2024年12月31日火曜日

谷根千文学傑作選

12.20 孫電話。姉妹ともカゼ回復。妹は自分をアニメのプリンセスと思っているが、腕まくりして半パン。この格好が好きらしい。姉はたし算ひき算のくりあがり、くりさがり、それにかな遣いを教えてくれる。

12.22 「朝日歌壇」より。

〈図書館は有益資料の書庫なれど無料貸本屋と呼ぶ人もおり (津市)伊藤智司〉

〈図書館に入りてまづ心いたむかな新刊書棚に防犯カメラ (加東市)藤原明〉

12.24 仕事は臨時出勤。夜、孫電話。サンタのプレゼント楽しみ姉妹。ヂヂババにはサンタ来ないけれど、年末年始一緒に過ごせそうなので、それが何よりのプレゼント。

12.25 休み取って鵯越墓参り。いつものことだがお参りしているのは高齢者ばかり。ヂヂはまだ若手の部類。

午後図書館調べ物。お世話になっている司書さんから本の進行具合を訊ねられるが、毎度「遅れてまして」の言い訳。すべてヂヂの責任。

ヂヂババ、孫帰省に備えて掃除、布団干しなど準備。

アリス福岡から郵便物着。秋に亡くなった古本屋さん店主のお供養品を言付かって転送してくれた。喪主様にお礼状。

12.26 朝から家人の指令をこなすのに忙しい。明日用の料理を仕込み、買い物、家人の雑誌購入。

駅まで孫たちのお迎え。駅に元海文堂スタッフがいて挨拶。よそ様のヂヂババさんたちもたくさんお迎えにいらっしゃっている。孫姉はご機嫌、妹は地下鉄内で突然「パパー」と泣き叫ぶ。パパさん到着は年末ギリギリになりそう。

12.27 『谷根千(やねせん)文学傑作選』(森まゆみ編、中公文庫)。「谷根千」とは東京都台東区上野から文京区、荒川区、北区にまたがる地域。本書編者・森らによる地域雑誌「谷中・根津・千駄木」(19842009年)の略称から「谷根千」の名称が広まった。上野公園、美術館、芸大、東大など文教地区であり、寺町、広大な墓園、住宅地、職人の町とさまざまな顔を持つ。かつては遊郭もあった。山手と下町をつなぐ多くの坂道に抜け道、袋小路が絡む。高台では学者や芸術家が邸を構え、谷の若者たちは貧しくとも夢に向けて懸命に生きた。本書はゆかりの作家・著名人の28作品を収録。幸田露伴「五重塔(抄)」、樋口一葉「日記(抄)」、森鷗外「サフラン」、寺田寅彦「イタリア人」、永井荷風「日和下駄(抄)」、江戸川乱歩「D坂の殺人事件」、伊藤晴雨「文京区絵物語(抄)」どなど。

〈広小路から上野公園へ入る桜並木の坂は東京北限の大地への登り口なので、谷中・日暮里・田端・飛鳥山から果ては秩父連山へと尾根道は遥かにつづく、はずだ。おのずから気分は雄大に、花見時などドンチャンここで浮かれるのもむりはないのだ。/尾根道の両側に、坂なんか腐るほどにあります。ただし明治十六年(一八八三)の上野駅開業このかた、東側は鉄道線路にあらかた削られてしまい、いきおいご案内は西に偏する。〉(小沢信男「上野 むかしを偲ぶ坂めぐり」)



 ヂヂは十七八年前に上野からぶらぶら歩いて回った。今は年に一二度上野の美術館や家人先祖の墓参りに行くくらい。

12.29 孫のお供でデパート、本屋さん。注文品・手帳など今年最後の買い物。

読書は、京極夏彦『書楼弔堂 霜夜』(しょろう とむらいどう そうや、集英社)に取りかかる。シリーズ最終巻。

12.30 マンション最終勤務日。帰省する人、帰省してきた人、いつもと変わらない生活の方、それぞれの年末年始。

12.31 デパート買い出し。地下食品売り場やおせち予約受け取り場所は大行列。楽しい嬉しいお正月を過ごせる人たち。一方、地下道のベンチで寒さをしのぐ人たちも。

(平野) 

2024年12月19日木曜日

神戸――戦災と震災

12.12 古書タカさんからハガキ届いて電話。ちょうど本屋さんの担当者と彼の新刊書の話をして帰ってきたところだった。それを伝える。

12.13 会社の会議の後、仕事仲間と忘年会。体調悪い人が多く、参加7人のみ。

12.14 午前中臨時仕事、約1年ぶりのマンション。担当者が代わって、見違えるほどきれいなっている。管理室内も整理整頓行き届いていて、感服。

 急いで帰って、家人と新開地の喜楽館昼席。中堅・若手の熱演楽しむ。新開地を歩くのは久しぶり。独特の風情というか、ちょっとゴミゴミしてタバコ臭くて、ざっくばらん。昔ながらのお店、パチンコちんじゃら、立ち食い・立ち飲みに古本屋に、教会や保育園も並ぶ。

12.15 「朝日歌壇」より。

〈駅前の書店主(あるじ)は新聞の書評、広告みな頭の中 (相模原市)石井裕乃〉

〈プレゼント交換会に持つてゆく谷川俊太郎さんの本 (相馬市)根岸浩一〉

 ほかにも谷川俊太郎追悼歌。

「朝日俳壇」より。

〈詩人青星へ人類まだ孤独 (塩尻市)田原章弘〉

〈再読に若き傍線冬銀河 (仙台市)柿坂伸子〉

12.17 午前中臨時仕事。帰宅して家人指令の用事あたふたと済ます。本屋さんに寄って顔見知りの担当さんを探すが、見つからない。レジの人に伝言お願い。

12.18 元町駅前に「BIG ISSUE」の新しい販売員さんがいらして、ありがたい。家人に頼んで493号購入。

 村上しほり『神戸――戦災と震災』(ちくま新書)読み終わる。新書判ながら360ページ超。1868年神戸開港からの神戸の歴史を公文書に基づき繙く。特に阪神大水害、大空襲、阪神淡路大震災の被災と復興を大きな柱とする。著者は1987年生まれ、神戸育ち、阪神淡路大震災を経験。神戸市職員(公文書専門職)、大阪公立大学特任准教授、都市史・建築史が専門。著書に『神戸 闇市からの復興――占領下にせめぎあう都市空間』(慶應義塾大学出版会、2018年)ほか。

〈神戸はふりむかないまち、と昔から言われてきた。また、新しい文化や技術を進んで受け入れてきた「進取の気風」を継承してきた。/しかし、ふりむかない傾向と進取の気風とは、決して同義ではない。歴史に興味を持って史実を理解したうえで、ノスタルジーに浸(ひた)ることなく現在を見つめ、未来を目指して進むことはできる。〉(おわりに「神戸」を語るのは誰か)より。



(平野)

2024年12月12日木曜日

上林暁 禁酒宣言

12.5 林真司『民際学者、アジアをあるく』(みずのわ出版)。経済学者・中村尚司(1938年生、龍谷大学名誉教授)と師、仲間たちの人となり、研究と活動を紹介。中村はアジア経済・農業調査、環境問題など「生命系の経済学」を提唱。「民際学」とは聞きなれない言葉。国同士の関係ではなく、人間同士の交流を社会活動の中心にフィールドワークを重要視する。「循環性の永続」「多様性の展開」「関係性の創出」を柱に次世代社会を考える。外国人労働者の支援にも尽力。

 大阪の編集工房ノアからPR誌「海鳴り 37届く。例年1回刊行だけど、今年は2冊目。

 京都の編集グループSUREから新刊書、鶴見俊輔『アメリカ哲学』2008年こぶし書房版復刊)着。




12.6 隣国権力者強権発動するも、市民は民主主義擁護の行動。軍も冷静。

12.7 本屋さん、家人の雑誌が目的。ちくま新書の新刊も出ていた。村上しほり『神戸――戦災と震災』2025年は神戸大空襲から80年、阪神淡路大震災から30年の節目。

12.8 「朝日歌壇」より。

〈半年で本の貸し出し五十回賢治に挟む褒美の栞 (相模原市)宮崎清美〉

〈十六歳の吾子の棺に忍ばせし『二十億光年の孤独』四十年過ぐ (成田市)鈴木喜代子〉

「朝日俳壇」より。

〈しゆんたらうくしやみをひとつゆきにけり (八王子市)額田浩文〉

12.9 孫電話。妹の幼稚園お遊戯動画でなごむ。姉はカゼ回復。

12.11 『新版 禁酒宣言――上林暁・酒場小説集』(坪内祐三編、ちくま文庫)1999年初版、再編集。

〈小生、この度感ずるところあって、酒を止めることにしました。断然止めたいと思います。〉

 表題作「禁酒宣言」の冒頭。上林は病妻もので知られる私小説の作家。戦後妻を亡くし、自らの酔いどれ生活を題材に連作。中央線最寄駅から家まで何軒も馴染みの飲み屋があり、都心で飲んでも帰り道にはしご酒。お店の女将に恋心を抱いたり、愛読者に遭遇したり。泥酔、乱酔、飲んで騒いで、醒めたら宿酔、自己嫌悪。飲んべはどなたも身に覚えあり。上林はすべてを告白するが、モデルのお店や女性たちはどう思ったのだろう。



(平野)

2024年12月5日木曜日

象徴天皇の実像

12.1 師走とはいえ、季節感が混乱。すぐ日は過ぎる。

12.2 漢文入門の新書を読む。円満字二郎『四字熟語で始める漢文入門』(ちくまプリマー新書)。四字熟語を題材にして漢文読解の基本ルールを学ぶ。身近な熟語でも自分の理解と微妙に意味が違うことを改めて知る。本屋時代、自分で「大器晩成」と言っていた。大器は完成まで時間がかかる、と自嘲気味に。原典は『老子』、未完成のものほど偉大、という意味。このまま未完成で過ごそう。

12.3 天気良し。兵庫和田岬の和田神社にお参り。祭神は、天御中主大神(あまのみなかぬし、天地創造の神)、蛭子大神(ひるこ、えびす様)、市杵嶋姫大神(いちきしまひめ、弁天様)。神使・白蛇の「巳塚」も祀られている。年賀状用に絵馬(白蛇)を写す。

 

 原武史 『象徴天皇の実像 「昭和天皇拝謁記」を読む』 

岩波新書 960円+税



2021年から23年、岩波書店から『昭和天皇拝謁記――初代宮内庁長官田島道治の記録』(全7巻)が出版されている。田島道治(みちじ、18851968年)が昭和天皇と交わした会話や書簡、彼の日記など貴重な資料。表に出ることのなかった昭和天皇の日々の姿・言動(肉声というべき口調まで)が詳細に記録されている。国際情勢、占領下での日本社会の出来事、国内巡幸など、時に饒舌に意見を述べ、愚痴をこぼす。皇室内の家族問題、やんごとなき身分だからこその複雑な事情がある。

政治について、憲法について、自身の戦争責任や歴史観、家族・政治家・軍人らについても詳しく語っている。その発言には戦後民主主義をまだ理解し得ていないと思われるものもある。初の「象徴天皇」であるが、最後の「大日本帝国憲法」の天皇だった。平成の明仁天皇が戦争に対する反省を繰り返し述べた姿とはかなりずれる。

(平野)

2024年12月1日日曜日

『モダニズム出版社の探検』余話

11.24 「朝日俳壇」より。

〈晩年や本を旅する芭蕉の忌 (愛知県阿久比町)新美英紀〉

〈小春日やはらぺこあおむし読む夫 (大阪市)藤田富美恵〉

〈古書街に探す青春枯葉(かれは)舞ふ (北本市)萩原行博〉

11.25 「朝日新聞」夕刊、「伝説のジャンプ」記事。東日本大震災後、仙台市の個人書店・塩川書店五橋店がお客さんからもらった「週刊少年ジャンプ」の最新号を子どもたちに読ませてあげようと「少年ジャンプ読めます!!」の貼り紙を掲げる。物流が止まり、いつものマンガを読めずにいた子どもたち。順番に読むことができた。週刊誌はボロボロになった。震災から13年。今年831日、残念ながら塩川書店は閉店する。その最後の日の動画〈「伝説のジャンプ」が生まれた本屋 最後の日〉、YouTubeでご覧いただける。

11.29 孫動画着。姉編、夕暮れの公園で逆上がり練習、できたー! 妹編はディズニーアニメのプリンセスのマネ。歌いながら歩く、姉が茶々入れて高い声で歌う。ヂヂババちゃんりん、大笑い。

11.30 早起きして臨時仕事。湊川神社に巳年絵馬登場。

 

 高橋輝次 『「モダニズム出版社の探検」余話』 著者出版 頒価1300



 先日紹介した『戦前モダニズム出版社探検』補遺。高橋は原稿校生中、校了の後も探索を続けた。「タカハシがテルツグする」は終わらない。著書刊行よりこの冊子が先に完成。

種村季弘の東大新聞時代、亀山巌のエッセイ集、ラリー・シーモン(無声映画時代のアメリカの俳優、谷崎潤一郎や稲垣足穂らが注目した)のこと、「椎の木」のことなど。

それらに加えて、高橋の探索テーマ、文才のある俳優の本(大友柳太朗、松村達雄)紹介、神戸文学史の一端も。

(平野)