2023年9月9日土曜日

岩波茂雄伝

9.1 関東大震災から100年。

「みなと元町タウンニュース」379号着。Web版はまだ。

 

9.3「朝日俳壇」より。

〈絵本では眼鏡してをりきりぎりす (三郷市)村山邦保〉

〈図書館の利用もちゃんと避暑である (小平市)本多達郎〉

〈籐寝椅子ボードレールと寝転がる (武蔵野市)相坂康〉

「朝日歌壇」より。

〈戦争を知らない人ほどしたがると願いはむなしく森村さん逝く (岡山市)伊藤次郎〉

 本に関係ないけれど、

〈人間の値打ちを言っているようで聞くのが苦しい「最低賃金」 (観音寺市)篠原俊則〉

 ヂヂのパートタイムも最低賃金。

 

9.4 今週は仕事不規則。本日休み。国立国会図書館のデジタル資料で西村貫一の雑誌「アンティーク」を見る。1919(大正8)年1月号の新年広告に元町の商店や新聞社、海運会社、料亭に混じって、「文藝評論雑誌 放浪者」を発見。発行「神戸市平野上祇園九一 林黄花」。これも兵庫県の文学史では見たことなし。

BIG ISSUE462。インタビューは羽生善治、特集は「古気候学と気候危機」。


 

9.7 ときおり元町原稿のことで会いたいという連絡がある。お会いして話しても、ヂヂの知識・情報は原稿に書いていることが全部で、それ以上のネタはない。薄っぺらい。何度もがっかりさせていると思う。失礼ながら今回はお断わりする。

 本日臨時仕事で初めてのマンション。蛇が出る。

「みなと元町タウンニュース」Web版更新。拙稿は、西村貫一25年ぶりの上京。友人知人100名集まり、すき焼き会。牧野富太郎が命がけの挨拶。

https://www.kobe-motomachi.or.jp/motomachi-magazine/townnews/

 

 安倍能成 『岩波茂雄伝』 岩波文庫 1560円+税



 岩波書店創業者・岩波茂雄(18811946年)の評伝。安倍能成(よししげ、18831966年)は哲学者・教育者、戦後幣原内閣で文部大臣、学習院院長。岩波とは一高で同級(岩波は一浪したうえ、落第)。出版事業、性格、人間関係など、長所はほめるが、欠点・短所も隠すことなく述べる。「岩波にとって一番無遠慮な友人」。

……岩波は私を信用してはいたろうが誰よりも親愛していたというのではなく、又私の方も岩波を尊敬していたが好きなところばかりではなかった。〉

 1913年、岩波は高等女学校教師を辞め、古本屋を開業。

「私が商売を始めたのは、いわば市井に隠れ家を求めてのことであって、責任の軽い、心の苦しみのない、気の済む生活をしたいという、極めて消極的な気持ちから出たのであります。日本の文化に多少でも貢献しようとか、学術の振興に寄与しようなどと云う抱負をもって始めたのではありません。私の青年時代から苦しんで来た人生問題は、畢竟死生の問題であり、この年になっても、まだ私には、人に語るほどの信念はありません。(後略)」(「懐古三十年感謝晩餐会」での弁)

 謙遜であり、正直な気持ちだろう。開店案内に付した詞がある。

〈桃李云わざるも下自ら蹊をなす。/低く暮し高く想う。/天上星辰の輝くあり、我衷に道念の蟠るあり。/此地尚美し人たること亦一の喜なり。/正しき者に患難(なやみ)多し。/正しかる事は永久に正しからざるべからず。/正義は最後の勝利者なり。〉

(平野)