2024年9月19日木曜日

喫茶店文学傑作選 苦く、甘く、熱く

9.8 「朝日歌壇」より。

〈「車輪の下」読みしは高一夏なりきヘッセが生きていたとは知らず (大和郡山市)四方護〉

 ヘルマン・ヘッセ(18771962年)。

9.13 国内の主要政党も海の向こうの国も新しい政治リーダー選び。どの選挙にも参加できない。

荷風『断腸亭日乗(1)』読了。考えてみれば、堂々と他人の日記を覗いている。荷風は職を辞し、世間から一歩引き、肉親と離れ、妻子を持たない。友は多いが、嫌な奴は拒否。権力に尻尾を振らない。偉そうな説教をしない。己の恥を隠さない。女性との関わりも赤裸々に記録する。

……淫蕩懶惰の日を送りて遂に年を越しぬ。この日記にその日その日の醜行をありのまゝに記録せしは、心中慚悔に堪えざるものから、せめて他日のいましめにせむとてなり。〉(大正十四年十二月三十一日)

9.15 「朝日俳壇」より。

〈堕落論好みし父の墓洗ふ (横浜市)大塚かずよ〉

〈一冊のファッション誌より秋めける (伊万里市)萩原豊彦〉

9.17 墓参り、買い物に出て、お医者行き、ご飯の用意、日が暮れる。

9.18 マンション仕事、ヂヂ汗だく。個々の部屋の工事やら施設点検作業複数、作業員さんたち汗ダクダク。

 

 林哲夫編 『喫茶店文学傑作選 苦く、甘く、熱く』 中公文庫 

900円+税



 喫茶店、カフェが舞台の小説・エッセイ集2冊目。編者は「〈面白さ〉が倍増」と胸を張る。海外体験談を加え、抄録を取り入れた。前回紙数多いので除外した永井荷風「おもかげ」を収録。本書のメイン作品になった。

 副題の「苦く、甘く、熱く」について。フランス革命時代の外交官タレーラン=ベリゴールの言葉とされている「珈琲、それは悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、恋のように甘い」から。

 ヂヂ個人的には、稲垣足穂「カフェの開く途端に月が昇った(抄)」がありがたい。関西学院の先輩・今東光の武勇伝や担任教師の思い出が綴られる。登場する喫茶店は三宮神社近くの「パウリスタ」。

(平野)