2022年3月31日木曜日

ご機嫌直立と斜め

3.27 姉孫と公園。遊ぶことは大好きだけど、こわごわすべり台、ブランコ、ジャングルジム。

 午後、ひとり買い物。ついでに古本屋さん。

大阪の親戚、孫姉妹に会いに来訪。一緒にテレビ相撲千秋楽観戦。姉孫、若隆景優勝で喜ぶ。ヂヂ応援の髙安残念。

 

3.28 有給取って、孫お守り。絵本を買いにみんなで本屋さん。姉が欲しいものは付録付きの雑誌だけれど、ママと今日は絵本と約束していたから「ダメ!」と叱られて大泣き。親の方針がある。ヂヂは甘い顔するわけにはいかない。我が娘ながら、厳しい母。

 

3.31 妹はどんどんヂヂババに慣れてニコニコ、ご機嫌直立。姉は帰る日が近づいてきて、うれしいさびしい半分半分で不安定、ご機嫌斜め。

 

 『堀内誠一 絵の世界』 平凡社 2500円+税



 堀内誠一(193287年)、デザイナー、アートディレクター、絵本作家。「anan」ほか新しい雑誌を創刊、絵本『ぐるんぱのようちえん』など多数、谷川俊太郎訳『マザーグースのうた』挿絵。

 今年は生誕90年にあたる。来年にかけて記念の展覧会が全国巡回。

https://bijutsutecho.com/exhibitions/9640

 

 父は広告制作など図案家。誠一は外国雑誌に囲まれ、絵を描くことが大好きだった。母は彼の絵をスクラップブックにまとめて保管。1947疎開先から戻った誠一は新宿伊勢丹に入社、まだ14歳。仕事帰りに絵画研究所で油絵を学ぶ。のちに妻となる女性と知り合い絵本作家の道が開ける。編集者や芸術家と親交が深まり、広告や雑誌の仕事など活動を広げていく。

 

(平野)

2022年3月27日日曜日

読書停滞ヂヂ孫日記

3.20 駅まで孫たちを出迎え。妹はベビーカーでギャン泣き。姉は頭のてっぺんから声だしてはしゃぐ。賑やかな春休み。

福島清『北國の神話』(みずのわ出版)届く。神戸生まれの画家・登山家の自伝。

3.21 姉孫と早速図書館。ひとり10冊借りられる。妹のも借りると言いながら、全部自分用

3.22 妹孫はまだヂヂババに慣れない。抱っこすると泣く。今日はちょっとの間なら抱っこ大丈夫。お手振りもしてくれる。明日はどうか? 過度な期待はせず。

 神戸の画家・歌人から新刊書を頂戴する。海文堂書店のことも一章割いてくださる。感謝。



3.24 臨時でよそのマンションに午前中勤務。のどかな住宅地、「ホーホケキョ」の声が時々。帰り道、図書館に寄って少し調べ物。帰宅して買い物、惣菜に野菜に豆腐。

BIG ISSUE427、本屋さんで注文品とコミックと小説。

 


3.25 前夜睡眠薬代わりに読んでいた文庫本が行方不明。たぶん布団をたたんだ時に中に入ったまま。別の文庫本をカバン持って出かける。

 紀伊國屋書店阪急神戸店5月閉店のニュース。本が減って雑貨スペースが増えていて、たいへんなのだろうと思っていたけど、撤退とは。また神戸から本屋が去る。

3.26 妹孫はヂヂババに慣れてきて、抱っこも平気になった。姉孫はヂヂにひっつきまっつき。姉と図書館で借りた絵本を読む。かわいそうな話にヂヂ滂沱。

 読書も元町原稿も停滞中。洋画家・小磯良平は22歳の時に「小磯家」を継いだ。実家の姓は「岸上」。美術関係者による年譜や略伝では「きしのうえ」。神戸市立小磯記念美術館の英文案内は「kishigami」。どっち? 

足立巻一『評伝竹中郁』(理論社 1986年)に竹中と小磯良平の関係について、「親友岸上(きしのうえ)」、「〝きしがみ〟とも通称」とある。

私の祖母の実家は「川ノ上(かわのうえ)」だが、親戚は日常生活「川上(かわかみ)」で過ごしていた。

(平野)

 

2022年3月20日日曜日

鷗外の子供たち

3.18 姉孫から神戸で食べたいものリクエスト。「ジョア、おいしいぎゅうにゅう、しらすごはん、からあげ、キャベツみじんぎり、おみそ、とうふ、はくさい……」。食い気のかたまり。

3.19 掃除して、姉孫リクエストの買い出し、全部は無理。

 

 森類 『鷗外の子供たち――あとに残されたものの記録――』 ちくま文庫    

 19951刷、手持ちは20024刷。初版は1956年、光文社刊。



 森鷗外の末っ子・類が語る鴎外死後の家族の生活。

鴎外は子煩悩、皆を可愛がった。長男於莵、長女茉莉、次女杏奴も父のことを書いている(二男不律は生後まもなく死亡)。

類の場合は、偉大すぎる父を持つ子の苦悩。最近言われる「親ガチャ」の逆もある。

〈僕は鷗外、森林太郎の三男として生まれた。ずいぶん偉い人の子に生まれたものだ。どのくらい偉くなったら、父の子として調和が保てるのかしらないが、まごまごしていると、父が軍医総監になった年になる。父の子として偉くないのが恥かしかったら、消えてしまわなければならないが、生きていたいから困ったものだ。四十になってからは、初老と結びつくのが不愉快で、年を数えないことにしていたが、このあいだ、人が数えてくれて、四十五ですと言った。〉

 類は普通の学校生活を送れず、中学をやめて絵を習う。先生は近所の人からはじまり、だんだん大家になる。母は持病があり、楽しみは芝居見物、碁。長女は結婚しても家事・育児できず、芝居に買い物。離婚して戻ってくる。再婚して、また戻る。次女は日本舞踊、太鼓、鼓の稽古にフランス語。高等遊民たちのお気楽な生活。鷗外死後の経済生活は保障されていた。問題は世間に「悪妻」と評価された母(後妻)と森家の人間関係。長男は先妻の子。 

戦後、類は生活のため初めて就職するが、役に立てず、クビ。鷗外邸跡地に妻と本屋「千朶(せんだ)書房」を開く。鷗外がかつて住んだ家「千朶山房」から。名づけたのは斎藤茂吉、開店挨拶状は佐藤春夫。人に恵まれている。

 本書のもとになった文章をめぐって姉たち・出版社と騒動になった。雑誌に掲載される予定だったが、校正刷りが姉たちに届けられた。良心的出版社の人格者と知られる重役の恫喝を明らかにしている。

(平野)

2022年3月17日木曜日

若い詩人の肖像

3.13 留守番ヂヂ図書館。古書会館の古本市で文学史もの2冊。魚屋さん寄って、あとはテレビ。歌壇のさくらんぼ満開で、明日雨なら散ってしまいそう。

3.14 仕事中、春休みに孫来ると知らせあり。早速有給休暇申請。

 先月急逝された川口正さんのご家族から挨拶状が届く。村田耕平さんの命日も近々。満開のさくらんぼの花がもう散りはじめた。

 さくらんぼ弥生の路に花吹雪 (よ) これでは坂本冬美演歌の盗作だ。

さくらんぼはなのいのちはみをむすぶ (よ) 

『広辞苑』に、はかない=果無い、とある。

3.15 かかりつけ医でワクチン3回目接種。たぶん副反応はないと思うので、そのまま買い物に出る。17日に墓参りするつもり、花を抱えて帰る。

 人文書出版社の水さんから久方ぶりに通信着。書店員時代は他店の友に回覧していたけれど、もう伝える人はいない。

 ちょっと腕が痛いものの、熱なし。

3.16 「朝日新聞」神戸版に「3.17空襲」記事。元町通5丁目の焼け跡写真(同社大阪写真部)。

3.17 予定通り墓参。彼岸前だし、お天気下り坂だし、善男善女お参り多数。

 買い物して、古本屋さんで落語本。

 

 伊藤整 『若い詩人の肖像』 新潮文庫 1958初版、私の手持ちは7932



 伊藤整(190569年)は詩人、小説家。文芸評論、英文学翻訳も。

 自伝的小説。大正末から昭和初め、小樽での学生・教員時代、上京して父の死を知り帰郷するところまで。文学を志し、恋と性に悩む。家庭の事情などしがらみもある。青春と文学の回想。

堀辰雄ら新人たちが芥川龍之介や室生犀星に認められて雑誌に登場してくる。「なぜ私がその仲間に入っていないのか?」。羨ましさとともに、彼らが甘やかされている、と思う。自分も詩人として立ちたいと思う。その一方、自分の詩は若い詩人たちの作風と比べて流行遅れでは、という不安も。

多くの作家・詩人たちが実名で登場。

(平野)

2022年3月13日日曜日

ブックセラーの歴史

3.7 仕事休み、図書館休館日、買い物しながら古本屋さんを覗く。

3.10 朝も暗いうちから大型ゴミ出し。本日は地域の資源ゴミ、市のプラスチックゴミ回収もある。

3.11 マンション営業担当氏訪問あり。〈3.11〉の話。当時彼は東京勤務、帰宅するのに徒歩4時間かかったそうだ。その時、私は何をしていたか(飲んだくれていた)、恥ずかしくて言えない。

 昼休み、近くの公園で弁当。食後、本を読んでいたら、散歩のワンちゃんが近寄って来た。飼い主さんは「行こう」と急かせるが、私の前から離れない。しばしスキンシップ。

3.12 花壇のさくらんぼが咲きはじめる。姉孫に写真送ると、「たべたいねえ」の返事。


 

 ジャン=イヴ・モリエ著 松永りえ訳

『ブックセラーの歴史 知識と発見を伝える出版・書店・流通の2000年』 

原書房 4200円+税



〈書籍販売業の歴史は非常に長く、少なくとも中近東、中国、そして西洋では数千年前から続いている。古代から物語に登場する〈リブラリウス〉すなわち書籍商とは、一般的には自分の店で販売する原稿の写字を行なう奴隷のことを指していた。(略)〉

 西暦80年頃の詩にその解放奴隷が登場する。そのはるか昔、紀元前のギリシア哲学者たちは書店で批評しあっていた。

 フランス語辞書『ロベール』での「書店」は「本が売られている店」という定義に加えて、「一九世紀になるまで数少ない」職業とあるそうだ。14世紀の辞書では、〈リブレール〉=書籍商は、「自分の写字室の本の保管に気を配る司書」を指す。17世紀の文人によれば、〈リブレール〉とは本を売る人。印刷技術によって「本を作る職人という意味もできた。行商人もいた。

 本書の書籍販売業という職業は、司書、図書館員、写字師、カリグラファー、行商人、店を持つ商人、露店商人、新刊、古書、羊皮紙商、紙商、製本職人、校正者、印刷業、出版業、取次業、流通業を含む。彼らは書籍を作ること、扱うこと、商うことで、知識・情報を伝え、人と人をつないできた。

 本の素材が粘土、木、葉、樹皮、動物の革、紙と変わり、本の形も板、巻物、冊子になった。いまや電子データ。大手チェーン店の進出、個人商店の衰退、自由価格、何よりネット販売の普及。日本だけではなく、世界的問題。

それでも著者は楽観的だ。本や書店を題材にした小説・映画が生まれヒットする。最近ではネット配信ドラマで主人公の書店員(原作は小説、極めて危険な犯罪者)が人気らしい。

……この数十年でサスペンス小説、やがて映画、そしていまやテレビドラマシリーズの主人公となった書店員が変幻自在に描かれるありさまは、なぜ五〇〇〇年ものあいだ、書籍販売業者が滅亡することなく、あらゆる逆境を乗り越え生きのびてこられたか、その理由を私たちに問いつづけている。〉

 現在のフランス書籍販売業の新しい試みや多様性も紹介。

 著者はフランスの大学名誉教授、出版・書籍・読書の歴史を専門にする。フランス、ヨーロッパを中心に書籍販売の歴史をたどる。原著フランス語なのに書名「ブックセラー」とはこれいかに?

(平野)

2022年3月6日日曜日

春めいて

3.3 春めいて外に出る。ひな祭りに待ち合わせした人物は、みずのわ出版一徳社主とギャラリー島田社長。おっさんとじいさん計3名むさ苦しい。ギャラリースタッフさんたちがハツラツ入れ替え作業。一徳社主は千葉弔問して富山印刷所立ち会って金沢本屋巡りしての帰り道、北陸土産、感謝。

 ヂヂババ春の節句晩餐。

3.4 新潮社PR誌「波」掲載、北村薫「札」。北村と編集者が文学作品中の一文で「いろはかるた」を作る。「いい人はいいね」(川端康成「片腕」)、「六は鳥が嗜好(すき)でしたよ」(国木田独歩「春の鳥」)、「恥の多い生涯を送って来ました」(太宰治「人間失格」)……

 文学史の話の他、誤訳の話や落語が出てきて、ヂヂはついていくのがたいへん。



 夜、孫と電話、遊んでもらう。

 

3.5 春なのに秋の話。図書館で昭和6910月の「神戸新聞」閲覧。目的は鉄道省線高架開通。ちょうど「満洲事変」突入の時で、紙面はキナ臭い。そんななか、本屋話題と文芸記事発見。

921日付「本屋から観た秋」は秋の夜長の読書傾向を探るもの。売れ行き良好書は、8月に襲撃され死亡した浜口雄幸首相の『随感録』、満蒙問題、世界恐慌関連本。プロレタリア小説は振るわず、大衆物は廉価本。女性は映画雑誌。洋書は、英語10とすれば独語6、ぐっと減って仏語の美術小説、注目は露語読者が増えてきたこと、トップはやはり経済物。写真、書店名明らかにしていないが、たぶん元町1丁目「川瀬日進堂書店」。別の写真で棚に見覚えあり。


 

1026日付では、「故郷の秋 神戸の昔 歯の印象」十一谷義三郎(じゅういちやぎさぶろう、18971937年)インタビュー。義三郎は元町3丁目生まれ。薬問屋の番頭だった父親の死後、店主の親戚筋である酒造家・高嶋家の援助を受け、神戸一中、三高、東京帝大に進んだ。与謝野鉄幹・晶子に招かれ文化学院英文科教授。川端康成、横光利一らと「文藝時代」同人。代表作に「唐人お吉」「神風連」など。当時東京本郷に新居を構えたばかりだった。

……中学時代には六甲山麓に近い所の大きな酒屋に厄介になって居たのですが、醸造用の大きな樽などが置いてある広場に立って前の山々を見ると秋にはどうやら山の色が変るのです。紅葉(もみじ)などというのではなく何かはなしに山の色がしっとりと変って見えるのですね。(略)〉

 元町のこと。幼い頃は5丁目極楽寺裏の寺子屋で習字と素読を習った。見出しの「歯」とは女先生の大きく長い「歯」のこと。極楽寺は真言宗のお寺、大正の時代に移転したようだ。寺子屋は「走水(はしうど)神社」の間人(はしうど)塾か? 

 同紙面に川端の随筆「犬の話」と雑誌「新青年」面々のトランプ勝負の話。(記事原文は旧字旧かな)


 

 午後買い物。ほんまに久々「うみねこ堂書林」、店主の子息が店番。図書館で見つけた上記「新青年」のこぼれ話記事を渡す。先日紹介の曾根本に影響受け、伊藤整『若い詩人の肖像』(新潮文庫)。「花森書林」で、伊藤整『日本文壇史』(1)(2)(講談社文芸文庫)、さていつになったら揃うか。

 魚屋さん、初物いかなご釘煮。

 


 パパさんから孫写真。二人でテレビ「笑点」(録画)を見ている。姉は座布団ゲームと思っているらしいけど、妹はわかるのか?  ヂヂバカちゃんりん。

(平野)

2022年3月3日木曜日

私の文学渉猟

3.1 片付け後、大型ゴミ収集申し込み。

 雨の中、買い物やら用足し。傘の骨が折れていて、シモヤケで変形している指さらにケガ。本屋さん寄って帰る。野菜と雑誌が重い。

3.2 「みなと元町タウンニュース」355号着。拙稿はキリスト教系女学校の歴史。Webも更新。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/townnews/

 孫と電話。姉はパンツの歌を大きい声で歌う。妹はつかまり立ち。明日はひな祭り。

 曾根博義 『私の文学渉猟』 夏葉社 2300円+税



 曾根(19402016年)は日本近代文学専攻、伊藤整やモダニズム研究で知られる。2010年まで日本大学文理学部教授。研究や資料蒐集の中で得た話を集めた随筆集。作品、資料から次の作品、資料、作家たちにつながっていく。

蔵書管理、索引、雑誌の発売日(年譜、著作年表、目録作成のため)の大切さ、面白さ。古い書店PR誌のこと、カタカナ新語と新漢語など語義の変化、資料探索で発見した文学小話など。

曾根は小林多喜二の全集未収録の短篇小説「老いた体操教師」を発見。「たまたま調べていた震災前の『小説倶楽部』という投書雑誌」に18歳の多喜二が投稿していた。母校の教師をモデルにした小説。その後まもなく、岡山大学の院生が同じ教師をモデルにした短篇「スキー」を発見。

詩人「英美子(はなぶさよしこ)」の生涯紹介では、子息との関わりを告白。

曾根の膨大な資料と書斎の様子は内澤旬子『センセイの書斎』(幻戯書房、2006年)に紹介されている。

(平野)