■ 竹内明久 切り絵・文 『犬の目、人の眼差し』
波止場通信社 1800円+税
竹内は編集者・コピーライター。故成田一徹に切り絵を学んだ。本書は元町高架下商店街(通称モトコー)の店主たち、風景を中心にした作品集。
モトコーはJR元町駅から神戸駅の高架下約1.2キロの商店街。戦後の闇市の痕跡、昭和の風景を残す場所だ。古くからの店に加え、若者が新しい感覚で参入していた。古老は、「どんな階層でも外国人でも落ち着くのがモトコーや。戦後、裸一貫で再出発した日本人の原点や」と語る。
〈だが、その原点も消えていく。飢餓感を抱きながら徘徊した犬の記憶と、人間の弱さや悲しみも包み込む優しい人の眼差しをもつモトコーの戦後に、どうやらバイバイしないといけないらしい。〉
JRの耐震補強工事とそれに伴う契約更新問題で既に多くの店が退去している。竹内もオフィスを閉めた。
個性豊かな商人やアーティスト、ここにしかない商い、路地裏や通路の佇まい、年月の積み重ねで醸成される空気、匂い。消えてしまう(しまった)ものたちを切り絵に残す。
本書発刊記念展
9月13日(金)~23日(月) Pocket美術館モトコー(プラネットEarth内)
(平野)
モトコー(私たちは「こうかした」と言っていた)は中学時代通学路のひとつだった。友だちの家(商店で住居)が何軒もあった。外国の船員さんが中古の電化製品を大量に買っていた。目を伏せて通らなければいけない店があった。子どもながら、こんなもん売れるんか、と思うようなモノが並べられていた。
「大竹昭子写真展 須賀敦子のいた場所」
7日(土)から12日 ギャラリー島田
7日16時から大竹昭子と武谷なおみのトーク(要予約・1000円)
申し込みはギャラリー島田まで電話かメールで。078-262-8058
http://gallery-shimada.com/?p=6334