10.24 勤務マンションで貴重な鍵の落し物あり。一定期間保管して申し出でがなければ警察に届ける規定。その期限が迫るなか、ようやく落とし主現われる。掲示板とエレベーター内に「落とし物」の掲示していたのだが、気づかず、探し回られていたよう。よかった、よかった。
10.25 東京神保町のブックフェスティバル、今年も都合つかず行けない。雨で中止のよう。関係者の皆さん、本好きの方々にはお気の毒。
10.26 「朝日歌壇」より。
(カップ麺8個のレシート図書館の本が誰かの人生挟む (熊本市)桑原由吏子)
10.28 午前、「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」、神戸市立博物館。当日券買うのに行列は覚悟していた。予想より早く、15分で入場。満員だけど、自分のペースで進む。目玉の「夜のカフェテラス」は写真撮影可で、また並ぶ。
買い物しながら、中央区内で拙著を置いてくださっている書店さんに26日「読売書評」コピーを持っていく。引き続きよろしくお願いします。
10.29 「朝日新聞」の投稿川柳、「朝日川柳」。
〈世論調査わたしは置いていかれそう (神奈川県)大坪智〉
選評に「支持率68%」とあり。ヂヂイも置いていかれるのだろう。
もう一句、本屋のこと。
〈贅沢は徒歩圏内に本屋あり (京都府)高橋眞理〉
『井伏鱒二ベスト・エッセイ』 野崎歓編 ちくま文庫 940円+税
井伏鱒二(1898~1993年)は長く文筆生活を送った。エッセイから37編を初出順に収録。編者は、どこからでも読者はきままに読んでよい、と書くが。
〈……最初から順番に読みすすめるなら、波乱に満ちた時代の渦中にあって、たゆまず書き続けた作家の足どりを辿ることができる。井伏鱒二はだてに長生きしたのではなかった。苦難を飄然と乗り越えて、しぶとくも愉しげに日々を送るすべを、彼は文章を綴る仕事をとおしてつかみとった。そしてまた、そうやって生きることの秘訣を文章のうちに溶かし込んだ。井伏エッセイの得も言われぬ滋味はそこに由来する。〉
故郷と家族のこと、学校、友人、釣り、旅、従軍など、悲喜こもごもをユーモラスに、短編小説のごとく仕上げる。
「森鷗外氏に詫びる件」は新聞に発表(1931.7.15、16「東京朝日新聞」)。井伏中学生時代のこと、鷗外が新聞に連載していた史伝「伊沢蘭軒」について、友人と郷土史研究家を装って、蘭軒に関する伝聞情報を手紙に認めた。文学志望の井伏はペンネームを使った。鷗外から返事があり、その情報の誤りを正してあった。友人が鷗外の手紙をほしがり、井伏は再度本名で手紙を出し、先の手紙の主は既に死亡とウソを書いた。また鷗外から返信、郷土史家の死を悼むものだった。中学生のイタズラに鷗外は真摯に対応した。井伏は軽率を恥じ、「鷗外氏の真率なる研究態度」を称える。
(平野)