■ 小川洋子 クラフト・エヴィング商會
『注文の多い注文書』 ちくま文庫 860円+税
単行本は2014年筑摩書房より。
この世にないものを求める注文者たち(小川洋子担当)と、それを探し出す「ないもの、あります」がモットーの受注者(クラフト・エヴィング商會担当)が紡ぐファンタジー。
〈意を決して扉をあけ、「ごめんくだし」と声をかけると、あらわれいでし女性の店主。「いらっしゃいませ」と発せられた声は夢まぼろしではなく、「何かお探しですか」とさらにあらわれた「番頭にして書記」を名乗る男は、「どんなものでも、お取り寄せしますよ」と、こちらもまぼろしではありません。(後略)〉
注文者の荒唐無稽な物語に受注者は独創的想像力と作品で応え、注文者は受領してさらに新たな物語を展開する。注文はそれぞれが昔読んだ本に出てきた物・者、または本そのもの。「人体欠視症治療薬」(川端康成『たんぽぽ』)、「耳の石」(J・D・サリンジャー『バナナフィッシュにうってつけの日』)、「貧乏な叔母さん」(村上春樹『貧乏な叔母さんの話』)、「肺に咲く睡蓮」(ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』)、「冥土の落丁」(内田百閒『冥土』)。
(平野)物語の世界に入り込まないと楽しめない。私は不満なし。でもね、私の方に問題あり。本書の元になった作品をどれも読んでいない。恥ずかしい、ごめん。
娘と孫が帰省、8日間過ごす。彼女たちが帰ってくる前に、古本屋さんに本を売りに行った。「孫の好物・白身魚を買ってやりたい」と泣き落し、イロをつけていただいた。ヂヂババはたっぷり遊んでもらった。ババは横浜まで送って行った。それでね、孫と入浴中の写真を見て自分の身体に驚いた。私はこんなに痩せていたのか?! と。子どもたちが小学生の頃、「父さん、髪の毛ない」と言われ、「昔から毛は少ないのじゃ」と言い返したけど、手鏡を使って洗面鏡に頭頂部を映してみたら想像以上に薄くなっていたことを思い出した。体重は海文堂閉店後のイベントで女装してドレスを着るためにダイエットしたが、あのまま維持しているようだ。53~54kg、いまのところ重病の自覚、医師からの宣告はない。
6.21勁版会例会は古書店うみねこ堂書林店主にしてミステリー研究家・野村恒彦さんの講演「ミステリー小説への誘い」。幼少時からの読書体験、ミステリー小説の歴史・現状・今後、それにおすすめの作品も語ってくださった。横溝正史の話は特に楽しそう、嬉しそう。これは恋だと思った。
中央図書館の蔵書点検休館が終了。私は図書館の恩恵を受けているわりには、あまりに近すぎ、そのありがたさがわかっていない。いつでも行けると思って、調べ物に手抜かりがある。
6.23《朝日歌壇》より。
〈久々に書庫より呼び出された本が我が手に深い息をしている (広島市)堀真希〉