照会中)。
 
 1月24日追記
 執筆者・市井さんにお尋ねしたところ、さっそく調べてくださった。
「青泉社」は1996年5月閉店、朝日新聞のビルに支店があり、そちらは98年6月閉店。元の店舗から「青泉社ビル」=ツインビルに移ったのだが、そのビルも名称が変わっている由。
 市井さん、寒い中、調査ありがとうございます。
 
 
――大阪のメインストリートの1つ、四ツ橋筋に面して、毎日新聞の大阪本社があるが、その道路をはさんだ向い側、ウッカリすると見過ごして通り越してしまうほどに目立たない広さ15坪ほどの小さな書店、一般読書人よりも、むしろ出版業界人により知られた存在だといえる書店は、その噂を聞いて初めて訪れる人には意外に映ることだろう。ただし、店内の書棚に陳列された書籍を11冊ながめわたせば、「落丁」誌上で展開される硬派の業界人としての論理と、紹介されるブック・リストの内容も納得がいく。――

 さて、『落丁』。196310月から7511月まで、13年間で29号発行。

――毎号綿密な取材を要したであろう読みごたえのある特集と、青泉社の立場からえらんだブック・リストを掲載している。昨今、どこでも発表されている似たりよったりのベスト・セラーではないブック・リストを通読すれば、本とは何かということに対する、この書肆の抱く単明な主張が感じとられる。

 印象に残る特集を挙げている。

或る小さな出版社の話:3号(1964.6

ある編集者の歩いた道:4号(1965.4

何故関西では出版は育たないか? :5号(1965.10

本が商品であることのむつかしさについて:7号(1966.6

本は買われた後でどうなるか:8号(1966.10

書店の万引について:10号(1967.6

大型書店問題を考える:18号(1970.2

……

それぞれの特集について説明。出版物、出版人紹介。出版界分析。返品。万引、読書週間など業界のタブーも。

――こうした良質の企画と困難な取材による特集とが、一書店の店主の独力で刊行されていたことに深い敬意を払いつつも、それを支えていた固定読者層の存在を想像すれば、目に見えぬ糸で結ばれた読書人の連帯を感じ、羨望の念を禁じ得なかった。だがしかし、書籍販売を通じて良質の読者層を獲得・形成していくことと、商いの上でも隆盛の道を辿ることとは、良書であり、かつ大量の読者に受け容れられる書物と同様に、大変困難な命題である。主宰者木村英造氏も、折に触れてそうした意味のことを語っておられるが、悪貨は良貨を駆逐するが如き業界の変化を目の当りにして、「落丁」続刊の意欲を阻喪されたことが、期待空しく中絶となっている主原因であるという。現在のところ復刊する意図ももたないということである。――

 市井、復刊は「ないものねだり」だとわかっている。出版業界(本屋業界も含め)のマス・セールス、やっつけ仕事の本、経費削減・利益優先の現状を憂う。それでも、豊富な資金力で成功するのを見聞きすると「複雑な心境」に陥る。

 最後に発行中の書店読書誌に向けて。

――たとえ一年に一回だけでもいい、われわれ読者の蒙を啓いてくれるとともに、出版界の真の事態がいかなるものであるのかを衝くような」記事が掲載されることを大いに期待したい。――
 
 
 
 
 

 ぜひ『落丁』現物を拝見したいと思うが、今となっては無理か。


 『ほんまに』営業で、ゴローちゃん&プーおじさん京都珍道中。内容は恥ずかしくて言えない。個人的にお聞きになりたい方は「くとうてん」まで。

 恵文社一乗寺店、古書善行堂とも売り切れで追加注文を持参。ありがとうございます。

 恵文社では店長さんとブログで紹介してくれたYさんにお会いできた。

 善行さんには激励と励まし(おんなじやん!)、今後のアドバイスをいただいた。

 いよいよ在庫、底が見えてきました。読者の方々、販売くださっている皆様に感謝いたします。
(平野)

2014年1月22日水曜日

月刊神戸読書アラカルテ(7)


 【海】史(10)―7

 『月刊神戸 読書アラカルテ』(7

市井仁(いちいひとし)その1

外部寄稿者、ペンネーム。現在、活動の第一線からは引いておられるが、関西出版界のまとめ役・相談役というべき人物、Kさん。執筆時は仏教書・教育書版元在籍。

14号 『本棚の片隅から 雑誌篇()「ぶっく・れびゅう」(創刊号)』

15号 『同上      雑誌篇(Ⅱ)「落丁」――書店読書誌の先駆――』

16号 『同上      雑誌篇(Ⅲ)「面白半分」臨終号』

 
14号『本棚の片隅から 雑誌篇()「ぶっく・れびゅう」(創刊号)』より

 情報があふれ、個人誌から巨大マス雑誌まで、数多くの雑誌が生まれ消えた。情報化社会=「情報禍」社会と言われたのはひと昔前。その時代に神戸で「呱呱の声をあげた雑誌」があった。

それが『ぶっく・れびゅう』

 市井の紹介。

――厚口クリームコート紙の白い表紙の変型判、本文84ページ、特集はジョン・レノンと小野洋子で両人の日本の首相へ宛てたメッセージや滝口修造、草森紳一、秋山邦晴といった筆者が特集頁に並んでいます。れびゅうにとりあげられているのは4冊、次がそのタイトルと書名と執筆者名です。

サヴィンコフの死 『牢獄』川崎浹訳・白馬書房  彦坂諦

釜ヶ崎と東大 『爆弾と銀杏』マイケル・ギャラガー/太田浩訳・講談社  仲村祥一

美術批評試論 『反体制の芸術』坂崎乙郎著・中公新書  川桐信彦

ロジェ・カイヨワについて 『人間と聖なるもの』小苅米訳・せりか書房  井上俊

そして、今は亡き辻まことの「石族譜」①溶岩という画文と、竹薮のあるじ富士正晴氏の主宰する雑誌についての興味深い裏話ともいうべき「同人誌『VIKING』小史」がともに連載の緒についています。――

 市井は大学時代のサークル活動で発行人に会い、「雑誌の内容分析をしてみませんか」と言われ預かった。

――雑誌の瀟洒な体裁とエディトリアル・デザイン、あるいはタイポグラフィの扱いの新奇性に魅せられたことは憶えています。――

 その後、発行人との接触はなく、雑誌がどうなったかも知らなかった。しかし、出版を志す若者に大きな刺激となったことでしょう。

――文化都市神戸では、今日もタウン誌をはじめとして、ユニークな版元の出版活動や、新聞社の出版事業も旺盛に続けられています。そうした中のひとつの思想表現活動として、『ぶっく・れびゅう』誌があらわれ、そしていつしか消えていったということを、神戸を愛する一読書人として記憶にとどめておこうと思います。――

 市井は、雑誌は時代を写す鏡、と言う。

――1970年という年を、いや、1980年という年を知るのには、その年の主要雑誌の目次を繙けばいいんです。――

 


『ぶっく・れびゅう』について補足。


北沢夏音『Get back,SUB!』(本の雑誌社)に詳しい。

――『ぶっく・れびゅう』創刊号の特集「ジョン・レノンと小野洋子」は、アヴァンギャルド芸術の守護天使であり「精神上の父」である、瀧口修造の全面的な協力を得て、それまでまともに知られていないばかりか、スキャンダルに貶められてきた二人のアーティストの本質を、日本で初めて誠実に伝えようとする壮挙だった。――(同書、9P12P

 
1号 70427日発行 定価320円 縦241×151 編集人:小島素治 発行人:奥村計隆 発行所:日本書評センター 編集部:神戸市生田区山本通1丁目31/東京都渋谷区桜ヶ丘14-10 発売元:渋谷大盛堂書店

特集=ジョン・レノンと小野洋子

ヨーコとジョンにおくる歌  瀧口修造

ジョン・レノンの残酷物語  植草甚一

なんて幸せなご時世だ――やりきれないものの殺意  草森紳一

詩集 GRAPEFRUIT  小野洋子

パイクのヨーコ・オノ論について  秋山邦晴

……

2号は同年7月発行、特集「チャーリー・ブラウンとスヌーピー」。

3号は9月予定で原稿も揃っていたが、発行元が突然休刊とした。編集の小島は誌名を改め再出発。そのままSUB』創刊号として12月発行となった。
伝説の雑誌 SUB”誕生前史。

『ぶっく・れびゅう』の書影はこちらで。
http://kanabaka.exblog.jp/14586928


 『ほんまに』新規取扱い店

【東京】

ジュンク堂書店池袋本店 03-5956-6111

 
「くとうてん」の在庫が少なくなってきました。ありがとうございます。

読売新聞神戸総局K記者が取材してくれました。記事になるやろか?
 (平野)

2014年1月21日火曜日

月刊神戸読書アラカルテ(6)


 【海】史(10)―6

 『月刊神戸 読書アラカルテ』(6

「つつみたかひこ」(その2

6「モントレイの本屋」  アメリカ旅行、本屋探訪記。
 
TT」名で、

13「乱丁亭日常」 5ページ

――どうかHonyasanと発音して下さい。これはKという街のK書店に働くTという書店員第23号が、誰にでもしゃべる話である。彼はもう30を越しているであろう。が、一見したところは、いかにも若々しい狂人である。――

 自ら狂人と称し、読者、本屋、同僚たち、業界問題を語る。
 
――読者が本を手に入れるためには、読者は重い罰を受けなければならないのではないか。そして最悪の罰は書店員と疎遠になることである。……――

 島田社長のこと。

――美術書担当のS氏は正義の人である。(ニーチェを引いて)S氏はかく語りき、おお、人間よ!! 本をして本たらしめている原理の、ディオニソス的とアポロ的という、絶えず読者の人口に膾炙する両概念を見よ、と。

 島田が開催している音楽コンサートをディオニソス的、ギャラリーをアポロ的と言う。

 日本文学担当のO嬢は「神秘的な女性」。

――O嬢が書物に触れると、その書物はまさにエネルギッシュな魂のゆるやかな形成を認識することを我々に教える一種の修業の書に変わっていく。――

 外国文学、人文担当のH氏は「修業僧」のごとく、祈願している。

 K氏=小林は「謙虚な人」。

――正確な仕事、白いカッターシャツが似合う、以上の2点から彼はダダイストである。トリスタン・ツアラにそっくりではないか。――

―― ダダ運動23宣言  もうごめんだ、海事なんか、機械なんか、語学なんか、教育なんか、電気なんか、地図なんか、郷土なんか、新書なんか、文庫なんか、ありとあらゆるもの、もうたくさんだ、何もかも、何もかも。もはや視線はいや。もう言葉はいや。けれどもぼくらはダダ。読者のみなさん、僕はほんとにみなさんが好きだ、ほんと崇拝しているんだよ◎――
 
――以前は、もしおれの思い出がたしかだとすれば、K書店におけるおれの生活はひとつの饗宴(うたげ)であった。そこでは、あらゆる本が流通していた。そこでは、あらゆる雑誌が並べられていた。ある夕ぐれ、おれは、本屋を、俺の膝の上に坐らせた。苦々しい奴だと、おれは思った。それで、おれは奴に毒づいてやった。――

 
 


私の読解力では真意をつかめないが、本と読者と本屋と海文堂と仲間が好きだ、ということなのでしょう。

 『ほんまに』新規取り扱い店

【東京】

MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店 03-5456-2111


 ありがとうございます。
 追加注文もいただいています。ありがとうございます。


 『ほんまに』第15号 取り扱い店

 
【神戸市中央区】

ギャラリー島田 078-262-8058 

ジュンク堂書店三宮店 078-392-1001

ジュンク堂書店三宮駅前店 078-252-0777

トンカ書店  078-333-4720

プラネットEartH  050-3716-3540  

 【神戸市灘区】 

ワールドエンズ・ガーデン 078-779-9389 

ブックス・ガルボ 078—955-8442 

 【尼崎】

街の草 06-6418-3511

 【大阪】

カロ ブックショップ アンド カフェ 06-6447-4777

紀伊國屋書店梅田店 06-6372-5821

紀伊國屋書店グランフロント大阪店 06-7730-8451

MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 06-6292-7383

三島郡島本町 長谷川書店 075-961-1560

 【京都】

恵文社一乗寺店 075-711-5919

古書 善行堂 075-771-0061

 【名古屋】

七五書店 052-835-0464

ちくさ正文館 052-741-1137 

 【岐阜】

徒然舎 058-337-0444

 【静岡】

水曜文庫 054-266-5376
 
【東京】

NR出版会事務局 03-5689-3886

往来堂書店 03-5685-0807

古書ますく堂 090-3747-2989

ジュンク堂書店池袋本店 03-5956-6111

トマソン社 通販 http://tomasonsha.com/

MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店 03-5456-2111

リブロ池袋本店 03-5949-2910

 (平野)