2021年9月28日火曜日

文豪と俳句

 9.25 図書館、神戸小学校調べ。校歌作曲者直筆の楽譜をコピー。娘に見てもらい、意見拝聴。

 図書館で「KOBEの本棚――神戸ふるさと文庫だより――」(A3、二つ折り)いただく。年に数回神戸本新刊と身近な神戸史を紹介する。今回一面は「タイム・ボール――報時球(ほうじきゅう)」のこと。「港務部報時球」、港に停泊する船に時刻を知らせる装置。1903(明治36)年、花隈城跡に建てられた。正午前、鉄塔の上に直径2メートルの赤い球を上げ、正午丁度に落とす。船からそれを見ていて時間を正す。同時に波止場で大砲を鳴らした時期もあったことから、花隈は「ドン山」と呼ばれた。稲垣足穂は鉄塔を「玉つきヤグラ」と回想しているそうだ。竹中郁はスケッチを残している(『私のびっくり箱』神戸新聞出版センター、1985年)。1925(大正14)年、「タイム・ボール」は海岸通の税関・逓信省・水上警察合同ビルに移された。10年ほどで無線報時に切り替わり、役目を終えた。1969(昭和44)年花隈城跡が公園に整備されるまで鉄塔の残骸があった。写真、左が竹中の花隈の絵、右は川西英が描いた海岸通の二代目。


 

 9.27 コロナ対応の緊急事態宣言は月末で解除される模様。個人的には図書館サービスが元に戻ることはありがたい。飲みに行くのは我慢する。コロナが完全に終息したわけではない。

 岸本尚毅 『文豪と俳句』 集英社新書 940円+税



 明治・大正・昭和の文豪から現役作家まで、俳句から個々の作家に迫る。

 幸田露伴、尾崎紅葉、泉鏡花、森鴎外、芥川龍之介、横光利一、宮沢賢治、室生犀星、太宰治、川上弘美、夏目漱石、永井荷風。

〈文豪たちの俳句は、どこか違う。かなり違う。それをさすがと言うべきか、やっぱり変と言うべきか――。〉カバー袖の案内文より。

 露伴、漱石、芥川の俳句はよく知られる。多くの作家たちが俳句を愛好している。実生活を詠む句、小説同様幻想的な句、生き様そのものの句、句にそれぞれの個性がしっかり現れる。

 小説家の作風が多様なように、俳句も多様。小説作品、日記、評伝などから作家の生き方・考え方に迫り、俳句を読み解く。また俳人の名句と比較する。

著者は1961年生まれの俳人。俳句賞の選考委員、テレビ・新聞で選者を務める。最終章で漱石と荷風の「句合わせ」をする。同じ題でそれぞれの句を選んで勝ち負けを判定する、という鑑賞方法。「自画像」「運命」「悟り」「猫」など11番勝負。硬派の漱石、軟派ながら時勢に迎合しなかった荷風。共通点も多い。江戸の粋、外国生活、語学、大学教師など。「猫」では、荷風は色町の昼あそび。漱石は愛猫の墓標。

〈色町や真昼しづかに猫の恋  荷風〉

〈此の下に稲妻起る宵あらん  漱石〉

(平野)

2021年9月23日木曜日

暗き世に爆ぜ

 9.20 前日押入れ他整理。燃えないゴミと地域の資源回収、ゴミステーション3往復。朝から近所徘徊老人。

半年ぶりに高槻墓参り=半年ぶりの県境またぎ。

9.21 鵯越墓園。彼岸期間中は園内巡回バスが頻繁に出るので助かる。でもね、乗り場が遠く高所。ヒイコラ喘ぎながら急階段を登る。同乗の皆様は息切れなく、感心。

 小沢信男 『暗き世に爆ぜ 俳句的日常』 みすず書房 3200円+税



 今年3月著者逝去。享年93歳。『月刊みすず』連載「賛々語々」を中心に単行本未収録エッセイ。俳句鑑賞と社会時評、江戸の面影、自身の東京の記憶、友を語る。

  死後「花吹雪」と題する「賛々語々」の原稿が発見された(未完成)。縁は浅くても信頼する人たち、著作を楽しみにしていた友たちが先に逝く。紹介するのは池田澄子の俳句。

「あっ彼は此の世に居ないんだった葉ざくら」

「花吹雪あのひと生きていたっけが」

〈いまさら気づけば、おおかたがもはや死者ではないのか。現況は芥川賞も直木賞も関心がなくて知らぬ人ばかり。つまり私は、おおかたあの世の人たちと共に生きている。後期高齢者に通例のことか。その大量の想念を想えば、この地球上には、あの世が霞のようにたなびいている。〉

 書名は小沢の句、「暗き世に爆(は)ぜかえりてぞ曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」より。明治・大正・昭和、反骨に徹したジャーナリスト・宮武外骨を偲ぶ。東京駒込の染井霊園、外骨墓所内の石柱に刻まれている。

(平野)

2021年9月19日日曜日

大岡信 架橋する詩人

 9.15 仕事は休暇取得。朝散歩がてら昨日勤務のマンション、忘れ物引き取り。コロナで会社の会合や研修がなくなり、管理人先輩と顔を合わせるのは19ヵ月ぶり。

 帰宅して図書館、戦前神戸小学校の音楽教師のこと、大正時代同校のピアノ購入のことなど。

 買い物に出て、「BIG ISSUE414415号。

 


本屋さんで注文品と文庫、新書。ああ、つんつんつん積ん読(ズンドコ)。

 夜、孫姉妹写真届く。カメラを見ている顔がそっくりで笑う。こっそりちょこっと公開。

 


 9.18 台風が瀬戸内海を進んで来た。幸い被害なし。

娘から敬老の贈り物着。姉孫の誕生日が近づいてきたので、絵本を選ぶ。

 妹孫がゲラゲラ笑う動画届く。つられて大笑い、ヂヂバカちゃんりん。

 

 大井浩一 『大岡信 架橋する詩人』 岩波新書 880円+税



 詩人・大岡信(おおおか・まこと 19312017年)生誕90周年。改めて社会的文化的功績を見直す。

水の詩人、古典研究、文学・芸術批評、シュルレアリスム、大学教師、連句、連詩、新聞コラム「折々のうた」などなど。自分と他者、著者と読者、詩と批評、古典と現在、日本と外国、さまざまな橋渡し=架橋の役目を果たしてきた。

 著者は毎日新聞学芸部編集委員。

〈分断や閉塞感に覆われたこの二〇二〇年代の世界で、「架橋」という行為はいかにも素朴である。しかし、それは素朴であっても着実に、しなやかでしたたかに、人々の魂をほどき、結び合わせる希望のメソッドともなり得るものと考える。〉

書名は大岡の著書『詩への架橋』(岩波新書、1977年)から。

(平野)

2021年9月15日水曜日

硝子戸のうちそと

 9.10 10月末頃、垂水の流泉書房の本が出るそう。同店の店頭黒板お知らせとSNS発信など。

妹孫は3ヵ月で混合ワクチン。少し熱。姉が絵本を読んであげている。妹は姉の腕を触りながら聴いている。ああ、ヂヂバカチャンリン。絵本は、松谷みよ子『いいおかお』(童心社)、『Sassyのあかちゃんえほん がおー!』(KADOKAWA)。

 


9.12 午後、落語会。立派なホールだが、入りは半分ちょい、というところ。コロナ禍だから仕方ないか。笑福亭松喬、桂かい枝、桂文之助。私は満足。

9.14 臨時でよそのマンション代行勤務。いつもより出勤時間が早い、その分早く終わる。慣れないから怖々仕事をしていると、やっぱり良くないことが起きる。詳細には言えないけれど、退勤前にドタバタ。なんとか解決して、帰宅したら忘れ物に気づく。また行かねば。

  半藤末利子 『硝子戸のうちそと』 講談社 1700円+税



半藤一利夫人。夏目漱石の孫にあたる。母は漱石の長女・筆子、父は漱石門下・松岡譲。漱石・鏡子夫妻、血縁たちの話他、身辺の出来事を綴ったエッセイ集。著名人、ご近所さんとの交流や、夫を含め、縁者・知人たちとのお別れの話。

〈私など漱石なしでは世間をまかり通れない。だからこの本の始めも、これまでの著書同様に漱石と漱石夫人にまつわるエッセイで埋められている。(中略)ただ本書では、いまや亡き夫がところどころに顔を出し、最期の日々が綴られるのである。(後略)〉

 夫の訃報にも、新聞は「夫人は漱石の孫」と書く。それはそうだが、いつまでもこの決まり文句がついてまわる。

(平野)

2021年9月9日木曜日

追悼 長谷川郁夫

 9.4 朝日新聞に内橋克人訃報。神戸市出身、元神戸新聞記者、「匠の時代」「共生の大地」の人。

 図書館、神戸小学校歴史調べ。1934年開校50周年寄付者名簿の元・栄・海(元町通、栄町通、海岸通)3丁目に海文堂書店創業者・賀集喜一郎を発見。他に凬月堂、見田時計店、奈良山洋服店の店主も。

 9.6 仕事休日。元町事務局に原稿を届ける。神戸小学校ゆかりの作家を取り上げるつもりで調べ出したら、この人が校歌作詞者で、校歌、学校史と遡ってしまう。作家のことは先になりそう。

同事務局・(岩)編集長担当『神戸 はじまりの街づくり――30年の軌跡――(非売品)をいただく。「みなと元町タウン協議会」は元町商店街と地元自治会、企業により結成、地域のまちづくりに取り組む。その30周年の記録。設立のきっかけはパチンコ店出店だった。その後の阪神淡路大震災、人口減少、産業構造変化、マンション増加、店舗の進出・撤退、コロナ禍。街は刻々変貌している。

 


 本屋さん、愛読コミックが先月と先々月に出ていた。棚を見ていたつもりだけど、キャッチ力なし。2冊一挙に読めるならよい。

 9.8 「朝日新聞」の追悼記事、日本の歴史家(色川大吉)とフランス俳優(ジャン・ポール・ベルモンド)が並ぶ。

姉孫はコロナ対策で幼稚園隔日登園、きっと退屈しているはず。妹孫は生後100日を迎えた。寝返りをしようとするが、お尻が重たいらしい。あわてんでいい。ヂヂバカチャンリン。

 『Editorship 6 特別号 追悼 長谷川郁夫』 

日本編集者学会発行 田畑書店発売 1800円+税



 長谷川郁夫(19472020年)は学生時代の1972年に小沢書店を創業。立派な装幀の文学書を出版。2000年、残念ながら倒産。長谷川は作家になり、主に出版人、文学者の評伝を手がけた。日本編集者学会を設立。昨年5月逝去。

 本書は追悼エッセイの他、単行本未収録の原稿、対談を収録。

 小沢書店刊行物、故人の著書とも、私が持っている本はわずかだが、命を削っての仕事だと思う。

(平野)

2021年9月4日土曜日

お話し供養

 8.29 「朝日歌壇」より。

〈毎日が成長の日々零歳児今朝から本を食べなくなった (知多市)高田真希〉

 同じく「朝日俳壇」より。

〈元町はいつも夢あり花氷 (神戸市)藤井啓子〉

 8.30 蒸し暑いけど、風を感じるときもある。でも、あっつうーい! マンション仕事、居住者さんたちが労わってくださる。

 妹孫は3ヵ月になった。まんまんまるまる。姉孫の3ヵ月のときよりもまるいかもしれない。それにしても美人姉妹である。ヂヂバカチャンリン。写真許可出ず。

「朝日」夕刊に〈まちの記憶 阿佐ケ谷 東京都杉並区〉。阿佐ヶ谷、荻窪に住んだ井伏鱒二、上林暁、木山捷平ら、大正から昭和の文士たちが交遊した「阿佐ケ谷会」。その会場は仏文学者・青柳瑞穂宅。孫のいづみこが思い出を語る。彼女の本『阿佐ケ谷アタリデ大ザケノンダ』を注文。



 井伏が青柳のことを書いている。彼は美術評論家でもあり、骨董愛好。骨董のことで冗談を言うと怒る。「掘り出し物」と言うのはだめで、「埋もれた文化を捜し得た」と言わなければならない。見せてくれ、もだめ。「眼福の栄にあずからせて頂きたい」と。

(井伏鱒二「青柳瑞穂と骨董」『人と人影』講談社文芸文庫)より。

 9.2 本日臨時出勤。働きすぎちゃう?

「みなと元町タウンニュース」更新。拙稿は「諏訪山界隈」最終回、富士正晴の久坂葉子追悼活動。

 https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/townnews/

 姉孫から手紙。字を便箋の線にそろえて書けるようになった。読み終わったところに、LINE電話かかる。新しい絵本を見せてくれる。ヂヂもほしい。

 9.3 集中豪雨のあと、もう秋雨か? 

 政局は揺れ動く。総裁選挙不出馬を表明した現職の功績について、携帯電話料金値下げと言う人がいた。議員や著名人でも多くの仕事をしたと評価する人がいる。そうなんや~。私は、前任者の後始末を押しつけられて結局あかんかった人、と思う。

「朝日夕刊」に太宰治「富嶽百景」のモデル女性のこと。井伏鱒二が執筆の際逗留する山梨県富士河口湖の茶屋を太宰が訪ねる。その茶屋の娘さんがその女性。太宰は井伏が帰ったあとも滞在して原稿を書き、地元の人たちと交流。作中、井伏と山に登った時、井伏が放屁したことまで書いた。井伏は事実無根、と抗議した。太宰は「確かになさった、二つなさった」と大笑いした。


 

 『永六輔のお話し供養』 文/永六輔 絵/唐仁原教久 小学館 1500円+税 

201212月初版 2016112

 亡くなった友たちへの供養。渥美清、淀川長治、石井好子、坂本九、中村八大、いずみたく、岸田今日子、立川談志。世間の人が知っている話、永だけが知る話。

「死者を覚えている人がいる限り、その人の心の中で生き続けている」

 そのご本人も2016年に亡くなった。

 


(平野)