2025年6月17日火曜日

「あて字」の日本語史

6.10 臨時出勤。雨の日の掃除は苦あり楽あり。

6.12 家人が読みたい雑誌、探すも売り切れ。付録が人気らしく、個人通販サイトで定価より高く販売しているそう。これもテンバイヤー? 目端が利くのでしょうけど、人様のアイデア・商いで稼ぐなんて、セコッ!

 午後、会社の仲間が集まる研修会。9割以上が爺さん。仕事の工夫や顧客評価などで表彰される人が、「業界一の低賃金で~」と発言してドッと湧く。

6.15 拙著原稿最終校正すみ。ようやくですが、すべてヂヂイの責任。編輯者には多大な負担をかけた。イベントをしてくださる関係者の皆さんも着々と準備進行、感謝です。

「朝日歌壇」より。

〈人生の重石のごとし広辞苑第一版が書棚にありて (魚沼市)磯部剛〉

 映画「国宝」鑑賞。原作小説は吉田修一、201618年朝日新聞連載。俳優さんたちもスタッフの皆さんも素晴らしい。エンディングで思わず拍手しそうになった。ただ、3時間だとヂヂイはトイレ危ない、終了後走る。

 

 田島優『「あて字」の日本語史』 法蔵館文庫 1300円+税



2017年風媒社初版。著者は1957年愛知県一宮市生まれ、国語学専攻。愛知県立大学教授、宮城学院女子大学教授を経て明治大学法学部教授。

あて字とは、〈漢字のもつ本来の意味にかかわらず、音や訓を借りてあてはめる表記。また、その漢字。〉(『広辞苑』)

私たちは「不便」を「ふべん」と読む。便利でない、自由がきかない、の意味で使う。明治初期には「ふびん」と読み、かわいそうの意味。現代では「不憫」「不愍」と書く。でもね、両方とも「あて字」。「憫」「愍」とも常用漢字ではないし、かわいそうの意味だから、「不」をつけると、かわいそうの否定になってしまう。「ふびん」と仮名で表記すべき。

明治時代の作品を読むと漢字にルビが振ってあり、読み方に驚くこともある。現代人には不思議だが、それらの読みは当時一般的に使用されて、読む方も慣れていたもの。「あて字」として定着していた。

本書は、〈日本語の歴史において、それぞれの時代の書記スタイルがあて字を必要とした状況や、またそれぞれの時代にどのようにしてあて字が生み出されてきたかという点に重点を置いて述べる。〉

 古代の無文字社会、中国から漢字がもたらされ、我が先祖たちはこれを自由に便利に使った。万葉仮名(上代仮名)から平仮名・片仮名を生み出し、それらを混交してさまざまな書記スタイルで文章を綴った。中世になって「あて字」という用語が確立して、和語も漢字で書き表わすようになる。近世、印刷によって漢字に振り仮名をつけることができ、さらにあて字が増える。漢語の口語化、俗語増加、異国との交流による外来語表記。現代では国の施策によって、漢字制限や、あて字の禁止もある。

私たちは明治の本を読むのに苦労する。言葉は変化、発展する。新語が生まれては消え、表現が多様化していく。漢字の音訓や外国語を自由に当てはめた子どものキラキラネームはどう読んでいいのかわからない。今年5月から戸籍に読み仮名の記載が義務付けられた。

 (平野)