2026年5月21日木曜日

漢字辞典の謎

5.16 家人の携帯電話機種変更について行く。担当さんのお話、老夫婦さっぱり分からず。娘や息子にやってもらえばいいという、呑気、無責任、依存。

「熱風」5月号(スタジオジブリ)の特集は〈老いとは何か〉。

養老孟司 システム化した社会では自然な変化である「老い」ですら、ノイズとして扱われることになるかもしれない。

山本學 役者は、常に人や自分を「観察」するのが仕事。歳をとったら、まず自分をよく見つめなくちゃ。

東京都目黒区で過ごす川畑三姉妹(106歳、93歳、89歳)インタビューも。



5.17 朝のニュース番組、ゲストのエコノミスト氏はテレビ登場久しぶり。ナフサ不足、「カルビーよくやった」はじめ、兵器輸出、司法改革など明解なコメント。30数年前にアメリカの友人から聞いたという話。交渉は焦った方が負け、アメリカは西部劇のガンマンで相手より速く撃つことしか考えていない。

5.19 BIG ISSUE527。特集〈とっておきの植物園〉、おすすめの都会の身近な植物園。表紙とインタビューは映画俳優、ジェニファー・ローレンス。



 

小山鉄郎 『漢字辞典の謎 なぜ似ている 白川静〚字統』と諸橋轍次『広漢和辞典』

論創社 2200円+税



 漢字研究者・漢字辞典編者として功績の大きい諸橋轍次(18831982)と白川静(19102006)。ふたりの漢字の「解字」(成り立ちの説明)には大きな違いがある。

諸橋は、大正末期から漢和辞典編纂に取り組み、戦災を乗り越え、1960年に親字5万語、熟語53万語収録した『大漢和辞典』(全13巻、大修館書店)を完成。2000年に修訂版第二版。その後も大修館書店は『大漢和辞典』の姉妹編『広漢和辞典』(全4巻、198182)はじめ『漢語林』(1987年刊、現在『新漢語林 第二版』)など学習漢和辞典を刊行している。

諸橋はじめ多くの漢字研究者が典拠とするのは、後漢(西暦100年ごろ)の許慎による部首別字書『説文解字』。白川が研究する古代・殷の甲骨文字や金文が発見されたのは1899年。許慎の時代には地中深く埋もれていた。白川は中国古代研究から字源を解釈。独力で『字統』『字訓』『字通』(平凡社、198496)を書き上げた。

白川説はこれまでの「解字」とはまったく異なる。古代の神、呪術に力点を置く。たとえば従来の辞典は「口」を顔にある「くち」の形と説明するが、白川は甲骨文字「サイ」(本書表紙の絵)、神への祈りの言葉=祝詞を入れる器と考える。「右」の「ナ」は古代文字では「又」(右手)で「サイ」を持って祈る字。「吉」の「士」は士族のシンボル「鉞(まさかり)」、「サイ」の上に於いて邪悪なものを祓い守る字。「サイ」系統の文字は総数の一割に近い数になる。吾、告、器、害、各、司、詞、聖、君、史……。白川説は漢字を体系的に説明できる。

その白川説に近い考えを諸橋の後継辞書が不十分ながらかなり取り入れている。もちろん学問の世界で白川説に批判はある。しかし、白川説を取るならば、それはなぜなのか、出典は何かを記すべきと苦言。

小山は元共同通信社編集委員・論説委員。白川の業績を紹介している。現在「白川静会」事務局長。

(平野)

2026年5月16日土曜日

鶴見俊輔の発想法

5.12 今日行った本屋さん、有人レジを休止していて、書店員さんがお客を無人レジに案内して教えている。人手不足とか人員削減とか、いろいろ事情があるのでしょうが、検索機で本探して、セルフレジで会計して、だんだん味気なくなる。ヂヂイは取り置きの本があったので通常のレジで会計してもらう。

夕方、埼玉・いわさん迎えての年一回の飲み会。会場に向かう途中出会った古書店主を誘ったらメンバー入り。のの様出版記念の乾杯。

いわさんは仕事のかたわら毎月地元で古書とジャズのイベントを主宰。

こばさんは仕事引退して、ボランティアと句作の日々。自分の写真をAIに「これは誰?」と質問したら、著名な歌舞伎俳優との回答あったそう。そんなことして遊んでるんや~。

5.16 ギャラリー島田DM発送。ギャラリーと縁深い画家、石井一男さんが3月に亡くなった。毎年恒例11月の展覧会は石井さんの画業を偲ぶ場となる。

5.18 作家・佐藤愛子さん逝去、102歳。『愛子』『血脈』。

 

『鶴見俊輔の発想法』 

藤原辰史・黒川創編 編集グループSURE 2400円+税



故鶴見俊輔の蔵書はじめ日記、ノート、写真などの資料を公開する「鶴見俊輔文庫」開設準備中。実現に向けて、2025119日京都大学でシンポジウム「鶴見俊輔のコスモロジー」を開催。本書はその講演と討論を掲載。また資料公開の第一歩として鶴見の日記(1940.912)を翻刻、注釈を付して収録する。

 

序論 鶴見俊輔の発想法  藤原辰史

第一部 シンポジウム「鶴見俊輔のコスモロジー」

ノートに彼は何を残したか?  黒川創

記憶と人物交流  鶴見太郎

鶴見俊輔とジャーナリズム思想  根津朝彦

転向論再考  福家崇洋

討論と質疑 鶴見俊輔はどこから来たか

第二部 「鶴見俊輔日記」より

 

日記はハーバード大学第二学年前期にあたる。勉学の悩みや健康不安、留学生仲間との交流が綴られる。著名な学者の教えを受け、試験の結果に落胆。たまに姉・和子の寄宿舎(自動車で6時間ほど)を訪問して心和らぐ。一年の反省として、「学問は大部(ママ)進歩した。相応の学校の成績をとった」。英語「前途程遠し」。

〈自分はあまり勉強してゐない。姉様にたいし、他の日本人留学生にたいし、維新の志士にたいして愧づる。/要するに僕は去年よりはよくなったと思ふが、良心のとがめること大なるものだ。良心的に考へると自分のいまの生活は全く不道徳きはまるものだ。〉

(平野)

2026年5月12日火曜日

眼と雨と朝の傘

5.7 図書館に孫が借りた本を返却しに行ったら、連休明けで休館日。すごすご帰る。

5.8 一週間ぶりの出勤。掃除しがいあり。

BIG ISSUE526。特集〈幸せになる“ことば”の学び方〉、幸せに生きるための言語学習。



5.9 内科診療、図書館本返却、買い物、孫に宅配便。家族外出、ヂヂイ留守番。

5.11 さわやかな五月晴れ。時々空を見上げて身体を動かす。

 

小野原教子 『眼と雨と朝の傘』 書肆侃侃房 2800円+税



 装釘 戸田勝久  装画 合田ノブヨ

 ファッション研究者にして詩人、第四詩集。衣服、植物、書物への思い、親しかった故人と動物たちへの追悼を紡ぐ。

書名の詩、「眼と雨と朝の傘」は〈彼とあたしの最後の朝〉。

〈眼を閉じて/風が吹いて もうすこしで/雨が降りそうなの 美しかった街を/歩いていたその時のことをおもいだして/いたら雨が降って来た 彼とあたしの眼から (後略)〉

詩人「のの様」は大学の先生、古書プロジェクト「百窓文庫」主宰。海文堂書店の顧客・アドバイザー、何より飲み会仲間。収録の「願海」と「海よ」は海文堂追憶。「あとがき」で海文堂関係者のことも。

(平野)

2026年5月7日木曜日

飛ぶ孔雀

4.295.5 孫姉妹やって来て賑やか。姉妹ケンカ・母娘ケンカあり、笑って、怒って、泣いて、食べて、寝て……を繰り返す。雨が降ったりやんだり、遠出せず。トランプ・オセロ、お絵かきして、おもちゃ散らかして、近所買い物・散歩。なかよしご近所さんたちに挨拶まわり。大阪の親戚が孫たちに会いに来てくれて、海外留学お嬢交えてLINE電話。ヂヂババ非日常の一週間終了。

5.6 大阪親戚故人の住まい片付け手伝い。おおかたは親族が片付けしていて、ヂヂババは特にすることなし。思い出話で懐かしむ。

  山尾悠子 『飛ぶ孔雀』 文春文庫 



 2018年文藝春秋より単行本出版、2020年文春文庫。2018年、泉鏡花文学賞、日本SF大賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。

 幻想的な物語だが、ヂヂイはストーリーを説明できない。誰がどうなって、何がこうなって、という筋道をたどれない。

火が燃えにくくなった世界を舞台に、時空を超えて様々な人物が登場して様々なエピソードが語られる。岡山の後楽園とか神戸のロープウエイのイメージや、大災害・大事故後の印象を持つが、あくまでヂヂイの想像。神話、難解な詩を読んでいる感覚。表題の「孔雀」は大茶会開催の庭園で放し飼いされている。火を盗みに来た双子が孔雀に襲われる。

〈飛ぶ孔雀は飾り羽根を畳み、下から茶色の風切り羽根の列をあらわして烈しく飛翔する。苛烈な羽音、艶やかな光沢のある青い首を低く伸ばし、闇の奥から不意をついてあらわれる。その目は狂気であり凶器、異形の縁取りは血の赤。〉

(平野)

2026年4月28日火曜日

つむじ風食堂の夜

4.25 連休に孫たちが来るので、掃除・片付け指令。やらんと、放り出される。

 花壇のさくらんぼ収穫。今年もたくさん実が生った。ご近所に少しずつおすそ分け。




4.26 「朝日俳壇」より。

〈平台の新入生の読むべき本 (川崎市)多田敬〉

〈老二人絵本見てゐる春夜かな (大阪市)島田和子〉

4.27 さくらんぼの実まだたくさんある。野鳥が来て啄んでいる。孫たち来るまで残っているか? 

 

吉田篤弘 『つむじ風食堂の夜』 中央公論新社 2000円+税



 2002年筑摩書房刊(05年ちくま文庫)を全面改稿し、著者自身による解説を収録。

 架空の町・月舟町シリーズ。十字路の角にひっそりある夜だけ営業の食堂。各章の場面が芝居の舞台のよう。

〈暖簾に名はない。/食堂のあるじは、「名無しの食堂」を気どったのである。ところが、十字路にうなる風に巻き込まれた客の誰もが、/〈つむじ風食堂〉/と少し目を細めて、そう呼ぶようになった。〉

殺人事件なし、家族や男女のドロドロなし、再開発で住民が困るという話もなし。語り手=主人公は雨を降らせる研究をしている中年の「先生」。生活のためにアパートの部屋にこもって雑誌原稿書き。食堂の主人と姪サエコさんと猫オセロ、常連客の帽子屋桜田さん、劇団女優の奈々津さん、果物屋の青年。それに古本屋のデ・ニーロ親方、古道具屋の親父らが話題を提供。アパートの家主、母親、手品師だった父、父が通った喫茶店タブラさんとその息子、編集者の小氷さん。父は幕の後ろから手だけ出して手品を披露した。「先生」は袖口だけの舞台衣装を部屋に飾っている。

 孤独な「先生」が常連さんたちと宇宙の話や時空の難しい話をして、彼らから訳あり商品を買う。桜田さんから「二重空間移動装置」=万歩計、古道具親父からよく似た場所に傷のある机ふたつ、デ・ニーロ親方から唐辛子本、桜田さんから帽子も。次第に親しみが深まり、学生時代の演劇活動を打ち明けると、奈々津さんから脚本依頼。父との思い出の場所を訪ねると、タブラ二代目に会い、互いに亡父からのメッセージに気づく。

四方からの風に吹かれるようにして人と接し、モノや記憶が集まる。散らばって行くモノもある。

(平野)

2026年4月23日木曜日

詩人茨木のり子の誕生

 4.19 「朝日新聞」朝刊「be on Sunday」欄に〈街の書店、残ってほしいですか?〉アンケート集計。2565人のうち94%が「はい」と回答。じゃあ書店に足を運んで買おう、それで大方解決するのでは? だけど、終活・断捨離のため「自分は貢献できず心苦しい」との意見多数。支援・応援せずに、書店生き残ってほしい、は回答の意味ない。  

「朝日歌壇・俳壇」より。

〈そろってるものは残せと妻が言い押入れに縛る「つげ義春全集」 (大和郡山市)四方護〉

〈つげさんの絵は窓からの景色よと茅葺(かやぶき)宿の女将目を伏す (宝塚市)田中威至〉

〈黄水仙文読む暮(くら)し続けたし (高知市)加田紗智〉

〈冥(くら)い春つげ義春を連れて行く (筑紫野市)二宮正博〉

4.19 電車内や休憩時間に読む本がなくなって、古本均一棚で買った怪談集や随筆集をめくっている。既読の作品もあるが、あきない。

4.22 そうなんや~、日本は落ちぶれたんや~。

 仕事終わって、六甲道飲み会。行く途中の公園で知人に遭遇。写真で知る娘さん(小1)に挨拶できて、ヂヂイ感涙。飲み会では詩人さんから出来立ての新刊いただく。帰り道、調子に乗って躓いてこける。

 

熊谷誠人(くまがい・まこと) 『詩人茨木のり子の誕生 西尾の少女の物語』 風媒社 1800円+税



 2026年は茨木のり子生誕100年にあたり、その記念出版。風媒社は名古屋の出版社。「西尾」は現在の愛知県西尾市。のり子が育った町。

 著者は1962年愛知県岡崎市生まれ、愛知県立高校の国語教師から県史編纂、教頭、校長歴任し、現在は私立高校の校長。「詩人茨木のり子の会」会員。

 のり子は大阪市生まれだが、医師である父の転勤により、6歳時から愛知県幡豆(はず)郡西尾町で育つ。16歳の時、父は同郡吉良町(共に現西尾市)で医院開院。

 本書は、のり子の詩10篇を読み解き、詩に詠まれた彼女の原体験を掘り起こす。ちょうど少女時代。詩人「茨木のり子」のスタートは1950年(昭和25)だが、本書は「宮崎のり子」であった時期(「のり」の漢字は部首くにがまえの中に、公・儿。辞書には見当たらない)に焦点をあてる。西尾や吉良の町、家族のこと、学校のこと、友のこと、教師とのかかわりなど、「一人の少女が成長していく物語」。

1972年(昭和47)発表の「麦藁帽子に」は小学一年生の時の思い出。

〈麦藁帽子に トマトを入れて 抱えて歩けば 暑いよ おでこ たら らら らら らン たら らら らら らン〉

北原白秋作詞の明るい童謡のフレーズからはじまる回想。最後は

〈だんだん愉快になってきて それから日本史年表を繰ってみる 昭和八年――私の小学校一年生 小林多喜二が虐殺されていた!〉

 小さな町で不自由なくのびのび育っていた少女時代だったが、世の中は戦争に向かっていた。

1957年(昭和32)に発表した「わたしが一番きれいだったとき」は、その「一番きれいだった」時代に「まわりの人達が沢山死んだ」「男たちは挙手の礼しか知らなくて きれいな眼差だけを残し皆発っていった」と、戦争の残酷を詠う。

 のり子は1926年(大正15)生まれ。昭和と同じ年齢を歩んできた。

 カバー写真は1938年(昭和13)の誕生記念のもの。

(平野)

2026年4月18日土曜日

本のある場所を訪ねて

4.15 京都府南丹市の小学生行方不明事件、痛ましく辛い結果。かわいそう。

4.16 漫画家・東海林さだおさん死去の報。楽しく、おいしく読ませてくださった。感謝。

 ギャラリー島田DM作業。休廊日だが、スタッフさんは画家さんと打合せ。代表のかわいい令嬢(1歳)に遊んでもらいながら、いつもより早く終了。スタッフ・ヤマさんと持病の話。お菓子、みかん、お茶をいただいて帰る。

BIG ISSUE525、表紙とインタビューは寺尾紗穂(シンガーソングライター、文筆家)。特集〈仕事とケア 働く時間とジェンダー平等〉。



4.17 毎年5月に仕事で来神するイワさんを迎えての飲み会決定。おじさんたちが喜んでいる。ピンポンピンポンLINEが鳴る。

 

南陀楼綾繁 『本のある場所を訪ねて』 教育評論社 2200円+税



 著者はライター・編集者、一箱古本市はじめ多くのブックイベントを企画、実行している。本書は「本のある場所」について考える。

1 独立系書店  始める楽しさと続ける難しさ

2 まちの本屋  日々の積み重ねと変化

3 小規模出版社  小さいからこそ出せる本がある

4 地方出版  ここで暮らしながら本をつくる

5 本のビオトープ  本を残し、次代に伝える

〈ひとつの地域にある新刊書店、古書店、出版社、図書館、そして著者、編集者、読者、ZINEやミニコミの発行者など、本に関わる動きや人をできる限り広く見ていく。そうすることによって、地図を描くように、その地域の「本のある場所」の姿が浮かび上がってくるのではないか。私は、その動きに関わる人たちを、いっそのこと、まとめて「本屋さん」と呼びたい気持ちにも駆られる。そこには、本をめぐるビオトープ(生態系)が息づいている。〉

 出版業界新聞「新文化」に掲載。取材とイベントに全国各地を訪れる。コロナ禍に取材した記事もあり、関係者の苦労を知る。

〈「本のある場所」を訪ねる私は、結局のところ、そこにいる人に会いにいっているのだろう。〉

(平野)