2021年6月29日火曜日

あしながおじさん

 6.26 妹孫はどんどん大きくなる感じ。抱っこするとズシリと重くなった。私の抱っこでは泣き止まない。すぐにママか家人に代わる。

 姉孫と図書館、私は3冊返却。彼女は1冊返して1冊借りる。催事の案内をもらって帰って、よく見ると今日は読み聞かせイベントの日。午後からもう一度行く。お姉さんふたりが3冊ずつ読んでくださった。

 6.27 元町原稿やらないといけないけど、姉孫がキーボード叩きに来る。起きている時間にするヂヂが悪いのだが。彼女は私を「ジイジ」という名のおもちゃと思っているらしい。

「朝日歌壇」より。

〈貯蓄無き頭脳に知恵を借りるため図書館といふ銀行へ行く (村上市)鈴木正芳〉

〈「知のバトン」は少しおおげさ おさがりをもらう感じで古本を買う (高岡市)池田典恵〉

 他にも『はらぺこあおむし』エリック・カールを悼む歌、複数あり。

 6.28 垂水区「流泉書房」、SNSで毎日書評・今日は何の日。逢坂さん。

https://www.kobe-np.co.jp/news/kobe/202106/0014453023.shtml

 6.29 妹孫は生後1ヵ月。抱っこすると笑っている、ように見える。

ながめのヒモをさがして姉孫とでんしゃごっこ。そとでやるのははずかしい。ろじのでぐちまで。ヂヂバカちゃんりん。

 ジーン・ウェブスター作 谷川俊太郎訳 安野光雅

『あしながおじさん』 朝日出版社 2018年刊 2200円+税



 なんでいまさらヂヂが『あしながおじさん』を読むのか。

 谷川俊太郎が安野光雅追悼記事で、共作した本から3冊を並べた。そのうちの1冊。あと2冊は、絵本『あけるな』(銀河社、1976年)と小学1年生国語教科書私案『にほんご』(福音館書店、1979年)。

未読だった。大学生とは知らなかった。

谷川 ……〈あしながおじさん〉とあだ名をつけたその男が大金持ちじゃなかったら、そして毎月ジルーシャの書くのが型通りのお礼の手紙に過ぎなかったら、ハッピーエンドに違いないと思いながらも、読み始めたら止まらないこのスリリングな物語は、決して成立しなかったでしょう。

 安野 孤児院にいたという経歴は、日本ではあまり自慢にはしない。ところがアメリカでは誇りにさえおもうらしい。『赤毛のアン』でそれはわかる。(中略)あしながおじさんでも、いじけていないで言うべきことは言う。これが快感に聞こえるからふしぎである。

〈自分が何者なのかわからないっていうのは、ほんとにひどくへんなもの――ぞくぞくしてきて、ロマンティックで。可能性がいっぱいあります。もしかするとわたしはアメリカ人じゃないかもしれない。そうじゃない人はたくさんいます。わたしは古代ローマ人の直系の子孫かもしれないし、海賊のむすめかもしれないし、ロシアの亡命者の子どもで、ほんとはシベリアの監獄にいるべき身かもしれないし、もしかするとジプシーかも――きっとそうだと思うわ。すごく放浪性があるんだもの、まだそれをじゅうぶん発揮するチャンスにはめぐまれていないけれど。〉

(平野)

2021年6月24日木曜日

寄席育ち

  6.22 いつもどおり姉孫とケンカしてはなかなおり。昨日は手紙を書いてくれたのに、また言い合い。でも遊ぶ。

 緊急事態宣言解除で、図書館で新聞閲覧可能になる。ありがたい。元町原稿用、久坂葉子の自殺記事を探す。19521231日夜の事件、正月1日に記事なし。2日は休刊日。3日、神戸新聞は父名義の葬儀すみ報告掲載だけ。同社創業家ゆえ見送ったのだろう。同日の朝日新聞は〈「つぼみ」で散る文学〉と題し、実名で報道。実兄と竹中郁のコメントも。



 午後、姉孫と買い物。本屋さんで大声「ジイジ~!」と何度も呼ぶ。疲れているが、よく歩く。

 

 6.23 通勤と休み時間に落語本を読み始める。

 三遊亭圓生 『六代目圓生コレクション 寄席育ち』 岩波現代文庫 1580円+税



 江戸落語、昭和の名人のひとり、六代目圓生(1900~1979年)。

寄席初舞台は6歳、子ども義太夫の人気者。9歳の時、医者に義太夫の発声は無理と診断され、噺家橘家圓蔵に弟子入り。母親(育ての親)が圓蔵の弟子・二三蔵(のち五代目圓生)と結婚。書名どおり寄席育ち、芸道一筋。明治・大正・昭和の芸人・名人たち、芸談、修業人生を語る。江戸落語・芸能史の貴重な記録。生まれは大阪、複雑な生い立ちも。

 読書のこと。小さい時から忙しく、学校に行っていない。遊ぶヒマもなく、楽しみは本。巌谷小波のお伽話、縁日で買う雑誌の冒険小説、稽古をつけてくれる噺家に教えられた江戸文学、それから夏目漱石。

……「これァ君、面白いよ」とすすめられて、『吾輩は猫である』ってのを読みました。その時は、面白いには面白いが、まだ十代ですからね、本当のよさは判らなかった。後に読みなおしてみた時に……あれは三度か四度読みましたが、だんだん判ってきて、なるほどと思いました。読むたんびにますます面白くなりますね。〉

 楽屋で本を読んでいると先輩に怒られたそう。ゆっくり本を読みたい、と言うのが願いだった。そう言えば、漱石は落語通。

(平野)

2021年6月22日火曜日

離島の本屋 ふたたび

 6.20 してはいけないのはわかっているけど、姉孫とケンカする。一夜明けたらなかなおりする。それでもまたケンカする。

読む本がない、と本の小山をひっくり返す。コミック本3冊出てきたので読む。そのあと見つけた本。著者および関係者の皆さん、ほったらかしでごめんなさい。

 朴順梨 『離島の本屋 ふたたび』 ころから 1600円+税



 2013年『離島の本屋』刊行後の取材。沖縄本島、喜界島、宇久島、種子島、佐渡島、伊豆大島、石垣島、屋久島。それから栃木県の陶芸家(屋久島の本屋の娘さんが移住)に本屋を継がなかった理由を聞きに行く。

 地域の本屋にはその場所・住民のための役割がある。それが個性。新刊、古書併売、食堂ほか、販売するものは文具、印鑑、雑貨、食品、お菓子。衣料品を扱うお店もある。コンビニならぬ「ホンビニ」も。出版もする。

取材から7年半、閉店廃業のお店あり、退職者あり、鬼籍に入った方あり。時の流れは残酷。気軽に行ける場所ではないし、コロナ禍もある。それでも著者は廃業後のお店を訪ねる。

〈また訪ねられますように、また会えますように。私も元気でいます。だから元気でいてください。2020年より前だったら、こんな言葉は単なるあいさつでしかなかった。しかし今や、とても切実な思いが込められたものになった。これまで出会った人と本屋もこれから出会う人と本屋も、もとの形から変わったとしても一期一会ではないことを。今はただそれを祈るばかりだ。自分にも。相手にも。〉

(平野)

2021年6月19日土曜日

古老の人生を聞く

 6.18  姉孫はおいちょかみでジャマしいで世話焼き。私の原稿下書き・メモ用のノートは彼女のお絵かき帳・落書き帳になっている。今日は本屋さんから注文品入荷の留守電を勝手に操作して聞いて、教えてくれるのはいいのだけれど、「なんで、なんで」の問いが続く。ちゃんと応答しないといけない。ヂヂバカチャンリン。

会社の主任さん(巡回して管理人指導)は本好き。用件が終わると雑談、本の話。今何読んでる、と訊かれ、下記の本を紹介。

 

 『古老の人生を聞く 宮本常一ふるさと選書第1集』 みずのわ出版 1200円+税



 全国津々浦々を歩いた民俗学者・宮本常一、没後40年。故郷・周防大島の歴史、暮らしも数多く書き残した。本書は「ふるさとを知り愛した民俗学者の著作を、多くの人と読み継ぎ、地域の未来を考える共有の財産としていきたい」(編者、宮本常一記念館学芸員・高木泰伸)という思いで刊行。第1期第5集が20254月完結の予定。

 本巻、「ふるさと大島」、聞き書き「奇兵隊の話」「世間師(しょけんし)」「梶田富五郎翁」収録。

聞き書きは、幕末・明治初期生まれの古老たちの人生経験。長州征伐を迎え撃ち、五稜郭まで歴戦した医者の息子。戦の後、四国、九州、東京のみならず台湾、朝鮮でも仕事をした大工。対馬に移住した漁師。

働く場所を求めて移動(放浪、出稼ぎ)、命がけの冒険は特別なことではなかった。のちに海外移住者が続く。

カバーの絵は宮本の少年時代のスケッチ。

(平野)

2021年6月17日木曜日

山川直人新刊

 6.16 東京オリンピック・パラリンピックは中止・無観客の議論・検討もなく、開催・有観客で進む。私は招致から反対。やりたければやればいいけど、そもそもの復興とかアンダーコントロールとかおもてなしとか暑さ対策とか嘘に嘘を重ねてまだその上にコロナ対策安全安心で蓋をする五輪絶対主義者たちの態度に呆れる。

 6.17 朝、姉孫と母親が病院診療に出かけて、ヂヂは妹孫の子守り、留守番。オムツは替えられるけど、問題はおっぱい。グズって泣き収まらず。しばらくしたら、二人帰宅。

 午後、母親と妹孫の検診。姉孫とヂヂババ買い物。

 

 山川直人新刊2



 『はなうたレコード』 平凡社 1400円+税

 『短篇文藝漫画集 機械・猫町・東京だより』 水窓出版 1800円+税

 前者は「ウェブ平凡」連載。漫画家・豆太とアルバイト生活・きな子のほのぼの恋愛漫画。

 あとがきより、

〈ずっと漫画を描いていると、落描きのように描けたらいいなあと思うときがある。はなうたをきかれたときのように「ご機嫌だねえ」と言われるような絵を描きたい。でも、これが、なかなか難しい。(後略)〉

 後者は文芸作品漫画化。横光利一「機械」、萩原朔太郎「猫町」、太宰治「東京だより」。原作の小説も収録。

(平野)どんぐり目玉の登場人物、太い線。この人の本をもっと読みたいけれど、古い本は「品切れ」。

2021年6月15日火曜日

ランボーはなぜ詩を棄てたのか

 6.11 NR出版会くららさんからメール。出版業界新聞「新文化」にインタビュー記事。孫のパパも送ってくれる。

 


 姉孫がテレビドラマで老人の遺影を見て、私に「どうしたの」と訊ねる。「死んじゃった」と答える。「ヂヂはずっとここにいてね」。イジワル言うけど、ときどきやさしい。ヂヂバカチャンリン。

  6.12 しろやぎさんメール「くららさんインタビュー記事」着。東京のイモさんに送ってくださったそう。 

 6.13 妹孫はおとなしい。おっぱい飲んで、よく寝て、ウンチもたくさん。夜中、母親はたいへんだろう。ヂヂは家にいるとき夕方の沐浴担当。気持ちよさそう。ヂヂバカちゃんりん。

 6.15 海文堂とも関係の深い元町のお店や会社が廃業。コロナだけのせいではないのかもしれないけれど、まだまだ悪影響は続くことでしょう。

 

 奥本大三郎 『ランボーはなぜ詩を棄てたのか』 集英社インターナショナル新書 900円+税



 フランスの詩人、アルチュール・ランボー。田舎の秀才が詩に目覚め、憧れのパリに出て、詩人たちをギャフンといわせて、放蕩無頼。天才と呼ばれるが、20歳で詩を棄てた。アフリカ他世界を放浪し、37歳で死んだ。

 著者は『ファーブル昆虫記』を完訳したフランス文学者、東京千駄木のファーブル昆虫館「虫の詩人の館」館長。ランボーの生涯を追い、彼の難解な詩を自ら翻訳して、詩を棄てた理由について「一つの回答を提出」する。

(平野)学生時代、友がランボーとヴェルレーヌの愛の生活と破局を説明してくれた。彼が読書の道しるべだった。

 

 

2021年6月10日木曜日

楠木正行・正儀

 6.7 赤ん坊の名前、パパママは国際的に通じる音、漢字の意味、画数検討。時間かけて決定。

 6.8 「元町タウンニュース」更新。拙稿は「諏訪山界隈」の作家・久坂葉子。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/2021/06/02/townnews346.pdf

 夕方、パパさん横浜に戻る。姉孫、涙のお別れ。

 6.9 しろやぎさんはじめ数少ない友人から孫誕生お祝いメッセージをいただく。ありがとうございます。

 生駒孝臣 『楠木正行・正儀 この楠は正成が子なり、正行が弟なり』 

ミネルヴァ書房 3500円+税



 同社日本評伝選シリーズ、楠木正成の子、正行(まさつら)、正儀(まさのり)兄弟。著者は1975年生まれ、花園大学文学部専任講師。

正行は南朝の武将として父親と共に「忠臣」と崇められる(次弟・正時も戦死)。三男・正儀は父・兄亡き後、長年南朝を支えたにも関わらず、知名度は低い。後村上天皇(後醍醐の子)が亡くなると幕府に投降し、後に南朝に復帰した。忠臣か変節漢か、意見が別れる。

著者は、正儀が南朝と幕府の和平を推進した事実に着目。「これまで対照的な存在として捉えられてきた楠木正行・正儀兄弟の生涯を、できる限り古文書や古記録などの一次史料に基づいて復元し、南北朝内乱期という時代の中での彼らの歴史的位置を再検討する」。

 それにしても、この時代は戦に明け暮れていた。南朝はたびたび京を襲撃し、幕府は逃げるが、すぐに巻き返す。幕府の方は内紛が絶えない。そこに乗じて南朝が仕掛ける。そのくり返し。

正儀は南朝側の最前線に立ち、また和睦交渉の窓口にもなる。平和主義者という訳ではない。昔の仲間を相手に戦う、容赦なく攻める。著者は「徹底したリアリスト」の姿を描き出す。

(平野)

2021年6月6日日曜日

絵が殺した

 6.1 元町事務局に原稿を届けて、駅ナカ散髪、駅前「BIG ISSUE」購入。用事は元町駅周辺で終了。

BIG ISSUE」は今回2冊。インタビュー、407号「カズオ・イシグロ」、408号「リズ・アーメッド」。

 


 6.4 母子退院日。私は勤務マンションでトラブルあり、いつもより帰宅遅くなる。家族よりも先に赤ん坊を抱っこしたのはお世話になっている近所の奥さん。私も遅ればせながら現物(?)と対面。

 姉(孫)は母と妹の帰りを待っていたが、その心中はかなりデリケートだろう。今まで以上に大切にしてあげなければ。

 6.6 「朝日新聞」〈声 Voice〉(読者投稿欄)、作家・赤川次郎「五輪中止 それしか道はない」。

 


 読書は子育てとは無関係な推理小説。



 黒川博行 『絵が殺した』 角川文庫 680円+税

 著者得意の美術贋作事件、相棒もの。1990年単行本、徳間書店。94年徳間文庫。2004年創元推理文庫。

当時、日本はバブル経済真っ最中、美術品も投機の対象だった。すべて値上がりする、というのが前提の売買。実状は真作でも誰かがババを引く。加えて、贋作を売りさばく、贋作と知りつつ買ってさらに転売する。海千山千の世界。

 身元不明の白骨死体、京都の日本画家と判明。過去の贋作事件が浮上する。

30年前だから、電話は公衆電話、防犯カメラなし、DNA採取なし。理詰めで犯人を追い込む。

(平野)コテコテのオヤジギャク掛け合いはお約束。

2021年6月1日火曜日

天女舞い降りる

 5.28 元町原稿「久坂葉子編」(仮題)が難航。富士正晴の「エリザベス版 久坂葉子伝」(『贋・久坂葉子伝』六興出版1981年に収録)を中心にする。195354年、富士は「エリザベス版」と「贋~」を並行して書いた。『贋~』はあくまで小説。「エリザベス版」は彼女の書いたもの(作品、日記、メモ、手紙)に頼って彼女の姿を組み戻す試みだが、未完のまま。『贋~』と全集2冊、神戸市立中央図書館で借りている。

 


 5.29 孫はいつも図書館で借りた本を畳の上に並べ、自分も横に寝そべって記念(?)写真を撮る。今日は1冊ずつ、おもちゃも並べて、変顔、ハイポーズ!



図書館。6月3日から蔵書点検で2週間休みになるので、その前に必要な本を借りる。

午後は一家で散歩がてら買い物。娘は大きなお腹を抱えて、そろりそろり。

 

5.30 0時過ぎ、娘、陣痛来て病院に。妊婦用タクシー、迅速丁寧で感謝。家人送って行くが、コロナ禍で付き添いも待機も不可、すぐ帰宅。1時半、本人から無事出産のLINE電話あり。赤ん坊は姉(孫)とそっくりそのまま。大切な妹を授かった。むふふ、美女姉妹である。確か姉のときは「天使降臨」と書いた。

昼前、買い物の前に神社。姉は祈願は変わらず、「みんなげんきになりますように」。

姉は母の不在を耐えている。夕刻横浜から父到着で一安心。

 

梅雨夜空産声さやか天女舞ふ

風薫るヂヂの自慢がまたひとつ    (よ)

 

 5.31 「毎日新聞」神戸版に旧知の編集者・梢さん記事。神戸ゆかりの詩人・八木重吉の詩を冊子にまとめ、自費出版。『六甲のふもと 百年の詩人』と『赤ちゃんと百年の詩人』。栄町通の〈1003〉で販売中。

https://mainichi.jp/articles/20210529/k00/00m/040/040000c

 

(平野)