2022年12月31日土曜日

枯れいそぐ

12.30 家族が増えると当然洗濯物が増える。狭い物干し場は満タン、なかなか乾かないのだけれど、うれしい。

 訃報、サッカーの王様・ペレ死去。

 年末用の本、黒川博行『連鎖』(中央公論新社)に取り掛かる。著者得意の警察バディ物。

12.31 訃報。建築家・磯崎新。ジャーナリスト・矢崎泰久。ご冥福をお祈りする。

「波」1月号の「掌のうた 俳句」(小澤實 選・解説)から。

〈枯れいそぐものに我が足我が手あり 河瀬無窮亭〉

「山の木々の葉も落ち、野の草は枯れ朽ちてゆく。その中にあって、ことに枯れ急ぐものに、わたしの足や手がある」

 無窮亭(18881971年、本名・虎三郎)は呉服商人、茶人。古美術を愛好し、愛酒家でもあった。

 


 体力の衰えは認識している。今年の初め頃から手指先・足先に霜焼けができるようになった。私の身体も確実に枯れてきている。来る年も霜焼けが増えそうだ。

 この年末年始は孫と楽しく過ごさせてもらっている。

 皆様よいお年をお迎えください。(平野)

2022年12月30日金曜日

辞書編集、三十七年

12.29 毎日賑やか、お祭り騒ぎ。孫姉妹のおかげでヂヂババも大張り切り。パパさんも仕事すんで来神。さらに姉妹のテンションが上がる。昼寝短いから早く寝る、よって朝早く起きる。

 神永暁(さとる) 『辞書編集、三十七年』 草思社文庫 

900+税  初版は2018年、同社より。



 著者は尚学図書、小学館で辞書編集一筋。『日本国語大辞典 第二版』『現代国語例解辞典』など多数担当。定年退職後も『日本国語大辞典 第三版』編纂に参画するほか、執筆活動、教育活動を続けている。

なぜ辞書編集者になったか、ゲラ読み、辞書編集の面白さ、新しい企画、研究者・専門家との関係、辞書とむしょ、辞書と方言、文献例・誤用、読者からの質問などの交流、印刷・製本、辞書引き学習、辞書編集以外の活動など、辞書編集の苦労と喜びを伝えるエッセイ集。

〈駆け出しの辞書編集者だったとき、上司に言われて深く印象に残っていることばがある。「辞書は発刊と同時に改訂作業がスタートする」というものである。多くの辞書は改訂版を刊行することが前提となっているが、次の改訂に向けた作業は発刊と同時に始まるので気を許すなという意味だ。だが、長年辞書編集にかかわってみると、発刊よりもさらに前、ゲラを校了にしたときから改訂作業は始まるという方が実情に近い気がする。〉

 無限に続く作業。

(平野)日本語学者「林大」(19132004年)と「林巨樹」(19242012年)。おふたり共「はやし・おおき」。小学館辞書では、前者は『日本国語大辞典』、『現代漢語例解辞典』、後者は『現代国語例解辞典』。

2022年12月27日火曜日

名短篇ほりだしもの

12.24 ヂヂババへのクリスマスプレゼントは孫来神。ご近所さんも楽しみにしてくださる。

12.25 朝買い物。新神戸駅まで孫お迎え。ヂヂババ、ルンルン。妹はLINE電話で見ているヂヂと同じかどうか判断しかねたようだが、すぐに慣れて、一安心。

12.26 訃報。渡辺京二。ご冥福をお祈りする。

 娘の横浜みやげ、東急沿線のフリーペーパー「SALUS(サルース)」1月号。特集「書店主たちの読書案内」。沿線の6書店。

 


12.27 建築家・安藤忠雄が寄付した児童図書館「こども本の森 神戸」。娘が事前に予約していて、付き添いで入館。多くはお子さん連れのファミリー。若いカップルや年配男性も。90分の入れ替え制。妹も姉と同じように本を開くが、上下逆さま。



 私事、震災コーナーに拙著を置いてくださっています。ありがとうございます。

 

 北村薫 宮部みゆき編 『名短篇ほりだしもの』 ちくま文庫 2011年初刷

手持ちは2020年第5



 宮沢章夫「だめに向かって」「探さないでください」 

 片岡義男「吹いていく風のバラッド」より『12』『16』 

 中村正常「日曜日のホテルの電話」「幸福な結婚」「三人のウルトラ・マダム」 

 石川桂郎「剃刀日記」より『序』『蝶』『炭』『薔薇』『指輪』 「少年」 

 芥川龍之介「カルメン」 

 志賀直哉「イズク川」 

 内田百閒「亀鳴くや」 

 里見弴「小坪の漁師」 

 久野豊彦「虎に化ける」 

 尾崎士郎「中村遊郭」 

 伊藤人譽「穴の底」「落ちてくる!」 

 織田作之助「探し人」「人情噺」「天衣無縫」

  ヂヂが初めて知る作家は、中村正常、久野豊彦、伊藤人譽(ひとよ)。

 中村は女優中村メイコの父。ユーモア小説。

 久野は経済学者。中村武羅夫、吉行エイスケと「近代生活」創刊。

伊藤は室生犀星に師事。戦前芥川賞候補になったが、係りのミスで選考委員全員に作品が渡らず落選したそう。

変わり種は石川桂郎、俳人。理髪店を営む。

(平野)

2022年12月24日土曜日

とっておき名短篇

12.21 仕事休み。大阪あべのハルカス美術館「アリス へんてこりん、へんてこりんな世界」。他に用事ないので、まっすぐ帰る。

電車内の伴は、『パンデミックの時代に』(ギャラリー島田、頒価300円)。ギャラリー毎月発送の通信に連載。コロナ禍の芸術家、支援者ら、ギャラリーと縁ある人たち28名、それぞれの活動、考え。

訃報、俳優・あき竹城。ご冥福を。

 


12.22 図書館、西村貫一調べ。1939(昭和14)年4月貫一がゴルフ談義を新聞「神戸日日夕刊」に寄稿。貫一がまとめた『西村旅館年譜』に記事コピー掲載。初めて知る新聞紙名、ネット検索に引っかからない。司書さんに訊ねたら調べてくださった。確かに存在した。1925(大正11)年楠町7丁目で創刊、4ページの夕刊紙。のち栄町に移る。「日本経済新聞」に改称。1940(昭和15)年政府による新聞統廃合で廃刊。さすが調べる・探すのプロ、本や資料を駆使。ありがとうございます。

 午後、花森書林に寄って、食品買物して、本屋さん。肝心のパン買い忘れ。出かける前に用事を確認したのに、ヤレヤレ。

 年賀状作成。おバカ賀状、ヂヂ来年70歳。

■ 北村薫 宮部みゆき編 『とっておき名短篇』 ちくま文庫 2011年初刷

手持ちは20218



 穂村弘「愛の暴走族」 蜂飼耳「ほたるいかに触る」 川上弘美「運命の恋人」 塚本邦雄「壹越」 飯田茂実「一文物語集」より『0108』 戸板康二「酒井妙子のリボン」 深沢七郎「絢爛の椅子」「報酬」 松本清張「電筆」 大岡昇平「サッコとヴァンゼッティ」 岡田睦「悪魔」 北杜夫「異形」

 恐怖小説集ではないけれど、怖い話が集まった。

 馴染みのない作家2名。

「飯田茂実(しげみ)」は1967年生まれ。作品は不思議な超短篇。星新一のショートショート、足穂の『一千一秒物語』ともちがう。ダンス、音楽、文学、美術など「様々な芸術ジャンルを体現しながら統合していく活動」。

〈妻子を捨てて国外逃亡してきた男が、毎晩隠れ家の周辺をうつむいて散歩しながら、「あの角を曲がると向うから妻たちが歩いてくる、今夜こそ」と胸を高鳴らせている。〉 

「岡田睦(ぼく、資料によっては、むつみ)」は以前に林哲夫さんブログで老人小説の紹介があった。1932年生まれ。消息不明らしい。

(平野)

2022年12月21日水曜日

邂逅の孤独

12.17 「朝日新聞」別刷り「be on Saturday」に目に痛い記事あり。「『片付けられない人』の対処法は」、人生相談「悩みのるつぼ」は「家中に母の本 収集癖直すには」。

12.18 「朝日歌壇」より。

〈耳鳴りを波音で消し本を読む吾の片方(かたえ)に夫はハゼ釣る (広島県府中市)内海恒子〉

12.20 午前中墓参り。寒さは幾分まし。北国豪雪のニュース。

帰宅してギャラリー島田に向かう。途中、生田神社参拝して新年絵馬写真。

ギャラリーDM作業は新年の案内。このところ仕事や雑用で欠席続きだった。ご無沙汰を詫びる。

 臼田捷治 『邂逅の孤独 地霊と失われたものと』 幻戯書房 1500円+税



 臼田は元美術雑誌編集長。本の装幀、デザイン、文字などの分野で執筆活動。本書は青春時代の恋を題材にした小説。偶然の出会いから、上京以来過ごした土地との縁を語る。

〈現実は夢よりも上手だった。/まるで回り舞台が転じて、再度同じ演目を目の当たりにしているかのようだった。あのひとと思える熟年女性が私の真正面の席に着いたのだ。十余年前と同一のシーンの再演だった。〉

 学生時代に恋した女性。就職して交際するようになり、プロポーズするが実らなかった。35年後、その女性と中央線快速下り電車の中で偶然「邂逅」した。彼女は気づかない。本人かどうか自信がない。声をかけなかった。さらに10余年後、また同じ電車内で見かける。地理的には学生時代から暮らし、働いた場所。土地の《田の神》の引き合わせか。彼女は本を読んでいる。

〈年齢から察するに老眼鏡が必要ではないだろうか。でも女性はメガネなしだ。さすがに目と手にする本の距離は若年の者よりは離れていて膝の上に置かれており、ちょっと無理しているようにも見える。実際、読むのにややつらそうな気配が伝わってくる。〉

 洋書か? かろうじて和文が見える、翻訳書? 幻想文学か人文関係か?

〈片手にしおりを挟み込むようにして器用に読み進んでいることも、読書にふだんから慣れ親しんでいることをうかがわせる。そのしおりは何も印刷されていない半透明の薄いアクリル製のようだ。あらかじめ本に挿まれていた、版元がサービスで付けたそれというよりも、女性が常用している特別あつらえものという感じ。時折、しおりから離れた手がアゴに行き、軽く添えられる。その仕草にもデリケートな味わいがある。まるで京都・広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像のよう。〉

 短く儚い遭遇、〈失われたもの〉がよみがえる。

 

(平野)表紙真ん中のおじぎしたような絵のような記号、「約物」というそう。文中の文節に用いられている。1970年代に朝日新聞で使っていた。記号ふたつをつなぐ点点(ドット)と合わせ、本書のテーマ、〈失われたもの〉〈地霊〉〈邂逅〉を表わす。



2022年12月17日土曜日

井上ひさし うま 

12.14 会社の会議、管理人仲間が集まるのは3年ぶり。この間退職した先輩あり、新入社の人もあり。指折り数えれば、私は勤務丸8年。

 PR「熱風(GHIBLI)」(スタジオジブリ)12月号津野海太郎「もうじき死ぬ人」連載開始。

〈八十代も半ばになると、老人として生きていることに飽きてくる。飽きるというか、「このまま老化のつづきとして、この世から淡々と消えていくのも、ちょっとなあ」という揺れのごときものが、どこからともなく生じてくるのです。〉



12.15 冷たい! 冷え込みました。今年もあと半月。世間の皆さんは忙しい。

BIG ISSUE445、おまけポストカードいただく。特集は「私のサードプレイス」。家でも職場でもない、第三の居心地の良い場所。



「朝日」夕刊、季村敏夫による安水稔和追悼記事。



12.16 孫電話。妹は絵本めくってとキーボード演奏して動き回る。姉は自分で髪を三つ編みにするのに一生懸命。

家人「神戸に来たらヂヂの頭も三つ編みしてあげて」

姉「ヂヂ、毛ない」

人の髪の毛で漫才するな! ヂヂバカちゃんりん。

 

■ 井上ひさし 『うま――馬に乗ってこの世の外へ――』 集英社 1700円+税



2021年末、井上ひさし未発表の戯曲が見つかり、テレビ番組で紹介された。井上が学生時代に小さな劇団の演出家に渡していたもの。

戦国時代羽前の国の小さな村が舞台。主人公・太郎は死期の迫った老母と馬1頭を連れて村にやって来る。地主に、黄金の糞をする、と言って馬を売る。地主は嘘とわかって、馬を殺し、太郎に暴行、金を取り返す。太郎は馬の皮と死んだ母親の身体を使って、地主・村人から金をまきあげる。

東北の伝説・民話をもとにした悪漢物語。地主に逆らい、母のことばや観音の説教にも従わず、自分の力のみで世間に立ち向かう。井上自身の青春の姿だろう。

(平野)

2022年12月13日火曜日

天使も怪物も眠る夜

12.11 「朝日歌壇」より。

〈荷風読み独り飯食う夕暮の淋しきことは子らに語らず (姫路市)中塚裕久〉

 年賀状準備。うさぎの絵を探すといろいろ本はあるけど、そのまま使う訳にはいかず、本棚に戻す。かわいい孫の写真も自粛。

12.13 訃報、俳優・佐藤蛾次郎、歌手・水木一郎。ご冥福を。

 図書館、「西村貫一」調べ。年末から来年1月末まで休館になるので、行っておかないと。

 

 吉田篤弘 『天使も怪物も眠る夜』 中公文庫 840円+税



 初出「小説BOC」(2016年~2018年)、単行本2019年中央公論新社より。8組(9人)の作家がルールを決めて古代から未来までつながる物語を共作(競作)する〈螺旋プロジェクト〉の一作。全部読むべきでしょうが、怠けヂヂは本書のみでご勘弁を。

 近未来の東京は壁によって東西に分断され、慢性的な〈不眠の都〉。人びとは眠りを求めていた。睡眠ビジネスがトップ企業。「面白くない小説」がどんな睡眠薬より効き目があり、「面白い小説」は発禁、焚書の対象。睡眠コンサルタント・フタミシュウは極秘プロジェクト〈王子〉に参加。過去に作られた映画「眠り姫の寝台」とその脚本の存在を知り、資料室の谷口さんに相談。グリム童話「いばら姫」が蘇る。

「眠り姫」は存在するのか、彼女は目覚めるのか。

(平野)多くの登場人物がどうつながるのか、シュウの会社は「8ドリーム」、8人の王子で八王子、酒「ゴールデンスランバー」などなど、著者の仕掛けがいっぱい。

2022年12月11日日曜日

製本屋と詩人

12.8 訃報。俳優の志垣太郎、3月に亡くなっていたそう。

12.10 訃報。映画監督・吉田喜重。俳優・江原真二郎。ご冥福を。

 一年ぶり京都大谷本廟お参り。良いお天気。家人は目的のお店二軒に振られる。一軒は入場制限、整理券要で次回は数時間後。もう一軒は閉店。ヂヂは目的なく後をついていくだけ。

 

 イジー・ヴォルケル 大沼有子訳 『製本屋と詩人』 共和国 2500円+税



チェコの詩人、イジー・ヴォルケル(190024年)の作品集。童話5篇、詩24篇、評論1篇。裕福で文化的な家庭に育つ。ロシア革命、第一次世界大戦、チェコ独立宣言という激動時代。イジーは共産党に入党。勉強しながら文筆活動。肺結核を患い、24歳で亡くなる。

 表題作は、豊かな詩人と貧しい製本屋の話。詩人は尊敬され、その詩は読む人を楽しくさせる。製本屋は病気の妻と苦しい生活。詩人は詩集を製本屋に直してもらう。製本屋は仕事ができて喜ぶが、妻の病は重い。妻に詩集を読んで聞かせると、ふたりの苦痛が詩集に吸収されてしまう。妻は息絶えた。詩人が人びとの前で詩を朗読するが、楽しいはずの詩は悲しく重苦しいものになっていた。詩人は製本屋を逮捕させる。獄中で製本屋は神様が一緒にいてくれると感じる。詩を書いて窓から投げる。その詩は読む人のしかめっ面や嘆きを終わらせる。

(平野)

2022年12月8日木曜日

天使たちの都市

12.4 「朝日歌壇」より。

〈封書にて「サヨナラダケガ人生」の言葉を添えて賀状を止めぬ (亀岡市)俣野右内〉

「朝日俳壇」。

〈新刊書買って浮き浮き鰯雲 (大野城市)中村一雄〉

12.5「みなと元町タウンニュース」364号着。Web版更新。拙稿は「西村旅館」。ああ、また誤植見落とし。「商人」が「承認」に。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/townnews/

12.6 サッカー、日本チーム善戦のすえ敗退。選手の皆さんは悔しいでしょうが、ヨーロッパの強豪に互角以上のゲーム。大拍手です。

 マンション仕事の先輩・萬さんが退職。海文堂OGでもあり、そのつながりで小、福、平が採用された。会社の有志で送別会。参加者一様に「何年お勤め?」「何歳?」と訊ねる。それは失礼じゃありませんか!

 

 チョ・ヘジン著 呉華 『天使たちの都市』 新泉社 2200円+税



 韓国文学セレクションシリーズ。表題作他、「そして、一週間」「インタビュー」「消えた影」「背後に」「記念写真」「女に道を訊く」、中短篇7作品。テーマは孤独。コミュニケーション、病、恋愛、ホームレス、いじめ、社会から受ける肉体的・精神的暴力、無関心……、主人公たちは世の底辺で不安を抱えながら生きていく。

「天使たちの都市」とはアメリカのロサンジェルス。「彼」は5歳のときアメリカに養子に出され、田舎町で育つ。ロスで働く前にソウルの語学学校入学、19歳。「わたし」は語学学校の教師32歳。韓国語初級の青年とカタコト英語の女性。ふたりは恋に落ちる。3年後、ロスの「彼」から韓国語で葉書が届く。コリアタウンのスーパーで働き、結婚して子どももいる。「わたし」は返事を出そうと思うが、書けない。ただ葉書を読み返す。一度だけ書こうとした。

……きっとわたしはこう書きたかったのだと思う。きみといた頃、わたしは五歳のきみを何度も見たと、何度もアメリカの田舎町にある典型的なウッドデッキに腰を下ろし、果てしなく続くトウモロコシ畑を見渡しながら天使たちの都市を想像したものだと、できることなら、きみと一緒にどこへでも行ってしまいたかったと、それだけが、それだけはいつだって偽りではなかったと。〉

 カバーの絵と挿絵、イシサカゴロウ。

(平野)

2022年12月3日土曜日

熱風至る

11.27 「朝日俳壇」より。

〈書より目を移せば鳥の渡りをり (玉野市)北村和枝〉

「朝日歌壇」

〈若き日に置き忘れしか老いていま高橋和巳『邪宗門』読む (八尾市)水野一也〉

 図書館、西村旅館調べ。貫一ゴルフ引退後のこと。

 大相撲、高安またも残念。サッカーも残念。

 ただいま読んでいる本、福紙あり。

 


11.28 「朝日新聞 鷲田清一折々のことば」はジュンク堂書店難波店店長・福島聡。

〈中立を要求することは、ときに普通の意見よりも攻撃的なものとなる。〉

 訃報。映画監督・崔洋一。ご冥福を。

 孫電話、姉がドレミを歌いながらキーボード練習、妹も合わせてドレミファソ。

12.1 師走。寒くなった。冬用下着に。

 「BIG ISSUE444号、特集は「片づけ楽しい時間を生む」。ヂヂは目が痛い。

 


12.2 サッカー、強豪2チームに大金星で決勝トーナメント進出。

12.3 訃報、俳優の渡辺徹、作家・佐川一政、ドウス昌代。ご冥福を。

 

 井上ひさし 『熱風至る 』 幻戯書房 各3200円+税



〈明治維新が美化されすぎているような気がしてならない。維新は果たしてそんなに美しかったのだろうか。わたしはその答えを新選組のなかに求めてみたい。姿勢をできるだけ低くして、歴史の陰画を陽画に変えてみようと思っている。〉

 1974年から75年「週刊文春」連載を第一部とし、77年から第二部再開予定だったが実現せず。幻の作品となっていた。

武蔵国多摩郡上石原のこんにゃく問屋の息子・久太郎が幕末の動乱に巻き込まれ、やがて影から歴史を動かしていく。久太郎は近藤勇の試衛館で剣術修行を志すが、事あるごとに近藤・土方歳三らに金をせびられる。道場の隣の武具屋を引き継ぎ、商いをはじめるが、土方に騙される。清河八郎・芹沢鴨の悪事に加担させられ、命も危うくする。彫師の弟子になるが、土佐藩主といざこざ。逃げて、影の組織「鏡党」のメンバーに。ここで忍びの修行をし、性格も変貌。武具屋の娘の助力もあり。上からの指令で清河を利用して、心ならずも近藤を盛り立てていく。上とは被差別部落の指導者。

 井上は、新選組=史実に久太郎=影の力をからめ物語を進めていく。決して美しくない「新選組物語」。池田屋事件の直前まで。

(平野)

2022年11月27日日曜日

大江健三郎の「義」

11.23 図書館、西村貫一のゴルフ調べ。私はルールすら知らない。

 新泉社・安さん、NR出版会くららさんから本届く。同社の韓国文学新刊。吾郎さんの絵が表紙と挿絵に使われている。先月上京したとき、話は聞いていたけれど、こんなに早く出版とは想像せず。よかったよかった、もっと吾郎さんの絵が知られますよう。

 


11.24 サッカーワールドカップ。日本チームがドイツに勝利。快挙。それだけの準備をしてきたそう。観戦サポーターたちは終了後ゴミ掃除をするのが習慣。さりげなくできることが偉い。

 

 尾崎真理子 『大江健三郎の「義」』 講談社 2500円+税



 大江作品の「義」と言えば、「ギー兄さん」「長江古義人」が思い浮かぶ。尾崎は長く大江を取材し、全小説の解説を書いた。大江が西洋文学を読み込み、その思想や詩などをモチーフにしていることはよく知られている。尾崎は大江の想像力の源を求めて、大江がたびたび引用する柳田国男民俗学、柳田と文学仲間である島崎藤村の小説、彼らの父親が影響を受けた平田篤胤の国学に遡っていく。

〈「義」の意、「ぎ」の音は、「ギー」に込められた柳田国男の「ぎ」であると共に、あらゆる機会をとらえて大江作品に埋め込まれていた。〉

尾崎が挙げる「義」の意味、正義、公正、高潔、信頼、忠実、誠実、道義。定義もある。「ぎ」の音、疑、偽、欺、戯、議、宜、犠、擬、儀、技、巍。鬼も。

〈「ギー兄さん」は、これらあらゆる「ぎ」をまとった人物だった。そして大江健三郎氏の小説は、すべてを懐疑する(懐かしく疑う!)姿勢で一貫した。それが「アイロニーの作家」と自称する所以なのだろう。〉

 戦後民主主義者・大江と戦前の国家主義の根拠となった平田国学がどうつながるか? 読んでの楽しみ。

(平野)

2022年11月22日火曜日

日本のゴルフ史

11.17 花森書林に本を引き取りに来てもらう。長く親しんだスポーツマンガや買って袋に入ったままの美術展図録など。

 11.13「朝日歌壇・俳壇」紹介忘れ。

〈最後から『蝉声(せんせい)』読みてすこしずつこの世の息を深く吸いゆく (宮崎市)木許裕夫〉 『蝉声』は歌人・河野裕子の遺歌集。

〈亡き父が「よんでごらん」と買いくれし『アンネの日記』いま孫が読む (町田市)山田道子〉

〈ながき夜の海馬に図書館司書がいて閉架よりよりそっと貸し出される夢 (日進市)木村里香〉

〈人の死へ銀河鉄道下りて来し (横浜市)飯島幹也〉

11.1819 「朝日新聞 折々のことば 鷲田清一」は福音館書店の松居直のことば。

〈子どもが「本を呼んで!」というのは「一緒にいて!」ということです。〉  

〈「赤ちゃんの幸せ」はみんなの願いですが、赤ちゃんの幸せは「お母さんの幸せ」にかかっているのです。〉

11.20 「朝日歌壇」より。

〈ハロウィンが近づいたからま女図かんかりに二階のママ図書館へ (奈良市)山添聡介〉

 図書館、元町原稿「西村旅館」三代目貫一調べ。1921年西村夫婦はゴルフを始める。旅館は番頭任せ、ゴルフ三昧。やるからには日本一を目指す覚悟。25年にそれぞれ所属クラブの大会で優勝を果たす。夫人は以後5連覇達成。貫一はプレイだけではなく、ゴルフ史研究も。さらに普及・民衆化を唱え、ベビーゴルフ推奨。31年著書『日本のゴルフ史』、『趣味のベビーゴルフ』(共に文友社)出版。同年旅館の住居部分を壊してベビーゴルフ場を開設。

 写真は『日本のゴルフ史』(普通版、神戸市立中央図書館蔵)の表紙。限定版、特装版も発行された由。絵は洋画家・小山敬三、六甲山上のゴルフ場風景。「神戸新聞」の随想「六甲を描く(四)」(小山画、貫一文、同年825日掲載)に同じ絵がある。ゴルファープレイ中。

 



『ひょうご歌ごよみ』(宮崎修二朗、兵庫県書籍協同組合、1984年)に六甲のゴルフ場が出てくる。

土屋文明〈無産主義に吾はあらねど草山はゴルフリンクに遮断されたり〉

1930年夏、土屋は神戸で歌友の追悼会に参列し、その際六甲に登った。散策の道はゴルフ場に遮られる。

〈草山にゴルフを遊ぶ男女富人がともは楽しかるべし〉

自分は無産主義ではないけれど世の中は不況の最中というのに、と。プレイに興じる人たちを皮肉る。昭和金融恐慌、世界大恐慌の時代。その波は西村旅館にも覆いかぶさってくる。

11.21 孫動画。妹は食べることが大好き。ご飯終わって、みかんやチーズ食べて、それもなくなると指1本立てる。もう1個ほしいの合図。ママが「おしまい、ごちそうさま」と言うと「いやだ」。姉が「あしたまたいっぱい食べよう」となだめても、「いやだ」と姉の腕を引っぱる。姉「いま食べたいの?」。妹「たべたい」。動画はここまで。そのあとはどうなったか、まだ知らない。

(平野)