2025年8月14日木曜日

ハーンと八雲

 8.8 マンション住民さんの孫ちゃんたちが遊びに来て、毎回管理人ヂヂイの相手をしてくれる。おもちゃ扱い?

8.9 家人がネットのフリマサイトで拙著出品を発見。定価より高く売っている。だんだん値下げするらしい。他人の本で商売すんな、と思う。

孫たち来るので朝から掃除ほか準備。午後駅まで出迎え。元気おしゃべり食欲いっぱいのタイフーン襲来。

8.10 「朝日歌壇」「朝日俳壇」より。

〈目頭をそっと押さえて席を立つ井上ひさしの反戦の劇 (三鷹市)大谷トミ子〉

〈赤毛のアン函(はこ)よりだして曝書(ばくしょ)せり (京都市)山本京子〉

8.13 孫台風帰る。滞在中、天気悪く、デパート買い物のみ。それでもヂヂババは楽しくいそがしく過ごさせてもらった。

 

 宇野邦一 『ハーンと八雲』 角川春樹事務所ハルキ文庫 940円+税



 著者は1948年松江市生まれ、フランス文学者・哲学者、立教大学名誉教授。

 明治の日本に来日したラフカディオ・ハーンは帰化して小泉八雲となった。彼が集め、改作した怪談・奇談は今も読み続けられている。また、『日本瞥見記』などによって日本と日本人の姿を的確に描写した。

 これまでのハーン研究は一部をのぞき多くが伝記的事実・作品研究に向けられている。本書は、ハーンのアメリカジャーナリスト時代からの文学研究、仏領西インドでのクレオール研究をふまえ、日本論の揺らぎ――初期の理想化された美学・道徳、繊細なエキゾティズムから歴史的な展望を深め考察(帝国主義・軍国主義への傾斜を憂慮)――を再考する。さらに、東京帝国大学での世界文学講義に注目して、彼の文学論、思想を読み取る。ハーンは世界を論じ、巨大な宇宙と微細な次元との間で物事を捉え、国や人種を超えて思考した。

〈アメリカでもマルティニック島でも日本でも、ハーンはつねに「小さきもの」を注視してきた。つましい生活の細部、場末の音楽、クレオール料理、町の物音、墓碑銘、虫の鳴き声、玩具、女性の髪型……。そのリストは限りなく続く。ハーンのこういうマイナーな志向は、かなり徹底したものだった。ハーンが偉大な文学者であったかどうか、私にとって、それはあまり重要なことではない。この本を書きながら確かに見えてきたことは、そんなふうに小さなものにむかうハーンの知覚が、人間も生物も、あくまで連続したひとつの生命の輪(わ)のなかで捉える巨大な世界のイメージとともにあったことである。(後略)〉

 2009年同社より単行本、文庫化にあたり一部改稿、「補論」追加。

(平野)

2025年8月5日火曜日

フォルモサ南方奇譚

8.4 出版社PR誌。「波」【特集 戦後八十年と「火垂るの墓」】。野坂昭如と高畑勲の対談(「アニメージュ」19876月号)を再録し、世代の異なる作家4名が「火垂るの墓」を語る。

「図書」〈戦後八〇年〉。美輪明宏の巻頭言「ナガサキを憶(おも)う」他、公害問題、受験、テレビドラマ、雑誌、家庭料理、葬儀など市井の暮らしや風俗・文化をに焦点を当てる。



BIG ISSUE507号〈デジタル民主主義〉、508号〈ベーシックインカムの導入を考える〉



8.5 早朝、地域の資源回収と燃えるゴミ出して、墓参り。墓園は風あり、猛暑というほどでもない。下界のほうが暑い。テレビニュースでは40度越えのところがあちこちに。皆様くれぐれも熱中症にはご注意を。

 

 倉本智明 『フォルモサ南方奇譚』 春秋社 2500円+税



 著者は1983年香川県生まれ、台湾在住、高雄の文藻外語大学准教授。台湾現代文学研究、翻訳家。

 台湾は中華世界の疆域として扱われてきた。大陸の支配者が交代すればそれに翻弄される。広い大陸あちことから漢民族が渡来し、先住民である少数民族が数多存在する。特に台湾南部に多様な民族文化が育まれてきた。時に西洋列強国や大日本帝国が支配・侵略してきた。

 著者は研究の合間にバイクを駆って南台湾を巡る。日常生活の下に埋もれた民族の歴史=伝説・奇譚を掘り起こす。

〈ただし、僕が本書で語りたいのは台湾大の新たな大文字の歴史ではなく、ぼく自身がこの島で生きるために必要だと感じた「いま」の欠片たちである。それは天朝体制下における義民に逆賊、文明人を辞任する西洋人の山師に「野蛮」な原住民の頭目、日本の人類学者に英国の博物学者、異神としての牛頭天王に瘟(おん)神としての王爺、そして帝国日本の支配に抵抗した「土匪」や共産主義者など、歴史と奇譚の間にはまり込んでしまった様々な「いま」である。〉

 迷信、習俗、伝説と歴史が混交する。野蛮な殺戮に対する慰霊がある。数百年前の話もあれば、昭和の加害もある。

 出版社カマさんからいただいた本。感謝。

(平野)

2025年8月3日日曜日

『神戸元町ジャーナル』 その10

7.26 花森駐在。思想研究ムラ先生、映画サークル代表シオさん、製本カクさん、古書波止場さん、カフェさん、海文堂時代からお世話になっている皆さん来店。差し入れいただき、おしゃべりして、写真撮って、ワイワイ。

7.27 「朝日俳壇」より。

〈短夜にいくつも読めてO・ヘンリー (甲府市)村田一広〉

 花森にて。現店主、前店主の人柄と人脈でいろいろな方にお会いできる。本好き・古本好き、多種多様なアーティスト、飲食業の人、謎の人……。ヂヂイの交際範囲は狭い、せんま~い。

7.28 花森書林でのイベント、無事終了した模様。猛暑の中、来店してくださった皆様、ありがとうございます。花森店主、関係者皆様にもお礼申し上げます。

7.31 みずのわ社主から「神戸新聞」8.2書評欄に紹介記事掲載の連絡あり。関係者にメール。ジュンク堂書店二店に行ってお知らせ。センター街のお店レジにちょうど旧知のタガさんがいて挨拶。本日で定年退職と伺う。長い間お疲れ様でした。

花森書林に展示した海文堂資料引き取り。ちょうど店主に福岡アリスから電話入り、アリス資料を預かる。その時いらしたお客さん、ヂヂイの記憶に間違いなければ小学校の同級生。名前も覚えているが、声はかけなかった。60年前のこと言われても多分迷惑でしょう。

 別の小・中学校同級生が大分から拙著の感想とお菓子送ってくださる。感謝。

8.2 「神戸新聞」読書欄で『神戸元町ジャーナル』紹介いただく。評者は報道部・田中真治氏。「土地の記憶、鮮烈な光と影」の見出し。元町の華やかな記憶=「光」と破局に至る大日本帝国の歴史=「影」。

〈光が強いほど、陰影もまた深い。〉

 編輯者作成の膨大な索引にも触れてくださっている。さらに神戸書店史と震災のことも。ヂヂイの貧しい表現をまとめてくださった。ありがとうございます。



 NR出版会事務局くららさんから「NR出版会新刊重版情報」596届く。ヂヂイに自著紹介の機会を与えてくださった。全国の書店員さんに向けてPR。たくさん送ってもらったので、本屋さんに配って歩く。



 さんちかタウンの古書市を覗く。旧知の店主さんお二人に挨拶。『聞き書き 神戸と文学』(神戸「人とまち」編集室、1979年)購入。

(平野)

2025年7月29日火曜日

神戸元町ジャーナル その9

7.21 午後花森書林出勤。書店員マスさん来店。アーティストMさんも。福岡アリス提供画像と音源再生。2013年海文堂閉店前のラジオ関西放送のインタビューがあった。「時間です! 林編集長」(2013.9.25 「神戸の海文堂書店 9月末閉店」)。これは初めて聴く。福岡店長が閉店の思いを語り、お客さんの声も紹介。ちょうど「成田一徹遺作展」を開催して、成田夫人もインタビューに応えてくださっている。同番組は20203月終了。

7.24 花森出勤。「毎日新聞」神戸・阪神版に『神戸元町ジャーナル』紹介記事。花森店主掲示してくれている。ネット版有料記事、少しだけ読める

https://mainichi.jp/articles/20250724/ddl/k28/040/132000c

 


 本日来店一人目のお客さん、お買い上げありがとうございます。

 海文堂閉店当日、店長挨拶を真横から見ておられたという方は、今日たまたま出かけて来て、たまたま毎日新聞買って、たまたま開いたページが拙著記事だったそうだ(ほんま~?)。ドイツ在住の漫画家さん、里帰りでご来店。

7.26 花森駐在。思想研究ムラ先生、映画サークル代表シオさん、製本カクさん、古書波止場さん、カフェさん、海文堂時代からお世話になっている皆さん来店。差し入れいただき、おしゃべりして、写真撮って、ワイワイ。

7.27 「朝日俳壇」より。

〈短夜にいくつも読めてO・ヘンリー (甲府市)村田一広〉

 花森にて。現店主、前店主の人柄と人脈でいろいろな方にお会いできる。本好き・古本好き、多種多様なアーティスト、飲食業の人、謎の人……。ヂヂイの交際範囲はせま~い。

7.28 花森書林でのイベント、無事終了した模様。猛暑の中、来店してくださった皆様、ありがとうございます。花森店主、関係者皆様にもお礼申し上げます。

(平野)

2025年7月21日月曜日

神戸元町ジャーナル その8

7.20 ヂヂイ72歳誕生日、孫からボイスメールやらスタンプやら着。ありがと。

「朝日俳壇」より。

〈積ん読の山積み直し夏休み (高岡市)池田典恵〉

 午後、元町のこうべまちづくり会館でトーク会。

〈『神戸元町ジャーナル――通り過ぎた人々、喪われた街』(みずのわ出版)刊行記念 座談会 神戸元町を語る 1970年代から2013年へ〉 うみねこ堂書林主催

出席者 小林良宣、福岡宏泰、平野義昌(元海文堂の爺ちゃんズ)

 会場が参議院選挙のため広い部屋を使えず、皆さんには窮屈な状態でした。業界飲み仲間や友人、職場の先輩、うみねこ堂の顧客さんら30名を超える方々が参加してくださいました。約2時間、爺ちゃん3人がそれぞれの元町の思い出、海文堂とお客さんや著者との交流を語りました。最後に福岡さんから20日が私の誕生日であることを発表すると、参加者のの様から花束(自宅で栽培)をいただく光栄にあずかりました。会終了後の飲み会(赤松酒店)でも、ハッピーバースデー合唱とケーキのろうそく吹き消しのドッキリ。皆々様のお心遣いに大感謝です。

 参加者の中に元書店員・ヤマ君がいて、名乗られるまで分からず。風貌がやせ型だったのにぶっとく変化しておられる。海文堂PR誌「ほんまに11号」(2010年、くとうてん)の特集〈10年後も本屋でメシが食えるのか〉に登場してくれた時は20代半ば。再会懐かしく嬉しく、感激いたしました。



(平野)

 

2025年7月20日日曜日

奇のくに風土記

7.19 参議院選挙期日前投票してから花森書林に出勤。海文堂ファンの皆さんが続々来店される。ありがとうございます。海文堂閉店の日、店長挨拶時の写真に写っている方がいらした。飲み仲間・みのさんは5年ぶりくらい。尼崎の古本屋さんから拙著購入を依頼された方、ご苦労様です。サインして、記念写真、結構忙しい。常連しまきよさん、ご機嫌悪い。花森だるまちゃん家族にも久しぶりに会えた。

 東京版元友人が新刊を送ってくださる。台湾の歴史・文学・伝承研究書。深く感謝。

 

 木内昇 『奇のくに風土記』 実業之日本社 2000円+税



 幕末紀州藩の本草学者・畔田翠山(くろだ・すいざん、17921859)の若き日の姿を描く時代小説。

畔田十兵衛は下級藩士の生まれ。藩医・小原桃洞(おはら・とうどう)に本草学を学び、藩の薬園管理を手伝う。十兵衛は植物と語らうことはできるが、人との付き合いは苦手。桃洞の孫・良直(よしなお)は年下ながら十兵衛にちょっかいを出し、塾生や他の学者とも交わるように促す。

 早朝、十兵衛は一人採集のため山に入る。背中から物音、熊か? 熊笹の隙間から緑色の目が覗いている。お互いに「やっ」と大きな声をあげてしまう。相手が出てきた。

〈十兵衛は声を吞む。/天狗(てんぎゃん)だ。(略、修験者のような姿、手にヤツデを持つが、背丈は十兵衛より小さく、顔もあどけない)/「おめには、おらが見えるか」/天狗がやにわに訊いてきた。ひとつ唾(つば)を飲んでから十兵衛が頷(うなず)くと、「そうか。おらが、見えるだか」(後略)〉

天狗は自分が十兵衛にどう見えているのか気にする。この山が「紀(き)様」の山で、かの方を慕うさまざまな生き物が棲みついている山、と説明。十兵衛は珍しい草木を持ち帰って師匠に見せたい、と打ち明ける。天狗は楠にまとわりついている蔓を手渡し、雨が降るから早く下山せよ、と促す。天狗は大男に変じていた。

以来、十兵衛の前に草花の精が現れたり、葛の蔓から亡父が降りてきたり、不思議な出来事が起きる。

 紀州の博物学者といえば南方熊楠を思い浮かべる。両者に直接つながりはないが、フィールドワークや書誌編纂など博物学者のスタイルは共通。

(平野)

2025年7月17日木曜日

神戸元町ジャーナル その7

7.15 神戸新聞朝刊に、花森書林開催の出版記念展 『神戸元町ジャーナル――通り過ぎた人々、喪われた街』(みずのわ出版)、うみねこ堂書林主催〈座談会 神戸元町を硬る0年代から2013年へ〉紹介記事。ネット版は有料記事ゆえ、少ししか読めない。

https://www.kobe-np.co.jp/news/kobe/202507/0019227929.shtml

 ギャラリー島田〈出版記念展 『神戸元町ジャーナル』とその周辺〉は最終日。元町アーティストは2日連続坂登り。のの様は自転車乗って。画家さんたちは出展品引き取りに来廊。ご来場くださった皆々様、ありがとうございます。出展の皆様、ギャラリースタッフさん、ありがとうございます。

 

7.17 みずのわ社主から林哲夫さんブログに紹介記事ありの連絡。ヂヂイが触れて欲しい箇所をずばっとあげてくださる。感謝いたします。

https://note.com/daily_sumus/n/na2c5ef051d6b

 雨小やみになったのでギャラリー島田まで資料引き取りに行く。本屋さんを回って、ブログ紹介記事を渡す。一旦帰宅、昼飯。大雨に降られて花森書林。本日よりイベント開始。







 いまとなっては懐かしい「海文堂書店」閉店時の映像あり。「神戸新聞」7.16のイベント紹介記事も飾ってくださった。

 本を送った人たちから丁寧な礼状たくさん。ありがとう。

(平野)