2022年1月30日日曜日

文豪と印影

1.27 元町原稿第100回を届ける。よく続いている、と言うか事務局がよく続けさせてくれている。感謝。

1.28 孫動画。妹が手を振ってバイバイしている。姉に名を呼ばれて返事するように見つめる。動画にバイバイ返すヂヂバカちゃんりん。

1.29 昨夜同級生が転んでケガをしたというので見舞いがてら訪問。ギブス姿見て失礼ながら笑ってしまう。不謹慎。

 図書館で某女子校の記念誌閲覧。かつて生田神社西側、歓楽街近くにあった学校。

 

 西川清史 『文豪と印影』 左右社 2200円+税



 かつて本の奥付に押された「検印」=ハンコ。出版社が著者に支払う印税について、印刷して売り出す部数をお互いに確認するため。昔はいい加減な出版社もあった。

検印の制度がいつ始まり、いつ終わったのかよくわからないそう。著者の蒐集本では、最古が明治35年の森鴎外『即興詩人』(春陽堂)、最新は平成7年の丸谷才一『七十句』(立風書房)、昭和30年代が最も多く、昭和40年代に検印はなくなっている。著者は、発行部数が増えたことでいちいち押していられなくなったからだろう、と推測。「著者承認」「著者との協定」など検印廃止も断り書きが記されたが、それも今はない。「著者と出版社との約束事が近代化された証拠なのだろう」。

 著者は元文藝春秋編集者、副社長。作家130人の印影170公開。認印のようなものもあれば、専門家に篆刻してもらったもの、自ら作成したもの、作品によって使い分けた人もいる。作家のこだわり、デザイン、それに検印=金銭事情のエピソードなど、ハンコから見る文学史。夏目漱石は印章好き、芥川龍之介は遺書で印章についても言及、太宰治は妻に検印を捺させていた、三島由紀夫は父親に任せていた、……。

(平野)

2022年1月27日木曜日

我が愛する詩人の伝記

1.25 ちょい早いかな、お雛様を飾る。あちこち傷んでいるものの、人形はきれい。

明治の元町学校史から。幼稚園開設をめざす神戸基督教会婦人会が雛人形を製作。会費を出し合い、京都の人形を仕入れ、手作りの着物を着せた。ニューヨークの教会婦人会が販売。「ミカド人形」と好評を得た。婦人会の主要メンバーは旧三田藩子女。先祖伝来の骨董品も寄付して販売。頌栄保姆伝習所・頌栄幼稚園開設の資金になった。

図書館に寄って、買い物に出る。元町駅の「BIG ISSUE」販売員さんと久しぶり、422号と423号。

 


 『写文集 我が愛する詩人の伝記』

室生犀星・文 濱谷浩・写真  中央公論新社 3500円+税

 


 犀星没後60年。1958年に「婦人公論」に連載された犀星「我が愛する詩人の伝記」と濱谷のグラビア「詩のふるさと」。それぞれ同年に単行本化された。今回合本。

 室生犀星、18891962年、金沢生まれ、詩人、小説家。不遇な少年時代を過ごす。文学を志し、20歳で上京。北原白秋に認められて世に出た。本書では詩人・作家らとの親交・友情を振り返り、代表的な詩を紹介する。白秋、高村光太郎、萩原朔太郎、堀辰雄、山村暮鳥、千家元麿ほか12人。逝ってしまった師・友を憶う。

……作家という者はその人の事を書いていなければ会えないものだ。書きさえすればその詩人がすぐ物を言い、笑いかけてくれ、十年も考えなかったことが書いている間にうかんで来るものである。そして作家の友情というものは、最早、本人には知らせることは出来ないにしても、友情の周囲を記述を以ってうるおし、私自身もそれをあたらしく受けとることをお互いに嬉しく思った。〉

 濱谷浩、191599年、東京生まれ、写真家。日本の風土・民俗、世界の自然を撮影。作家・芸術家の写真でも知られる。「詩のふるさと」では詩人たちが詠った自然、歴史、故郷を捉える。

 

 海文堂書店の書皮、1950年代中頃から25年ほど使用したもの。犀星の詩「本」、椅子の上で読む人と帆船のイラスト。制作経緯、デザイナーなど詳細不明。「本」は『第二愛の詩集』(文武堂、1919年)所収。

本をよむならいまだ  

新しい頁をきりはなつとき

紙の花粉は匂ひよく立つ  

その賑やかな新緑まで

ペエジにとぢこめられてゐるやうだ

本は美しい信愛をもつて私を囲んでゐる




(平野)

2022年1月25日火曜日

書痴まんが

1.20 寒いけど散髪。ギャラリー島田DM作業。

1.21 「朝日新聞神戸版」に尼崎市の小林書店記事。一昨年撮影の同店ドキュメント映画「まちの本屋」の上映が東京で始まったそう。

孫動画着。姉がおもちゃのピアノを弾く。妹が手を振ってリズムとる。天才ミュージシャンとダンサー! いつもどおりのヂヂバカチャンリン。

1.23 「朝日歌壇」より。

〈この街にのこる一戸の古書店の混めり師走の身を細め合い (我孫子市)松村幸一〉

大阪淀屋橋、落語「桂吉弥独演会」。例年は春の神戸の会に行くのだけれど、初めて大阪会場に。大阪下車は2年ぶり。あっちこっち顔を出したいけれど、目的地のみ。

 積ん読本消化してしまってストックなし。本棚には以前知らん顔して収めた本があるはず。

 『書痴まんが』 山田英生編 ちくま文庫 780円+税



1 愛書狂  辰巳ヨシヒロ 西村ツチカ 山川直人

2 本が運ぶ  うらたじゅん こうの史代 コマツシンヤ 森泉岳土

3 奇書と事件  水木しげる 諸星大二郎 石原はるひこ 大橋裕之 黒田硫黄

4 漫画愛  山本おさむ 松本正彦 永島慎二

おわりに  つげ義春

 本、本屋、書き手や版元を題材にした漫画アンソロジー。稀覯書、怪奇、ファンタジー、悲劇あり喜劇あり。本をめぐる人間模様。

(平野)

 

2022年1月20日木曜日

人間晩年図巻08-11.3.11

1.18 内科診療所。待ち時間、後藤正治「藤沢周平評伝」『文豪ナビ 藤沢周平』新潮文庫所収)を読む。お医者さんはカルテに私の家事や孫のことまで書き込む。

 


1.19 水島新司追悼記事が社会面・文化面・スポーツ面に。

 姉孫から家人の誕生日を祝う手紙。オマケに年賀状用写真の候補2種類も。どれもかわいい、ニコニコ、チャンリンチャンリン。

 

 関川夏央 『人間晩年図巻 2008―11311日』 岩波書店 1900円+税



 天寿をまっとうした人、病に蝕まれた人、死因不明の人、事故、自死、そして災害死。「晩年」を「晩年」と認識して死を迎えた人、思いもよらぬ短い「晩年」を過ごして旅立った人も。彼らは若き日・壮年期をどう生きたのか、ひとりひとりの人生と時代を辿る。

11311日」は東日本大震災。本書最後は、津波にさらわれた家族のこと。奇跡的に助かった愛児が家族に捧げる手紙。

 山田風太郎『人間臨終図巻』は歴史上の人物の臨終と栄枯盛衰を描いた。本書は「現代史の本」。

〈現代史を、直接にではなく表現する手立てはないかと思案し、時代の刻印を受け、また時代そのものをつくった有名人・無名人、その全盛期と晩年の記述で実践してみた。〉

 年老いて「晩年」を生きることは幸せなのだろう。でも、今が「晩年」と意識する人は少ない。

(平野)

 

2022年1月18日火曜日

跳ぶ男

 1.16 「朝日歌壇」より。

〈読みぞめの本のなかなか決まらぬもお正月待つ励みのひとつ (我孫子市)松村幸一〉

〈検定のミスならミスがうれしかり「現代の国語」に小説のこる (水戸市)中原千絵子〉

 本日も午前中図書館。昭和初め発行の貴重本返却。

1.17 阪神淡路大震災27年。あの日、あの冬は寒かった。

 夕刊で水島新司死去を知る。『ドカベン』の選手たちは決してスーパー選手ではなかった。山田は鈍足、岩鬼は悪球打ち、殿馬はピアノに進むかも、里中は体力に不安。次々戦うライバルたちこそスーパーマンだったし、彼らに敗者の美があった。最終シリーズで水島まんがオールスター登場の展開はハチャメチャだけど喜んだ。

直球一本の藤村甲子園、アル中のあぶさん、50過ぎても現役の岩田鉄五郎、他にも欠点弱点だらけのキャラクターたちが活躍する。水島の人柄でしょう。基本的技術、緻密な頭脳戦、心理戦、意外なルールなどを話に取り入れたと思ったら、にわかチームが明訓を苦しめたり、「筋書きのないドラマ」(筋書きあるけど)を描いた。語り出せばキリがない。長年楽しみをいただいた。感謝申しあげます。里中と水原の投球ホームは美しい。

 


 青山文平 『跳ぶ男』 文春文庫 770円+税



 貧乏小藩の道具役(能役者)の子・剛(たける)。同じ立場の保(たもつ)は年長の友であり能の師、かつ藩の将来を担う俊才。領地は台地の上、その下を流れる豊かな川は他国の領地。使える土地はすべて畑にして墓場がない。人が死んでも川原に埋めて、大雨で流されるままゆえ墓はお参りするだけの場所。保の思いは、この国をちゃんとした墓参りがきる国にすること。その保が刃傷沙汰で切腹。剛は保の面影とともに能の稽古に励む、跳ぶ。16歳の藩主が急死し、剛がその身代わりに仕立てられ江戸に。次の藩主として養子を迎えるまでのつなぎ役だが、その任務は重い。

 江戸時代、能は武士社会の式楽。単なる社交・趣味の芸能ではなく、政治上の儀式だった。藩重役は剛の身体能力・能の技量をもって幕府の支援を得て、改革、人材育成を目指す。剛に賭ける。ところが、大名・幕閣たちは能を愛し、きわめようと、高潔そのもの。生臭い政治とは無縁。剛は「想いも寄らぬ」考えで自らの身体を差し出す。

剣ではなく、頭脳ではなく、能=身体。能のことはまったく知らないけれど、著者の「能」論・身体論に圧倒される。すごい話を読んでしまった。 

カバーの絵は、須田国太郎「イヌワシ」。

(平野)

 

2022年1月16日日曜日

旅の絵本&ドク・ホリディ暗誦

1.11 本屋さんのWebサイトを見て、安野光雅『旅の絵本 』(福音館書店)発行を知る。一昨年12月著者逝去。アトリエから遺稿が見つかった。亡くなっても読者を喜ばせてくれる。

 


雑誌『演劇界』が4月号で休刊。歴史ある雑誌、歌舞伎ファンは多いだろうに。

 映画ミニシアター「岩波ホール」7月末閉館。コロナの影響あるでしょうが、他に何かあるのか?

 

1.12 布団に入って、岡崎武志『ドク・ホリディが暗誦するハムレット』(春陽堂書店)ライター仕事のこと、映画、テレビドラマ、音楽、旅、文学散歩など、すべて本、文学、作家の話に通じるエッセイ集。表題エッセイは、映画「荒野の決闘」に出てくるセリフについて。私はデビュー50周年の歌手にインタビューした話に食いついた。小さい頃から童謡歌手なので芸能生活はもっと長い。高校時代ラジオから流れてくる歌にうっとりしていた。自分がインタビュー役になる妄想のまま寝入る。


 

1.15 孫動画。妹は離乳食催促。姉はハイハイしている妹のそばでダンス、踏みそうで踏まない。

 図書館で元町学校史調べ続き。「美濃部達吉」本、教会の福祉事業。

(平野)

2022年1月11日火曜日

寄席切絵図

1.6 新年第一回積ん読本仕入れ。右手に野菜、左手に本雑誌、背中丸めてひょこひょこ歩く。

Web版「みなと元町タウンニュース」更新。拙稿は先日お知らせのとおり誤記あり。中列上から4行目、「1216日」は「128日」の間違いです。たいへん恥ずかしい。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/2022/01/02/townnews353.pdf

                                                          1.7 前回紹介の南陀楼綾繁本。神戸に縁ある方々が登場。懐かしい本屋、現役古本屋さん、編集者、画家の名前が出てくる。「コーべブックス」限定本コーナー担当者の思い出を語る人がいらして驚く。

1.8 ジャーナリスト・作家、外岡秀俊が昨年末に亡くなっていたニュース。私は本屋の店頭で学生時代作家デビューや新聞・著作での活躍を知るだけ。ご冥福を。

図書館。元町学校史。聖公会宣教師がつくった「乾行義塾(けんこうぎうじゅく)」で学んだ憲法学者のこと。天皇機関説の美濃部達吉(18731948年)。加古郡高砂町(現在高砂市)生まれ。地元の中学校が廃校になったため、神戸に嫁いだ姉宅に身を寄せ、約2年「乾行」に通った。上京して予備校から第一高等中学校に進学するも、留年あり、腸チフス罹患も。

1.9 「朝日歌壇」より。

〈山に向き親爺は何時も渋っ面山根屋書店は百年目なり (長野県)沓掛喜久男〉

六代目三遊亭圓生『寄席切絵図』(岩波現代文庫)をボチボチ読む。明治末から大正・昭和の寄席の思い出。講談、義太夫、浪曲、それぞれ専門の席もあった。大正時代東京市15区内で90超、郡部に約40。お江戸の地理は皆目見当つかないけれど、名人の語りを楽しむ。両国米沢町にあった「立花家」の場所を、ちょっと説明しにくいと言いながら、浅草橋、両国橋、米沢町、神田川、柳橋、薬研堀……、横丁、噺に出てくる料理屋、路地……、「右ッかわ」「左ッかど」「道っぱた」と懇切丁寧。

寄席の名前由来、建物の造り、場内の雰囲気、席亭とその家族関係、経営内容、芸人とその芸、周辺の町並み、商店など記憶明晰。当時の詳しい地図多数。



(平野)

2022年1月6日木曜日

古本マニア採集帖

  1.2 出版営業50年のカネさんから年賀状に、引退して故郷で焼き芋屋兼図書館を営む決意。今秋オープンの由。昨年NR出版会くららさんからお話を聞いていたけれど、ほんまやったんやー。焼き芋と本の組み合わせ、どんなふうに思いつかれたのか。

元町原稿に着手、早々からえらいなあ。神戸元町学校史とキリスト教。

今年は3連休がたくさんあるそう。ということはヂヂのパート仕事も休みが増加、給料減少……、あわれな姿。

パンを買いに神戸駅まで。駅、湊川神社周辺は人と車いっぱい。昨年と比べて人出多。

1.3 ゴロウさんからお年玉メール。親戚のおじさん=詩人さんのダンディな写真。

1.4 近所のスーパーはまだお休み中。神戸駅まで買い物。湊川神社参拝。

仙台イラストレーターのお相撲日記『このジュンコ 場所中につき』(佐藤ジュンコ著、button。令和25月場所~令和39月場所のテレビ・ラジオ・ネット実況視聴、仙台巡業場所観覧など相撲のある日だけ描いた日記。A5ペーパー29枚。相撲愛いっぱい。コロナで開催できない場所もあったけれど、力士も解説者もアナウンサーも行司もみんな大好き。力士の無事を江戸時代の力士・谷風に祈る。


 

1.5 初出勤、休憩時間に須磨寺お参り。

 孫食事動画。妹は果物食べて笑顔。姉は野菜くわえてしゃべって笑顔。ヂヂも笑顔でちゃんりん。

 南陀楼綾繁 『古本マニア採集帖』 皓星社 2000円+税



「日本の古本屋メールマガジン」連載。古本でご縁のある人、古書市などで袖すりあった人、36人に取材。ただ本屋巡りを楽しむ人、特定の著者や作品を蒐集する人、調べ記録する人、古本を仕事にする人……。それぞれの楽しみ、趣味、研究、そして情熱と執念。

〈ひとりの人生には紆余曲折があり、それを「古本」という観点でまとめるのひは強引さが付きまとう。こんなまとめかたでいいのかなと毎回悩みながら、おぼつかない手つきで採集した話を標本箱に収めた。〉

                                                              (平野)

2022年1月1日土曜日

謹賀新年 快刀乱麻

 謹んで新年のお慶びを申しあげます

二〇二二年 令和四年 壬寅 

我が家の長女は寅年

ヂヂババはチチハハの時代から

ずっと虎の子を抱えていたと今頃気づいた次第

孫は寅の子の虎の子

やっぱりたからもの

女の子ゆえドラ息子になる心配なし

新年早々ヂヂバカちゃんりん

今年もよろしゅうお願いします

 

1.1 神戸は寒いけれどすっきり晴天。氏神さんにお参り。



あとは例年どおりの食っちゃあ寝てのぐうたら正月。YouTubeで桂米朝師匠正月落語「正月丁稚」「七福神」。

最初の本、北村薫『中野の父さんの快刀乱麻』(文藝春秋)をめくる。文学の謎、本の謎を見事に解決するお父さん。凡人(私)は何とも思わず読み過ごすばかり。

〈本との出会いは一期一会。/目的があって検索するパソコンと違い、ふとしたところで巡り合う、それが古書店巡りの醍醐味だ。〉 

 


 娘一家の年賀状ににこにこにんまり、ちゃんりんちゃんりん。

年賀状孫の笑顔は福の神 (よ)

                                                                 (平野)