2026年6月13日土曜日

きみがなきあと

6.6 栄町通〈1003〉にてトーク会。

〈街に「本のある場所」が必要な理由〉 南陀楼綾繁×井上理津子

南陀楼さん『本のある場所を訪ねて』(教育評論社)、井上さん『本屋百景 独立系書店をめぐりめぐる』(日刊現代、講談社)発刊記念。南陀楼さんは書店、出版社、図書館、ブックイベントなど本のある場所を訪ね、地域の人たちを取材。井上さんは首都圏を中心に独立系書店102店を取材。おふたりの本との関わり、書店と地域それぞれの特色などを話してくださった。会場〈1003〉店主の古書・新刊の選書や多様なZINE展開に驚いておられる。海文堂のことにも触れてくださり、参加者のなかに児童書のお客さんがいらしてご挨拶できた。

6.7 「朝日歌壇」より。

〈未読の本七冊かさねてうれしさは更級日記の少女におなじ (仙台市)坂本捷子〉

〈映画館銭湯書店なくなりてただ住むだけの町となりたり (観音寺市)篠原俊則〉

BIG ISSUE528。特集〈“紙とデジタル”を使い分ける〉。表紙とインタビューは岡本多緒、カンヌ国際映画祭女優賞受賞。



6.9 元町の八百屋さん開店までの時間調整で覗いた古本屋さん2軒で探していた文庫3冊見つける。ヂヂイの小さな幸せ。

6.11 野球観戦、燕組対猛牛組、京セラドーム大阪。セパ交流戦、燕苦戦中。本日も敗けて七連敗。

 

木内昇 『きみがなきあと』 講談社 2400円+税



 幕末、実在の歌人・尼さん「野村望東尼(ぼうとうに、もとに。野村もと)。高杉晋作が死の迫るなか書きかけていた和歌「面白きこともなき世を面白く」に、「棲みなすものは心なりけり」とつけた。

 モトは和歌の同門である筑前福岡藩士・野村新三郎の後妻に入る。仲睦まじい夫婦だったが、夫病死。モトは50半ばにして出家。静かに余生を送るつもりだった。夫の和歌をまとめるため大坂に師匠を訪ね、京にも足を伸ばす。商家の手代・徳次郎に尊王攘夷の社会情勢を教えられ、勤王の公家老女に刺激を受け、元藩士の勤王派・平野国臣と知り合う。帰郷後、藩内の勤王派を支援し、徳次郎からの最新情報を伝えるなど、彼らから慕われた。長州の高杉を匿ったこともある。政変、武力衝突、各藩も勤王・佐幕が揺れ動き粛清や内ゲバが繰り返される。藩でも平野はじめ多くの若者の血が流れた。ついにモトと家督を継いだ孫までも捕らえられる。高杉の指示によりモトは流刑地から救い出され、長州に保護される。

高杉は病床にあった。モトは彼の正妻と愛人それぞれを宥め、励ましつつ、彼とも語り合う。高杉は、モトとは「人と人」との関係、これは「おなごに贈る最上の褒め言葉」と言う。

〈――そうかもしれぬな。/モトは素直に高杉の言葉を受け取る。高杉だけは初手から、こちらをおなごだからと軽んじるでもなく、面倒見がよく温かな母のごとき役割を押し付けるでもなく、同じ目の高さで話のできる同志として接してくれていたのだ。〉

 書名はモトが夫を思う和歌、「きみがなきあとよりかれし秋草は生かへりきて花さへぞさく」から。

家族を思いつつ、封建制度のもと激動の世に自らの意思で飛び込んだ女性の物語。作品中、「平野」「平野」と出てくるので、モトさんに呼ばれているみたい。

(平野)