2025年5月3日土曜日

美しい人

 4.26 神戸華僑歴史博物館で貴重な資料を見せていただく。関係者皆さんのご配慮ありがたいこと。

4.27 「朝日歌壇」「朝日俳壇」より。

〈本を読みネットを開き旅をする知る喜びのなかで老いたし (大田市)安立聖〉

〈短編の起承転結春の昼 (所沢市)高橋裕見子〉

 アリス福岡から年一度仕事で来神する岩さんとの飲み会案内メール。アリスは虎トラ快調でご機嫌の様子。

 花壇のさくらんぼ、ここ数年は収穫前に雨で落ちたり、野鳥に食べられたりで、ほとんど口に入らなかった。今年も鳥は来ているようだが、実はたくさん残った。ご近所さんに少しずつ配る。

4.29 家人は実家墓参を兼ねて親戚の集まり。ヂヂイ留守番、食事番。

5.3 黄金週間、ヂヂイの用事は飯炊きのみ。

 佐久間文子 『美しい人 佐多稲子の昭和』 芸術新聞社 

3000円+税



 芸術新聞社Webサイト連載した作家評伝に加筆、修正。2024年は佐多稲子(19041998年)生誕120周年にあたる。佐久間は『キャラメル工場から 佐多稲子傑作短篇集』(ちくま文庫)も編集。

〈本や雑誌に掲載された佐多稲子の写真を見ると、その美しさはきわだっている。/どの年齢の彼女も美しいが、眉のあたりに煙るような憂いをたたえた若いときの美貌と、老年の、眼鏡をかけて、きりっと口を結んだ凛とした美しさには、別人と言っていいほどの隔たりがある。この変貌を遂げるまでにいったい何があったのだろう。〉

 実母の死、家計のため小学校退学、工場や料亭勤め、丸善の女子店員、結婚と破綻、自殺未遂、心中未遂、出産、離婚、党活動。堀辰雄、中野重治、窪川鶴次郎らに応援されて作家デビュー。窪川と再婚するも、彼は浮気を重ね、稲子と親しい作家とも関係する。戦時下、「プロレタリア文学」作家たちは逮捕される者もあり、活動を制限される。人気作家の稲子は戦争中何度も従軍。戦後そのことで仲間から戦争責任を追及された。党から除名された。

〈一度や二度の挫折ではない。何度も何度もつまずき転んで、そのつど立ち上がり、顔を上げて曲がりくねった道を再び歩き出した。転ぶたびに内省を深めて歩幅を確かめ、自分の傷を核にして作品にふくらませていった。〉

 稲子の作家生活は65年に及ぶ。佐久間は稲子を「自分で自分の顔をつくりあげていった人」と語る。

(平野)