4.20 「朝日歌壇」「朝日俳壇」より。
〈もう一度「鬼の研究」読みたくて図書館の本予約して待つ (船橋市)大内はる代〉
〈読み返す「鬼の研究」朧(おぼろ)の夜 (名古屋市)山田邦博〉
「鬼の研究」は3月をもって「朝日歌壇」選者を退任した歌人・馬場あき子の本。
買い物の無人レジやらスマホやらヂヂイの操作機械は拒む (神戸市)よおまる
4.21 拙著出版予定を知る人たちが応援の言葉をくださる。ありがとさん。でもね、まだまだ直しが必要、図書館調べやら関係先に問い合わせ。お世話をかける。
4.23 地元編集さんから須磨区にあった本屋さんについて質問あり。ヂヂイ分からず、元経営者Kさんに面識あるものの、連絡先も知らず。遠方にいる書店員先輩に教えてもらって、直接お話を聞くことができた。人の縁は大事。
4.25 『近代出版研究 第4号』〈特集 書物百般・紀田順一郎の世界〉(近代出版研究所発行、皓星社)を読んでいる途中。出版・書籍全般に詳しい評論家、愛書家、作家、翻訳家、近代史に映画に日本語研究……、武芸百般ならぬ「書物百般」の人物。その紀田(1935年生まれ)の卒寿を記念する特集。荒俣宏の3万5千字寄稿はじめ多彩な執筆陣、60余名のアンケート回答など大特集。他に「片山杜秀ロングインタビュー」も。個人的には、神保町のオタ「夜の蔵書家が狙う発禁雑誌」がうれしい。昭和初めの雑誌『夜の神戸』を発掘、紹介する。
■ 後藤正治 『文品(ぶんぴん) 藤沢周平への旅』 中央公論新社
2400円+税
時代小説・歴史小説の作家、藤沢周平(1927~1997年)の生涯をたどりながら、年代順に作品鑑賞をする。装幀・間村俊一。
〈……作家として藤沢が出発して以降、転機、展開、成熟、深化、練達、枯淡……へと流れ進んできた歳月を、私の好みの作品を解析しつつ辿ってみたものである。〉
藤沢の言。
〈作家にとって、人間は善と悪、高貴と下劣、美と醜をあわせもつ小箱である。崇高な人格に敬意を惜しむものではないが、下劣で好色な人格の中にも、人間のはかり知れないひろがりと深淵をみようとする。小説を書くということは、この小箱の鍵をあけて、人間存在という一個の闇、矛盾のかたまりを手探りする作業にほかならない。/それが世のため人のために何か役立つかといえば、多分何の役にも立たないだろう。小説を読んでも、腹が満たされるわけでもないし、明日の暮らしがよくなるわけでもない。つまりは無用の仕事である。ただやむにやまれぬものがあって書く。まことに文学というものは魔であり、作家とは魔に憑(つ)かれた人種というしかない。そして、それだけの存在に過ぎないのだ。〉
「人品骨柄」という言葉がある。行動や言動だけではなく、文章にも書く人の品性が現れる。作品、文章には藤沢の生活体験、家族・故郷への思いが込められている。戦争、敗戦、闘病、働きながら執筆、妻の死……、挫折しても、失意の底にあっても、健気に懸命に生きてきた。同じ立場の人たちに優しい眼差しを向ける。
〈藤沢は、時代(歴史)小説を舞台に、人の世に存(あ)り続けるものを主題とした作品を書いたが、〈品性〉に欠く者を主人公にはしなかった。私にとって人・藤沢周平とその作品は、長く、何ものかであり続けてきた。〉
(平野)