3.24 用事をちゃちゃっとすませて、元町映画館「金子文子 何が私をこうさせたか」(浜野佐知監督)。1923年9月関東大震災の混乱の中、朴烈と共に逮捕拘留。皇族暗殺を企てたという罪。26年3月25日死刑判決から7月23日刑務所独房で自死までの日々を描く。
3.25 本日の「朝日新聞」。「天声人語」、金子文子死刑判決がちょうど100年前と紹介。国家によって個人が弾圧されることを否定してこの国の戦後が始まった。
〈それから81年。弱い者がどうしようもなく悲しむ世は変わったか。文子のような苦しみを強いられる人間はいなくなったか。〉
同紙より、懐かしい人。「ひと」欄に登場は、服飾評論家・くろすとしゆき(90歳)。1960年代アメリカ若者ファッション・アイビー紹介者。当時雑誌編集を担当したのは〈本に狂う〉の故草森紳一。
同じく「リレーオピニオン」宗教人類学の植島啓司(1947年生まれ)、「うまし国・伊勢」の歴史と魅力を語る。「高橋源一郎の歩きながら、考える」は老いとは何か、を考察。インテリ源ちゃん75歳。生物は生殖可能期間が終わったら「死」を迎える。老人に役目はあるのか? 先輩たちの活躍を見ると、まだありそう。
『山尾悠子偏愛アンソロジー 構造と美文』 山尾悠子編 ちくま文庫 1100円+税
作家・山尾悠子が選んだ幻想小説集。
J・L・ボルヘス『バベルの図書館』 J・G・バラード『時間の庭』 A・P・ド・マンディアルグ『燠火』 金井美恵子『血まみれマリー』 澁澤龍彦『蘭房』 三島由紀夫『中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃』 マルセル・シュオッブ『悲劇詩人 シリル・ターナー』 多田智満子『幻術の塔』……。
山尾は1955年岡山市生まれ。1975年SF小説でデビュー。休筆期間の後、2018年『飛ぶ孔雀』(文藝春秋)で泉鏡花文学賞、日本SF大賞、芸術選奨文部科学大臣賞受賞。本書『構造と美文』は仮のタイトルだったが、作品を選んでいくと、「一定の方向性がある」と気づく。
〈……ざっくりした言いかただが、どうやら<構造のある小説>および<極度に人工的な文章、スタイル>の二方向が我が好みらしいのだ。ここのところは、あるいは読書人生の最初期に出会った澁澤龍彦からの影響が大きいのかもしれないが――しかしたとえば、何より垂直に孤立した<塔>のイメージを好むという性癖はじしんの特質かもしれず。また短篇であれば、複雑怪奇なイメージができるだけシンプルな一直線構造となっているのが好ましいとか。端正な入れ子型、また幾何学的なトポロジー構造なども佳し。あるいは若いころ、特に好みの文章の作を(部分的にだが)暗記して、ひとりで声に出して暗唱するのが好きであったことも思い出す。〉
「若い時代に出会った特別な神々」の「とにかく美しい」「豊穣なる日本語で読むことのできる」作品を収録。
(平野)
