2023年12月10日日曜日

出久根達郎の古本屋小説集

12.8 孫姉妹が続けてカゼひいて熱。ようやく快癒して、ひさびさ電話。孫たちはやかましくないとあきません。

「図書」12月号掲載、梯久美子「水俣、石牟礼さんへの旅」。石牟礼道子は『苦海浄土』で水俣病の悲劇を描き、被害者救済に献身した。池澤夏樹は自ら編集する『世界文学全集』(河出書房新社)に三部作を収録。世界文学レベルの作品と位置づけた。

ところが、水俣市では石牟礼道子という作家の存在は「ほぼ消されている」。

〈石牟礼さんが身を投じた水俣病闘争は、長くチッソに依存してきた水俣市にとって市の根幹をゆるがす問題で、住民の多くがチッソを擁護する立場に立った。患者とそれ以外の住民は対立関係となり、患者側に絶った石牟礼さんは、水俣で仕事をすることができなくなったのだ。〉

 

12.9 来週の飲み会出席返事のない人に督促して、会場店主に人数報告。みんなしっかり働いて、体調整えて、週末を楽しみにしてちょうだい。

いつの間にか読む本がなくなって(積ん読本はある)本屋さんに。文庫4冊購入。

 

 出久根達郎 『出久根達郎の古本屋小説集』 ちくま文庫 

1000円+税



南陀楼綾繁編・解説。

出久根は古本屋店主。1993年『佃島ふたり書房』(講談社)で直木賞受賞。

デビュー作『古本綺譚』(新泉社、1985年)は古本屋店主の「古本エッセイ」=実体験――古書のウンチク、お客のこと、商売の成功・失敗など――を書いたものと思っていた。出久根が作る古書目録の文章に注目した編集者が執筆を勧めた。小説集と口をすべらせてはいけない、無名の人間の小説は売れない、と釘をさした。編者の南陀楼を含め多くの読者が見事に引っかかった。

「書棚の隅っこ」より。

 語り手は店に長くある『貧乏の研究』という本。店の主人が少年時代の本・本屋のことをお客と雑談。行きつけの本屋のおばさんは子どもの立ち読みを許し、他のお客の苦情を受け付けなかった。少年は店に入ってくる人を対等に扱うことに感銘して、本屋になると決意した。少年は集団就職で上京して古本屋で働く。店番をしていると、毎日一定の時間にホームレスの男性が通る。ある日その人が店頭の10円均一棚から「漱石全集」の端本を買い、大事に抱えて帰って行く。

〈本を愛する者に貴賎はない。来る者をこばまぬのは、古本屋もまた然りである。/私は、この商売を選んで間違いではなかった。しかし正直を言うと、かの男性が店頭の台をのぞいた時、眉をひそめた別のいやな自分が、確かにいたのである。それきり男の姿は、見ない。〉

(平野)