2021年11月28日日曜日

人間晩年図巻 2000ー03年

 11.25 続き。図書館本返却、散髪、買い物、本棚整理(散らかし)、家事。

  孫LINE電話。姉は風邪で幼稚園休み中ながら、おもちゃのマイク持って歌う。妹はなんでも口に入れる時期に入った。姉の絵本に近づいて行く。姉、取り上げるけど、あんたもそうやったんや。ヂヂバカちゃんりん。

 プロ野球日本シリーズ、両チームとも強い。熱戦が続く。投手戦あり、打撃戦あり。最後まで勝負をあきらめない。点を取られてら取り返す。プロの気迫・執念、まさしく超人たちの競演。こっちは素人なのだから、彼らのプレーを楽しもう、応援しよう。ずーっとパリーグチームが圧勝していたけれど、今年はもつれそう。

 11.27 朝日新聞「天声人語」より。

〈本というものは、いつのまにか本棚からあふれてしまう。たいていの場合は売るか、床に放置するか。〉 

 静岡県焼津市の土肥さんは商店街の空き店舗に仲間(オーナー会員)を募って図書館を開いた。

〈諸経費を賄うためオーナーたちは月に2千円払い、お薦めの本を無料で貸す。特典は店番ができることだいや本当の特典は本を介した交流であろう。〉

 本を通してのコミュニケーション。

ギャラリー島田お手伝い。「石井一男展」「須飼秀和展」。例年開場前に行列ができる年末恒例の展覧会。私は「須飼展」のグッズ販売(カレンダー、ポストカード、書籍など)担当。絵が目の前でどんどん売れていく。

 須飼本・カレンダー出版元ハセさん、せ~ら編集長、元海文堂・コバさん、久しぶりにお会いできた。

 孫動画着。姉はごいき力士(大好きなくまモンに似ている)が負けて泣いている。妹は床材の切れっ端を口に入れている。それはおいしくないでしょう。ヂヂバカチャンリン。

 日本シリーズ決着。スワローズおめでとう。バッファローズもあっぱれでありました。

 

 関川夏央 『人間晩年図巻 200003年』 岩波書店 1900円+税



 1990年代編(全2冊、同社、2016年)に続いて、2000年代編(全3冊)刊行開始。2000年代に亡くなった人たち80人の晩年と人生を紹介。

 最初に出てくるのは「仙波龍英(せんばりゅうえい)、200048歳で世を去った。2冊の歌集を残し、小説も書いた。

「ひら仮名は凄じきかなはははははははははははは母死んだ」

私はこの人の名を知らない、と思ったが、この歌で思い出した。五七五七七に従ったら意味不明。「母母母母母母」なのだろう。

政治家、経済人、文化人、スポーツ人他、著名人から一般人ながら世間を賑わした人たちまで。9.19テロリストも。それぞれの人物の晩年から時代・歴史を見る。

 本シリーズは山田風太郎『人間臨終図巻』(初版全2冊、1986年、徳間書店刊。徳間文庫、角川文庫で読める)の仕事を継ぐもの。東京医専卒業者の眼で、歴史上の人物・有名人の臨終の様子、死因を率直に書いた。その「山田風太郎」も登場、20017月逝去。

(平野)

2021年11月25日木曜日

流泉書房の本

  11.21 「朝日俳壇」より。

〈秋灯や厨(くりや)は主婦の書斎なり (稲城市)島富子〉

 待っていた本入荷の連絡あり。

 11.22 朝から雨。ふだんなら気分が乗らないのだけれど、今日は雨など気にしない。仕事終わりに楽しみがある。雨の中、歌って踊るわけではない。そういえば高校時代、雨の中ラグビー部は泥んこになっていた。嬉喜としていた。サッカー部はラグビー部ほどではなかったと記憶。私は通常屋外練習のクラブ、雨だと体育館の片隅で基礎練習だった。50年以上前の話。

 閑話休題。楽しみとは、垂水・流泉書房本(サイン入り)受け取り。須磨から垂水に向かう。お店にいらしたのは社長とクロ君。

サインは、店頭男性3人と配達ママさん、お嬢ちゃん、坊や、計6人。みんな練習したのだね。えらいえらい! 

11.23 高槻墓参り。親戚宅で昼ご飯。北摂は寒い、と感じたが、夕方神戸に帰ってきたら一段と寒かった。電車内で「流泉本」読了。

  11.25「朝日新聞」神戸版に「流泉書房」紹介記事。



 

 逢坂肇と流泉書房の仲間たち著 

『今日は何の日? 今日も本の日!』 苦楽堂  1600円+税

 神戸市垂水区の本屋さん「流泉書房」。1953年、三宮センター街にて現社長の祖父が創業。阪神淡路大震災後、支店だった須磨区名谷店に本拠を移した。201811月、店舗を現在地に移転。3人の男性でお店を運営。著者サイン本通販を始めている。社長夫人(お子さんたちもお手伝い)が配達担当。商店街のお店と提携して本と一緒に配達する。

本書は日常活動から生まれた。店頭の黒板にほぼ毎日、当日の歴史的事件、作家の誕生日・忌日など「今日は何の日」かを掲示。文学からノンフィクション、コミック、映画、音楽、旅行ガイドまで、登場人物、ストーリーに関する話題を虚実とり混ぜ紹介する。SNSでも積極的に発信している。継続は力!

 黒板担当は逢坂。長年神戸新聞にコラムを執筆している。読書範囲広く、特にSF、本格推理に詳しい。コミック、ライトノベルも。読書以外でも多趣味。数行のコメントに知識・教養の裏付けを感じる。でもね、読んでいない本は「読んでいない」と明言。格好をつけない。

 若き三代目大橋社長はスタッフを信頼し、共に本屋業を継続していく決意。ブックカバーのキャップ男子は彼か? だいぶ可愛く描かれている。個人的に大人客用悪意と笑いに満ちた怪人カバーを望む。

 社長のコメントのなかでちょこっとだけ登場する「第三の男」黒木は、なんとなんと別刷り冊子で単独インタビュー。冊子は流泉書房での購買特典。

 流泉書房皆さん、出版おめでとうございます。ますますのご活躍とご繁盛を。

(平野)昔、三宮~元町本屋散歩で必ず寄る店だった。名物店長がマナーの悪い客を叱っていた。

2021年11月21日日曜日

千早赤阪楠公史跡保存会

 11.16 ギャラリー島田DM作業。1127日から恒例の「石井一男展」「須飼秀和展」、1211日から「井上よう子展」「三沢かずこ展」。柿いただく。

http://gallery-shimada.com/

 





 元町駅前で「BIG ISSUE419号。表紙・インタビューは森山未來。販売者さんとちょっと話。近所にお勤めのお客さんが森山のプロフィールをいろいろ教えてくれたそう。映画屋さんかな? 



 本屋さんで注文品ほか文庫本。

 夜、姉孫とLINE電話、相撲、幼稚園の話など。妹は既に就寝。

 11.18 花森書林に本買い取り依頼。10冊ほどだと、棚の整理にはならないけれど。

 11.19 職場マンション前の溝、下校途中の小学生が野鳥の死体を見つけて教えてくれた。外傷はない。ヒヨドリだと思う。私は彼女に鳥を触らないよう、言った。彼女は落ち葉を拾い、鳥に被せ、何度も祈った。鳥は区役所の環境局に電話して引き取ってもらった。

 少女哀し鳥を弔う赤黄の葉 (よ)

 

 『楠木正成 知られざる実像に迫る』

千早赤阪楠公史跡保存会編 生駒孝臣・尾谷雅比古著 批評社 1500円+税



 先日紹介した源平合戦・地方反乱から約150年後、鎌倉幕府滅亡の時代。河内の武士・楠木正成はゲリラ戦術で幕府軍に立ち向かった。後醍醐政権に献策を取り上げられず、足利尊氏の大軍と戦う。

軍記物語は誇張あり粉飾あり伝説あり。江戸時代、水戸学が尊皇・忠義を称揚し、明治以後の皇民教育や戦意高揚に利用された。これらは正成の真の姿とは言えない。正成の出自は古代の天皇につながるとされているが不明。子・正行との別れ「桜井の宿」は国の史跡だが、発掘調査では遺構は発見されていない。一族・郎党が「七生報国」と誓ったという最期の姿も生存者はいないはずだから定かではない。

正成について直接的史料は少ない。史料・物語を慎重に扱い、正成のルーツ、幕府の御家人説、楠木氏と河内、「悪党」説など数々の謎に迫る。さらに、河内・和泉で楠木一族が戦い続けられた理由を地域社会との関係から考える。

正成が軍国主義の象徴のように見なされることは縁ある土地、そこに住む人びとにとって良いことではない。地元の保存会が史料に基づいて正成の真の姿を探り、再評価を行うことは大きな意義がある。

(平野)

2021年11月16日火曜日

都鄙大乱

 11.11 瀬戸内寂聴逝去のニュース、享年99。新聞コラムに、死は怖くない、とずっと書いておられた。それに、「青春とは愛と革命」。合掌。

 11.13 妹孫、離乳食動画。お世話係(?)姉が小匙で口元に持っていくと、妹が口を開ける。別の写真、妹は腹ばいになって後ずさりで移動できるようになった。ヂヂバカちゃんりん。

  11.14 「朝日新聞」鷲田清一〈折々のことば〉は昨日今日と書籍『仙台本屋時間』(前野久美子編、ビブランタン発行)から紹介。

〈この世から剥離しかけた人を、最後にこの世に繋ぎ止めるのは、言葉だと信じている〉(柳美里)

〈子供というものは、大人が思うほど子供っぽくなく、孤独に耐える悲しみや大人同様のきつさが付きまとっていた〉(佐伯一麦)

 詩人キムラさんから逆質問。「竹中郁はコクトーに会ったか?」。私では役不足ながら、調べる。

「会った」と書いている人がいる。でもね、竹中自身のパリ遊学の文章では、カフェに行けば顔はよく見られる、見かけたことがある、というものしか発見できない。1937(昭和11)年コクトー来日し、神戸港に上陸(チャップリンも一緒の船)したとき、新聞社が竹中との会談を企画したが、竹中は結核療養中で叶わず。よって、見かけたことはあるが、会って親しく話したかどうかは、疑問と思う。さてさて真相は?

なお、このとき淀川長治は停泊中の船内に入り、チャップリンと30分ほど話した。港で夫人の買い物に付き添った。

図書館で古書愛好タカさんと遭遇。

 

11.15 妹孫お粥動画。小匙が口から離れると甘え声で催促。もらえると「フフン」と笑う、ように聞こえる。飲み込むと、また催促。ヂヂバカちゃんりん。

 

 髙橋昌明 『都鄙大乱 「源平合戦」の真実』 岩波書店 2800円+税



 神戸大学名誉教授、日本中世史。源平の著書たくさん。

 源平合戦と呼ばれる6年間の戦乱(以仁王の乱から壇ノ浦まで)。これまでの研究業績をふまえ、源平合戦に先立つ歴史的展開=地方の不満を重要な鍵と考える。

1)鳥羽院政期以来の財政負担(度重なる御願寺建立のため荘園負担増加)により地方社会に不満蓄積していた。

2)平家が権力を掌握し知行国・荘園を獲得し、それ以前の支配層への不満まで一手に引き受けることになった。

 史料を精査し、定説や物語の史実と異なっている部分を明らかにする。また、信頼できる史料として同時代の貴族の日記、古文書などを重視。

 支配層の政争、物語的合戦の組み合わせではなく、「この戦乱で亡くなり行方知れずになった人びとに対する、普通の庶民の肉親の情や悔恨の思いは、どう表現され語り継がれたのか」も考える。

 勝者の敗者に対する仕打ちは容赦なし、残酷である。民は田畑を荒らされ、兵糧を徴収され、そのうえ兵士・人夫に駆り出される。

 歴史に消えた武士、庶民のこと、争乱集結後の死者鎮魂事業、平家ゆかりの生存者たちのその後も。

(平野)

2021年11月11日木曜日

淡墨

 11.10 キムラさんから『象牙海岸』出版記念会新資料届く。また2名出席者判明。大阪の詩同人誌「PÈPÈE(ぺえぺえ)」(フランス語の幼児語で人形の意、表紙は人形劇の絵)の創刊号、昭和85月発行。山本信雄という詩人の文章。

〈舊臘神戸で竹中さんの「象牙海岸」の紀念會があつた時、ちょうど御歸阪中だつた船越さんを御誘ひして出かけた。その時に、山下三郎堀辰雄の兩氏が見えてゐて、日頃自分の敬愛してゐる作家に接し得られた喜びで一杯だつた。(後略)〉

「船越さん」は、船越章。「コギト」(保田與重郎主宰)同人、フランス文学者のようだ。

 当時の詩人たちは広く交流していた。

 キムラさんからは毎回貴重な資料をいただく。感謝感謝。

 来春、その貴重な資料発掘を基に新刊が出る予定。季村敏夫『一九二〇年代モダニズム詩集――稲垣足穂と竹中郁周辺』(思潮社)。「周辺」が眼目。楽しみ楽しみ。

 

 若杉慧 「淡墨」 「文學界」昭和18年(1943年)9月号に収録。





本作は翌年2月の第18回芥川賞最終候補4作に入る。受賞作は東野邉薫「和紙」。選考委員の評価はそれに次ぐものだったが、残念。

「神戸事件」を題材にする。慶応4111日(西暦では186825日)、備前藩の行列が西国街道を西宮に向かっていた。神戸村居留地北側の三宮神社前で、数名の外国人兵士が行列を横切った。武士社会の常識では無礼討ちだろう。両者小競り合いから発砲。港の英仏の軍艦から兵士が上陸し、戦闘状態になる。備前藩は摩耶山方面に引き揚げた。双方に負傷者が出たが、死者なし。外国軍は街道を封鎖し、港の日本船を抑留。事件を国際問題として、謝罪と賠償を求めてきた。

ちょうど長州から京に向かう伊藤俊輔が神戸に到着。面識のある英パークス公使に会うが、交渉を拒絶される。

前年10月大政奉還、事件の数日前に鳥羽伏見の戦いが終わったばかり。まだまだ内戦が続く。新政府の体制は整っていない。直ちに伊藤は大坂に行き、外交事務総督・東久世通禧(ひがしくぜみちとみ)から外国事務掛を拝命。新政府外交官としての初仕事が「神戸事件」となる。

 小説は、英国書記官の手記(若杉の仮説)を中心に、備前藩の砲術責任者・瀧善三郎正信切腹を描く。外国側は万国公法を盾に責任者処分を要求。伊藤ら日本側は穏便な処置を繰返し求めるが、聞き入れられない。備前藩(藩主は徳川慶喜の弟)は、朝廷のため、藩のため、瀧の死罪を受け入れる。瀧もすべて飲み込む。

 題名は瀧が家族に遺書を書いた墨のこと。

〈……先刻遺書を認めた残りの墨へ、とくとくとくと淡めすぎるほどに棗の水差を傾けると、發墨が清冽な匂ひをこめて散つた。彼はおもむろに息をのんだ。(後略)〉

 辞世。「きのふ見し夢は今更引かへて 神戸のうらに名をやあげなむ 正信」。

 日本暦29日、兵庫津永福寺にて、外国6ヵ国代表と日本側検証人の前で瀧は切腹を遂げた。

(平野)

2021年11月9日火曜日

袖振り合うも

 11.6 「若杉慧」調べが進まないのは、よそ見寄り道しているせい。

 「みなと元町タウンニュース」351アップされています。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/2021/11/02/townnews351.pdf

 11.7 「朝日歌壇」より。

〈ズッキーニ古着古本万歩計二十歳になって気に入ったもの (富山市)松田わこ〉

 18ヵ月ぶり京都大谷本廟おまいり。境内でぼーっとしていると、法要お済みのご家族からスマホ記念撮影を依頼される。袖振り合うも多生の縁、これも阿弥陀様、先祖のお導き。 

あとはヂヂ用事なし、家人の後をついて行くだけ。着物姿のグループなど、観光客は増えているのでしょうが、電車もバスも空いている。閉まってしまったお店が多い。ホテルがあちこち建っている。

11.8 NR新刊重版情報」579届く。第一面の連載「本を届ける仕事」に市岡陽子さん登場。現在は大学広報室勤務。中学校に「『書店員の仕事』出前授業」をなさった。

 




 若杉慧 『蛇の言葉』 大日本雄弁会講談社 1948(昭和23)年

 図書館本。





表題作は幼少時の記憶をもとに。少年は土蔵の主と言われている大きな蛇を畏怖していた。野の動物たちの食物連鎖とは別の存在と思っていた。扉の開閉時にその蛇を傷つけてしまう。死体を見たとき、家の鶏や卵を盗み、軒のツバメの巣を狙う青大将だったとわかる。

三部作「青色青光(しょうしきしょうこう)」「黄色黄光(おうしきおうこう)」「赤色赤光(しゃくしきしゃっこう)」は、失明した傷病兵が帰郷、農夫として生きる姿を描く。書名は阿弥陀経の言葉から。このあとに「白色白光(びゃくしきびゃっこう)」と続く。一人一人にそれぞれの色があり、輝く、の意。完結編を書く予定だったのかもしれない。「青色青光」は44(昭和19)年第19回芥川賞予選候補。

「微塵世界」も収録。

 装幀、寺田政明。191289年、福岡県出身、洋画家。「池袋モンパルナス」の一員。俳優・寺田農は長男。

(平野)

2021年11月4日木曜日

『象牙海岸』追記

  11.2 BIG ISSUE 418号」表紙とインタビューは「ABBA」。本屋さん注文品受け取り。コミックも。またまたまた積ん読



ご近所さんが孫となかよくしてくださるので、最新の写真を見せる。夜、姉孫とLINE電話。妹孫はすでにネンネ。嗚呼ヂヂバカちゃんりん夜は更ける。

 11.3 詩人キムラさんからメール。竹中郁「象牙海岸出版記念会」の資料見つかる、とのこと。「若杉慧」のことを含めて問い合わせる。キムラさんは神戸・兵庫の文学資料を蒐集。詩史、文学史に埋もれた詩人たちを発掘しておられる。

11.4 キムラさんが資料を送ってくださる。京都の詩同人誌の記事、竹中出版記念会のこと。貴重なもの、感謝。

午前、図書館。午後、ギャラリー島田。途中で海文堂児童書タナさんと遭遇。児童書紹介継続中。三宮ブックス村田さんの思い出話など、歩きながら。


キムラさんからの資料、〈「麺麭(パン)」第5号(編輯者兼発行者 天野隆一 青樹社 昭和八年二月五日発行)後記〉。

〈「象牙海岸」出版記念會 十二月廿五日 神戸朝日會堂地下食堂にて 出席者二十數氏 福原清、喜志邦三、一柳信二、小磯良平、天野隆一、水町百窓、能登秀夫、堀辰雄、山下三郎、亀山勝の諸氏〉

 出席者の名が加わった。

 天野隆一。19051991年、京都の詩人。

 水町百窓。君本昌久・安水稔和編『兵庫の詩人たち』(神戸新聞出版センター、1985年)には、〈本名藤井英雄。生没年月日、出身地不明。昭和6年、神戸で詩誌「詩文家」を大橋真弓らと創刊し、同年、詩集『水晶の家』、翌年に詩集『生活の一章』を佐藤惣之助主宰の「詩之家」から刊行。(後略)〉とある。

 能登秀夫。19071981年、神戸市生まれ、本名・増田寛(かん)。詩集『街の性格』『都会の眼』など。私は『明治の青年ここにあり』(木犀書房、1970年)を持っている。

 

 場所は「神戸朝日會堂地下食堂」。図書館で「大阪朝日新聞」昭和712分を閲覧。まず125日広告欄に「アサヒ食堂」あり。



〈食堂 簡単に御食事と御會会場に最好適特に天ぷらは安價で美味 榮町五 電車通 電元町一六三七 アサヒ食堂〉

 肝心の記念会記事。1223日、「大阪朝日新聞」朝刊神戸版。



〈「象牙の海岸」出版記念會 竹中郁氏の詩集「象牙の海岸」出版記念會が小磯良平、一柳信二ほか數氏の発起で二十五日午後二時より神戸榮町五丁目アサヒ食堂で開かれる。會費五十銭〉

 書名に「の」が入っているのは笑い話か、呆れ話か?

「神戸朝日會堂」は朝日新聞神戸支社のビル名。ホールや貸し会場があった。歳末チャリティーバザー、新年用いけばな展の他、浪曲会、古書市など開催の案内記事あり。別に「朝日会館」もあった。

(平野)

2021年11月2日火曜日

お江戸珍道中

  10.26 朝、図書館に本返却。歯医者さん、元町事務局、買い物。ヂヂも忙しいのだよ。

「朝日新聞」夕刊に選挙に関して書店員おすすめ本紹介。大阪の3書店登場、降祥館書店、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店、そして茨木市の堀廣旭堂(ほりこうきょくどう)。堀廣旭堂は知らなかった。127年続く老舗、川端康成ゆかりの店。

 10.27 「朝日新聞」訃報欄、今月12日に白土三平死去。ご冥福を。 

 10.30 早朝の新幹線で上京、珍道中開始。改札で切符取り忘れたり、逆方向に歩いたり、メトロ乗り間違えたり、毎度のこと。二子玉川で一家待ち合わせてランチ。姉孫にぎやか、てがみをくれる。妹孫おとなしい、写真のときはちゃんとカメラ見る。買い物しておやつ食べて、お別れ。姉孫は、「まだバイバイしない」と家人に抱きつく。ちょいホロリのヂヂバカちゃんりん。


 

 10.31 家人は長男と演劇鑑賞。ヂヂ別行動。

まず、世田谷文学館「描くひと 谷口ジロー展」。作品をすべて読んでいるわけではない。最初は『事件屋稼業』と思う。格闘ものや野生動物ものなど劇画、思想史『「坊ちゃん」の時代』、家庭ものや風景・散歩・食べ物、いろいろな漫画を描いた。

〈それは谷口ジローというジャンルである。誰もまねできないものを描いた。追従者なく、模範者なく、過去も、そして今も孤高してただ独り、谷口ジローだけがいる。〉夢枕獏「谷口ジローというジャンル」(「東京人」2021.11月号

 



 東京オペラシティ「和田誠展」。「膨大で多岐にわたる仕事の全貌に迫る」展覧会似顔絵、ポスター、雑誌表紙、絵本、装幀、レコードジャケットなどが壁面に広がる。

 



 両方とも写真撮影可。

 

 神保町。日曜日はお休みの店が多い。小雨のなかちょっとウロウロ。東京堂書店で冊子おさんぽ神保町 No.32いただく。特集は「おひとりさま神保町の過ごし方」。



 夕方新宿で家人と待ち合わせ。紀伊國屋書店は耐震改装工事しながら営業。時間まで歩きまわる。花園神社、新宿末廣亭を見つける。




 ホテルでテレビ。衆議院選挙結果報道。与党圧勝の様相。投票率低く、野党に風吹かず。多くの情報番組が若者向けに投票を啓蒙していたが、無視されたみたい。

臨時ニュース、京王電鉄車内で無差別殺人未遂事件。

11.1 朝、地震で目覚める。

家人は買い物。ヂヂはNR出版会・くららさん、新泉社・安さんと恒例ランチ。いつもありがとう。その前に神保町から御茶の水、湯島界隈徘徊。ご両人から出版界・本屋業界の近況を聴く。お江戸の大きな本屋さんは改築が続くそう。その間、また数年後の本屋地図はどうなるか。



 

旅の友、筒井清忠編『大正史講義【文化篇】』(ちくま新書)読了。明治とは異なる新しい文化・芸術が誕生し、展開した。政治・社会史と同様の一つの基調があった。「大衆の登場」だ。文学、思想・教養、消費生活にも及ぶ。

……流行・ブームとは巨大な大衆化・同調圧力の謂いにほかならない。大衆化の圧力は既成のエリート層支配を破壊する革新的機能も果たすが、大衆化・同調圧力が成員を大きく規制する側面も強く持っている。〉

たとえば、デモクラシーへの要求が強まる一方、ナショナリズムが勃興。それが昭和の戦争につながった。「大衆化」の波は今も続いているのではないか?


 

帰宅。「ひょうご部落解放 秋号」着。ヂヂ、奥本大三郎『ランボーはなぜ詩を棄てたのか』(集英社インターナショナル新書)紹介。



(平野)