2025年1月30日木曜日

雪夢往来

1.21 大統領就任式。これまで目指してきた民主主義、人権尊重の理想がだいなしにならないか。

朝、図書館。午後買い物、本屋さん。積ん読山があっちとこっちに。

1.22 休日出勤の代休。お年玉年賀はがきで切手2枚当たり、孫に送る。ヂヂバカちゃんりん。

1.23 「NR新刊重版情報」594着。連載〈本を届ける仕事〉は山口章(風媒社代表)が昨年亡くなった書店人を追悼。「ちくさ正文館と古田さんのこと」



1.26 「朝日俳壇」より。

〈本読むは旅をすること冬銀河 (相模原市)のなかあけみ〉

「朝日歌壇」より。

〈ふるさとは宇宙の中に在るからと言ひて谷川俊太郎逝く (筑紫野市)二宮正博〉

1.27 木内昇『雪夢往来』(せつむおうらい 新潮社、2000円+税)。江戸、文化・文政から天保の時代(1790年代から1840年頃)。越後塩沢村の縮商人で質店経営・鈴木儀三治(ぎそうじ、俳号・牧之(ぼくし))は江戸に行商に出て驚く。江戸の人々は越後のことをまるで知らない。風土、風俗慣、それに伝わる不思議な話をまとめ、出版を目指す。草稿が江戸で人気の戯作者の目にとまる。夢は叶うのか、と思いきや……、費用の問題で頓挫。あちこちツテを頼るが、実現寸前で仲介者の死が度重なる。ダメ元ですがった当代一の戯作者に草稿を渡すのだが、これもナシのつぶて。元は越後のことを知らしめたいという願いだったのに、長い年月のうちに自分の名を刻んだ出版が目的になっていた、と自戒する。めぐりめぐって最初の戯作者の弟が出版に手を差し伸べる。儀三治着手から40年、天保81837)年『北越雪譜』初編3巻板行。儀三治、江戸の山東京伝・京山兄弟、滝沢馬琴らの家族を含めた江戸出版の物語。



1.28 みずのわ一徳来神、朝から神戸駅で拙著ゲラ確認作業。印刷費や紙の価格など諸経費高騰は予想以上。中断して三宮で「川瀬書店」縁者の方と懇談、貴重なお話を聞かせていただく。拙著で元町「川瀬書店日進堂」と西宮市仁川「川瀬書店分店」登場する。その後、ギャラリー島田でヤマさんと出版と展示の相談して、ゲラ作業再開。皆さんお忙しいのに時間取っていただいて、感謝です。

(平野)

2025年1月22日水曜日

墨牡丹

1.15 「朝日新聞」夕刊「阪神大震災30年」の特集に作家おふたり登場。

垂水区在住の高嶋哲夫は地震、津波、台風、噴火などをテーマに作品を発表してきた。新刊『チェーン・ディザスターズ』(集英社)では200X年南海トラフ地震から関東でも地震、大型台風、富士山噴火の予兆まで起きる。次に来る大災害に向けて警鐘を促す。

そして、先日紹介した砂原浩太朗。『冬と瓦礫』(集英社)。



スタジオジブリの「熱風」1月号。谷川俊太郎追悼。



1.17 阪神・淡路大震災から30年。大きな節目。例年より報道多い。

1.19 用事あり、午前午後図書館。合間に買い物、ついでに「さんちか古本市」を覗く。北村薫『鷺と雪』(文藝春秋、2009年)。

BIG ISSUE495号、特集「世界をつなぐ文学へ」。ノルウェーの絵本、メキシコ・ユカタン半島のマヤ文学、それにタイ文学、それぞれの翻訳者登場。



家人は息子と観劇。ヂヂ留守番。

「朝日歌壇」より。

〈便利なる本の宅配知りをれどけふも書店の棚から選ぶ (東京都)上田国博〉

〈書棚より高橋和巳かたづけるグッバイ青春よろしく玄冬 (東京都)青木公正〉

1.20 秦恒平『墨牡丹』(集英社、1974年)読了。「神戸に華岳あり」と称えられる日本画家・村上華岳の芸術と人生。華岳は京都市立絵画専門学校の友、土田麦僊、小野竹喬、榊原紫峰らと新しいグループを創る。だが、あくまで創作するのは個人、と己の芸術を貫く。華岳は牡丹を描き続けたが、晩年は墨で描いた。



1.21 大統領就任式。これまで目指してきた理想が消えていく。

朝、図書館。午後買い物、本屋さん。積ん読山があっちとこっちに。

(平野)

2025年1月14日火曜日

冬と瓦礫 他

1.8 兵庫県の書店をまとめるモリ理事長(ときどき落語家)から作家講演会の案内メール。神戸出身の時代小説作家(ヂヂ愛読)の最新刊は阪神淡路大震災の体験を書いた作品で、読もうかどうしようか迷っていた。講演会案内もご縁、参加して読ませていただく。

1.9 孫電話、元気元気だが、年末年始のヂヂババサービスに疲れたかもしれない。彼女らにも彼女らなりの生活リズムがある。

1.10 みずのわ出版から最終ゲラ着。ヂヂのええ加減な原稿で彼に大きな負担をかけている。

1.11 花森書林、古雑誌引き取ってもらって、青山大介・谷川夏樹『神戸みなと物語 コンテナじいさんの見た神戸港』(シーズプランニング、700+税)購入。神戸市の小学生用副教材に採用されている絵本を一般発売。青山は鳥瞰図絵師で神戸港の歴史に詳しい。谷川は画家、コンテナをテーマに制作。



1.13 親戚大学生成人式、家族写真着。祝!

家人が元町で友人と待ち合わせのついでにBIG ISSUE494を買ってくれる。



午後、砂原浩太朗講演会(兵庫県書店商業組合主催)参加。顔なじみの関係者にご挨拶。著者は1969年生まれ、神戸元町育ち、海文堂はじめ地元本屋の常連さんだったそう。震災時は東京在住。新刊『冬と瓦礫』(集英社)は阪神淡路大震災直後、地元に駆けつけた体験を元にした作品。家族知人に大きな被害はなかった。甚大な不幸が報道されることは当然で大切なことだが、被害軽微な人々にも苦労・苦難があったはず。著者はそんな人たちにも目を配る。直接震災を体験していないという負い目もある。約1時間、神戸愛を熱く静かに語ってくれた。156年前に本書の原型にあたる作品が新人賞で落選し、そこから立ち直って……というエピソードも。



(平野)

2025年1月9日木曜日

もういいか

1.6 孫たち帰る。年末年始、ヂヂババは楽しく賑やかに過ごすごとができた。毎度別れは寂しい。でもね、ほっとするのも事実。祭りは終了。

 仕事始め。あいにく雨。

 本は、山田稔『もういいか』(編集工房ノア)。フランス文学者、小説家。鬼籍に入った学者仲間・文学仲間たちを偲ぶ随筆と短篇小説1篇。



 表題作は小沢信男(20213月死去)との思い出。山田の手許に手紙が残る。晩年はパソコンになったが、機械不調で手書きで「乱筆ごめんください」ということもあった。

〈たしかに跳んだり撥ねたりの踊るような文字で読みにくく、判読に苦しむ箇所さえあった。それでも息づかいがもろに伝わってくるようで、親しみがさらに湧いてくるのだった。〉

 最後の手紙は20207月、著書寄贈の礼と感想。「もはや文字がヨレヨレ」ゆえ印刷文字で許して、と。

〈ヨレヨレと言いながらも最後の、これだけは手書きの署名の文字は、何時ものように勢いよく撥ねていた。/小沢信男、当時すでに九十二歳。私はこのひとから三歩ではなく三年後からついて行くつもりだったのだ。しかし彼は十代のおわりに胸郭成形手術で肋骨を五本も失っている。その体でこれまでよく歩き、よく喋り、よく書いてきた。よく生きてきた。/もういいか。〉

1.7 図書館。山田稔の本で知った神戸ゆかりの画家評伝小説を借りる。秦恒平『墨牡丹』(集英社、1974年)、中央図書館にちゃんとある。

(平野)

2025年1月4日土曜日

書楼弔堂 霜夜

1.1 早朝氏神さんにお参り。祈りは世界平和と家内安全。

孫たちのパパさんは体調不良でダウン,来神できず。孫たち滞在延長。ヂヂはマイペース寝正月。

1.4 孫たちのお伴で須磨シーワールド(水族館)。神戸市立から民間運営になっている。当日券販売所は大行列、それも13時入場分。私たちは予約していて、すんなり入れたものの既に満員。

京極夏彦『書楼弔堂 霜夜』(集英社)。明治の東京、郊外にある書舗「弔堂」には古今東西の書物、雑誌が揃う。主人は元僧侶らしい。主人曰く、書舗は本の墓場であり、自分は墓守、縁ある人に本を手渡す。ところが、この書舗は住所不明、なかなかたどり着けない。近くの茶店の親爺も行ったことがないけれど(引退した元の主は何度も客を案内したらしい)、そこへ向かう横道の入口は知っている。横道は寺に続いていて、その途中には「弔堂」しかない。

〈「ただ、この弔堂、かなり大きな建物なのに、どうも見逃されがちなんだそうでしてね。大抵は行き過ぎる。でも、でもですよ。行き過ぎても終点には寺しかないんですわ。寺まで行っちまったら、それは見過ごしてるんです。なら戻ればいい。その一本道の途中に」/――必ずある。〉

 シリーズ最終巻。これまでは書物のことや自らの作品、学問、生き方に悩んだ名だたる人物たちが訪れて、店主にヒントをもらい、書物を手渡された。今回その「弔堂」が店を閉めることになる。印刷活字の元になる書体をデザインする若者・甲野を中心に話が進む。出版、印刷、製本、製紙、流通など、書物をめぐる産業が近代化していく。弔堂主人が読者、購買者、図書館を含めた出版の世界、読書の将来を語る。

〈「既に明治の世も四十一年。私が弔堂を開いた頃と現在では、書物の在り方も大きく変わっております。出版、取次会社、印刷所、製本所、そして小売りの本屋という形で版元の分業はほぼ形を整え、流通も大きく変わりました。印刷や製本の技術も改良され、部数も格段に増えた。少なくとも新刊本に関してましては、望みさえすれば何方(どなた)様でもお求め戴けるようになったので御座います。旧幕時代のことを想うに、隔世の感が御座います」〉

 活字、印刷の技術・品質も格段に向上し、さらに改良されるだろう。出版点数が増え、販売の業態も完成し、売り手、買い手も選択肢が増える。本を買えずとも持てずとも、その存在を知り、図書館を活用することもできる。

主人はじめ登場人物たちの意見は当然著者のもの。書物の一番の敵は戦争、書物は商材だが「それはあくまで、本と人とを繋ぐための仕組み」、「需要あっての供給」、権力の庇護下に入ることは得策ではない、「書物は何ものからも自由」、「悪書良書と選別することも名作駄作と格付けすることも無意味」、「押し付けるかのように売ることも、悪手」、「内容を規制し統制するなど以ての外」、「選ぶのは、あくまで手にした者」、だからこそ「書物を送り出し世に問う者の資質は、大きく問われる」、それは「志を持つこと」であり、時代とともに「変わって行くべき」。

さて、今回の準主役・甲野は何か問われるたびに自分は田舎者とへりくだる。あまりに頻繁で、とにかく逃げ腰に見える。だが、彼には故郷に残した家族への思いがあった。それも解決に向かう。



(平野)

 

2025年1月1日水曜日

新年御慶

  新年の御慶を申し上げます

二〇二五年 令和七年 乙巳 元旦

皆様のご健康をお祈りいたします

小生巳年七周目に突入です。五周目あたりまで「大器晩成」と大法螺を吹いておりました。「老子」の原文は「未完成のものほど偉大」という意味だとか。改めて未完のままにょろりのろり過ごしてまいります。

本年もよろしくお願いします。

  


      

兵庫区、和田神社の神使・白蛇

 (平野)