2026年7月16日木曜日

奇怪動物百科

7.14 じっとしていても汗が流れる。まだ溶けはしないだろうけれど、油断していると干からびるかも。

7.15 勤務マンション、居住者からまたも専有部に蜂の巣ありの知らせ。会社担当者の了解を得て処理。ベランダのエアコン室外機の裏側に私の拳ほどの大きさ。今シーズンマンションでの駆除は4つ目、我が家でも2つ取った。これも猛暑ゆえ?

BIG ISSUE531、特集〈睡眠を味方に〉。不眠で悩む人が多いそう。ヂヂイは早寝早起き、よく眠れる。


 

ジョン・アシュトン 『奇怪動物百科 新版』 高橋宣勝訳 山本貴光解説 ハヤカワ・ノンフィクション文庫 1500円+税



1992年博品社より単行本、2005年ハヤカワ文庫。今回新たに解説を付して刊行。

 著者ジョン・アシュトン(18341911)はイギリスの文献収集家、編纂者。民俗、社会史をテーマに30冊以上編集している。

 書名に「奇怪」とあるように、過去の人々が見たらしい、聞いたらしい、いたらしい、想像した、不思議な動物たちとその生態を万巻の書から紹介する。ドラゴン、ユニコーン、ケンタウロス、巨人、人魚……、19世紀のアシュトンから見て非科学的だったはずの想像上の動物たちだが、それでもあえて執筆。現代人も、そんなアホな、とバカにしてはいけない。

古代の賢人や中世の旅行家たちが得た情報をその時代の人々にどのように伝えたか、人々はどのように想像をふくらませたか。外見、習性、どこにいるのか、御利益あるのか、食べられるのか、毒か薬か……、あくまで伝聞情報として伝える人もいれば、実物を観察したかのごとく書く人もいる。未知の世界は恐ろしいけれど、興味はある。不思議は謎、想像はさらに奇想となり、幻想物語に登場するし、詩にもする。

 表紙のまん中の絵は「植物ヒツジ」。1696年にドイツの博物学者が描いた韃靼(タタール)の植物子羊。羊は茎の可動範囲の草を食べる。食べ尽くしたり、茎が折れると死ぬ。ほかにも紹介者がいて、実在と信じられていた。フランス16世紀の詩人がエデンの園でアダムが「植物ヒツジ」を発見する様子をうたっている。

子羊が莢の中にいる種類もあり、こちらは14世紀のイギリス人貴族がインドへ行く途中の国でのことと記述している。

(平野)

2026年7月12日日曜日

遠くの街に犬の吠える

7.7 あっちの権力者スポーツのルールにまで口出して捻じ曲げる。開いた口、ポッカ――ン! こっちの権力者は国民生活に関係ないことばっかりやりたがる。

7.8 絵本作家・林明子さん訃報。四十数年前、コーべブックス高槻店の児童書・ニシさんに林さんの絵本を薦めてもらった。今は子から孫が愛読。感謝と共にご冥福をお祈りします。

 事実はホラー小説より怖い。他人の唇を糸と針で縫う……、もちろん麻酔なしでっしゃろ?……、書くだけで貧血起こしそう。

 近畿梅雨明け。猛暑に対処。

7.11 孫に相撲番付など宅配便。

 

吉田篤弘 『遠くの街に犬の吠える』 ちくま文庫 2020



 単行本は2017年筑摩書房より。

 作家・吉田は編集者・茜に小説朗読を提案され、音響技術者・冴島に引き合わされる。冴島は12歳の時、野球で左目にボールが当たり、左の瞳は水色になり色彩感覚を失った。それから音を意識するようになり、常に小型録音機を持ち、「遠吠え」をひろっている。また、茜は代書屋・夏子を紹介。

 4人は、時期は異なるが、白井先生の辞書「バッテン語辞典」編集を手伝った、と判明。バッテンとは「×」。辞書から省かれた言葉、忘れられた古い言葉、生い立ちや履歴のわからない言葉をひろい集める作業。その白井先生が亡くなり、夏子の手元になぜか先生がある女性に送った手紙が遺った。先生の思いは女性に届いたのか、届かなかったのか、その言葉はどこに行ったのか。先生の「封印された言葉」が明らかになる。

(平野)

2026年7月6日月曜日

中上健次 路地のビジョン

 7.1 「朝日新聞」朝刊連載小説「早雲」始まる。戦国武将・北条早雲のお話。著者の砂原浩太朗さんは神戸元町育ち。

 通勤電車内、スマホスマホは相変わらずだけれど、本を読む人が何人かいらっしゃる。小学生は学習漫画や童話文庫を読んでいる。

7.2 BIG ISSUE530、特集〈市民による「水道」再生へ〉。



 本好き知人複数がSNSで紹介している本を注文。

7.5 久々の図書館、しばらくさぼっていた。

「朝日歌壇」より。

〈車窓から潮の匂いが流れきて視界にひろごる枯木灘見ゆ (東大阪市)池中健一〉

 ちょうど『中上健次 路地のビジョン』渡邊英理岩波新書960円+税)を読んでいる。中上は熊野の被差別部落=路地を舞台に作品を発表。199246歳で亡くなった。もっと長生きして書き続けてほしかった。ヂヂイは若い頃中上作品を読んだけれど、読みが浅かった。戦後の経済成長、性、暴力、差別がテーマということは、日本近代史を見つめ直すこと。



著者は大阪大学大学院人文学研究科教授。

〈中上は、路地の視座から(再)開発を描いた。(再)開発の動的過程は表象しづらいことも手伝い、小説作品で描かれる例は多くはないが、それを詳細に描いた点が、「戦後文学」における固有の位置を中上に与えている。中上における路地は、差別や(再)開発を表象する虚構の空間である。そこには、戦後日本社会の姿が、彼独自の周縁的な視野から描き出されている。/同時に、路地は、中上の文学的かつ理論的、思想的なビジョンであった。(後略)〉

(平野)

2026年6月30日火曜日

天国からの贈り物

6.27 花森書林店主から記念本を手渡される。

 2022年のこと、私がタウン紙に連載していたコラム「海という名の本屋が消えた」(みなと元町タウンニュース)100回を記念して、先代店主メグさん(現店主の姉)と製本家カクさんが原稿コピーを特装本に仕立ててくれた。翌235月、メグさんは病のため鬼籍に入った。私の連載はだらだらと244月(125回)まで続いた。メグさんはカクさんに連載終了後に残りの分も製本するよう言い遺しておられた。カクさんは律儀に約束を守り、この度完成。有難く、ありがたく、うれしいこと。天国からの贈り物です。改めてメグさん、カクさんに感謝申し上げます。

コラムはみずのわ出版社主はじめ多くの方々に助けていただき、昨年『神戸元町ジャーナル』と改題して出版できた。まだまだ調べ残したこと、書き洩らしたことあり。間違い訂正もしなければ。






6.28 「朝日歌壇」より。

〈古書店のはずが本棚狭くなり、フィギュアとトレカ幅を利かせる (相馬市)根岸浩一〉

6.29 訃報、美輪明宏さんが今月20日に亡くなっていた。91歳。ご冥福を。

6.30 未明から家族はテレビでサッカー観戦。ヂヂイは通常通り睡眠。ニュースで王国ブラジルに惜敗と知る。選手たちスタッフさん他関係者皆さんに拍手。

(平野)

2026年6月27日土曜日

空飛ぶ馬

6.21 娘から「父の日」祝い着。ヂヂイ「恥痴の日」。

6.22 会社の全管理人が集まる研修会。6070代が約150名、日々真面目に業務に励んでいる、はず。会場に向かう途中、男性から道を尋ねられる。「若い人より年配の人に訊ねた方が、と思って」とおっしゃる。同僚と判明して一緒に行く。

6.23 本屋さんで取り寄せ依頼。あとから確認の電話あり。担当さんは珍しいお名前。そう言えば、お店では皆さんの名札は店名のみで個人名記載しなくなっている。

6.24 仕事先マンションのお部屋ベランダに蜂の巣(私の拳の半分くらい)あり、会社と居住者の了承を得て駆除。管理人の仕事は共用部分だけだから手続き必要。

6.25 朝、東北で地震。台風も接近中。災害列島の宿命。今日は会社の健康診断。

 読んでいる本に、〈陰暦五月の梅雨の晴れ間、言葉本来の意味での皐月晴れの日であった。〉の一文。本を閉じて外に出て、空を見上げて、晴れならぴったりなのだけれど、梅雨真っ最中ゆえ、そうはいかない。

北村薫『空飛ぶ馬』(創元推理文庫、19944月初版、7717版)。



〈水無月のころ、円紫さんとの出逢い――ショートカットのは十九歳〉(帯より)

 ミステリー小説だが、殺人や凶悪事件は起きない。女子大学生が日常生活で持った疑問や謎、偶然関わってしまった事件の裏側などを、洞察力優れた落語家・春桜亭円紫(しゅんおうてい・えんし)の助言を得て解いていく。落語家は教授の紹介で知り合った国文科の先輩。

6.26 サッカーワールドカップは我が国でもお祭り騒ぎ。強豪チームになったということか。今日午前中のゲームは決勝トーナメント進出がかかる。ヂヂイは帰宅して、夕刊で引き分け、進出決定を知る。

(平野)

2026年6月21日日曜日

神風連とその時代

6.14 「朝日歌壇・俳壇」より。

〈本屋みな消えて跡地に居酒屋とパチンコ店の駅前通り 〈鎌倉市〉遠藤千草〉

〈緑陰や尻ポケットに文庫本 (印西市)伊藤博康〉

6.15 BIG ISSUE529、特集〈社会運動って何?〉。実践者たちの言葉。「自分たちが幸せに暮らすための一つの手段」。「当たり前への反逆の実践」。「社会の死角を可視化する」。表紙とインタビューはイギリスのシンガーソングライター「Raye(レイ)」。



6.18 7月家族東京行き。ヂヂイは特に用事なく、荷物持ち。

6.20 梅雨の晴れ間が続いていたけれど、今日は朝から雨。孫に宅配便送って、ギャラリー島田DM作業。スタッフさんが展示中の作家さん(神戸出身)に紹介してくださる。

 

渡辺京二 『神風連とその時代』 中公文庫 1200円+税



 初版は1977年葦書房より。2006年洋泉社MC新書、2011年洋泉社新書y

「神風連(しんぷうれん)の乱」は1876年(明治9)の士族反乱。74年(明治7)の佐賀の乱から、76年秋月の乱・萩の乱、77年(明治10)西南戦争へと続く。神風連が他の乱と異なる点は、参加者約170名のうち死刑・獄中死を含めて7割の人が死亡ということ。渡辺は「時代を否認するものの一種の集団自決であった何よりの証拠」と断言する。

「神風連」は世間による「戯称」。正しくは「熊本敬神党」。「国家統治原理としての古代神道を純粋な形で復元し、その復活をもって幕末の危機を克服しようとしたところに思想の中核を見ることができる」。尊王攘夷を理念とするが、武力闘争とは一線を画し、リーダー林櫻園(はやし・おうえん)の「神事は本なり、人事は末なり」=神事専念の教えを守った。櫻園による宗教的秘密結社と言える。師亡きあと、門弟たちがなぜ命を懸けて明治新政府に対して乱を起こしたのか? 熊本士族の動向、櫻園の思想、後継者たちの人物像、敬神党の思想的意義を資料から読み解く。

(平野)

2026年6月13日土曜日

きみがなきあと

6.6 栄町通〈1003〉にてトーク会。

〈街に「本のある場所」が必要な理由〉 南陀楼綾繁×井上理津子

南陀楼さん『本のある場所を訪ねて』(教育評論社)、井上さん『本屋百景 独立系書店をめぐりめぐる』(日刊現代、講談社)発刊記念。南陀楼さんは書店、出版社、図書館、ブックイベントなど本のある場所を訪ね、地域の人たちを取材。井上さんは首都圏を中心に独立系書店102店を取材。おふたりの本との関わり、書店と地域それぞれの特色などを話してくださった。会場〈1003〉店主の古書・新刊の選書や多様なZINE展開に驚いておられる。海文堂のことにも触れてくださり、参加者のなかに児童書のお客さんがいらしてご挨拶できた。

6.7 「朝日歌壇」より。

〈未読の本七冊かさねてうれしさは更級日記の少女におなじ (仙台市)坂本捷子〉

〈映画館銭湯書店なくなりてただ住むだけの町となりたり (観音寺市)篠原俊則〉

BIG ISSUE528。特集〈“紙とデジタル”を使い分ける〉。表紙とインタビューは岡本多緒、カンヌ国際映画祭女優賞受賞。



6.9 元町の八百屋さん開店までの時間調整で覗いた古本屋さん2軒で探していた文庫3冊見つける。ヂヂイの小さな幸せ。

6.11 野球観戦、燕組対猛牛組、京セラドーム大阪。セパ交流戦、燕苦戦中。本日も敗けて七連敗。

 

木内昇 『きみがなきあと』 講談社 2400円+税



 幕末、実在の歌人・尼さん「野村望東尼(ぼうとうに、もとに。野村もと)。高杉晋作が死の迫るなか書きかけていた和歌「面白きこともなき世を面白く」に、「棲みなすものは心なりけり」とつけた。

 モトは和歌の同門である筑前福岡藩士・野村新三郎の後妻に入る。仲睦まじい夫婦だったが、夫病死。モトは50半ばにして出家。静かに余生を送るつもりだった。夫の和歌をまとめるため大坂に師匠を訪ね、京にも足を伸ばす。商家の手代・徳次郎に尊王攘夷の社会情勢を教えられ、勤王の公家老女に刺激を受け、元藩士の勤王派・平野国臣と知り合う。帰郷後、藩内の勤王派を支援し、徳次郎からの最新情報を伝えるなど、彼らから慕われた。長州の高杉を匿ったこともある。政変、武力衝突、各藩も勤王・佐幕が揺れ動き粛清や内ゲバが繰り返される。藩でも平野はじめ多くの若者の血が流れた。ついにモトと家督を継いだ孫までも捕らえられる。高杉の指示によりモトは流刑地から救い出され、長州に保護される。

高杉は病床にあった。モトは彼の正妻と愛人それぞれを宥め、励ましつつ、彼とも語り合う。高杉は、モトとは「人と人」との関係、これは「おなごに贈る最上の褒め言葉」と言う。

〈――そうかもしれぬな。/モトは素直に高杉の言葉を受け取る。高杉だけは初手から、こちらをおなごだからと軽んじるでもなく、面倒見がよく温かな母のごとき役割を押し付けるでもなく、同じ目の高さで話のできる同志として接してくれていたのだ。〉

 書名はモトが夫を思う和歌、「きみがなきあとよりかれし秋草は生かへりきて花さへぞさく」から。

家族を思いつつ、封建制度のもと激動の世に自らの意思で飛び込んだ女性の物語。作品中、「平野」「平野」と出てくるので、モトさんに呼ばれているみたい。

(平野)