2.21 ジュンク堂書店三宮店5階の海文堂ジイサンズ選書コーナー。
2.23 寝床から出る。暖かい。上着着ず朝刊取りに出る。季節が進んだと感じる。例年我が家では冬と春の境目を「彼岸まで」とか「天神さん終わらんと」(家人の出身地では2月末天神まつり)と言い合っているが。
酒井隆史 『通天閣 決定版 下巻――新・日本資本主義発達史』 ちくま文庫 1500円+税
第四章 無政府的新世界
補論1 外骨の白眼 補論2 蜂の巣、蜘蛛の巣、六道の辻
第五章 飛田残月
文庫版補論
通天閣それ自体の歴史ではなく、その足元の街と人々の活動、歴史の細部に踏み込む。パリのエッフェル塔をモデルにした「通天閣」、建設当初は東洋一の高さを誇ったが、初代75メートル、二代目103メートル。エッフェル塔は330メートル。
〈……しかし、ポイントは高低だけではない。大阪は膨張に膨張を重ねたスプロール都市である。それゆえ、拡張していく都市の特権的な視覚的象徴として超越的位置を占めようとしても、いずれは野放図なスプロールのなかで失墜する運命にあった。この塔は、そもそもエッフェル塔のような超越性をもちえぬ不能性をはらみ、また、それゆえに愛されてもきたのである。(中略)上町台地西の断崖下に位置するという新世界の地理的条件は、日常的にこの塔を水平にみる位置に人々をおいたのだった。『王将』にはじまる数々の演劇や映画における表象をみてもあきらかなように、最も好まれてきた通天閣のイメージの一つは、夕陽丘(上町台地)から眺められたそれなのだ。〉
下巻では、大阪における貧民救済活動や労働運動の歴史、ジャーナリスト・宮武外骨の反骨精神、行政のディープサウス環境浄化作戦と庶民のゲリラ活動、飛田遊郭と私娼たちなど。
〈……本書に登場するのは、いくつかの例外をのぞいて、ふつうの大阪史をかざる有名人たちではない。怪しげな投機家、人道主義者の極道もの、悪評だらけの企業家、単独決起する車夫、わがもの顔でのし歩く博徒、警察に追われるアナキスト、野宿する私娼たち、ハッタリめいた運動家、あるいは嫌われ者のジャーナリスト、など。かれらはこの町の秘密の主たちである。なぜここにこれがあるのか、なぜ、こうなっているのか、異例だらけの町の謎の鍵を持つ人々である。(後略)〉
上下巻で千ページを超える大著。文献・資料、年表、註、補論も充実している。けれど、これだけの本だからこそ人名・事項索引がほしい。
(平野) 私の記憶にある天王寺公園は朝からカラオケの音楽が鳴り響く陽気な場所。異世界だった。そこを通って美術館や動物園に行く。新世界は知っているけれど、飛田や釜ヶ崎には行ったことがないまま、年を取った。本書にあるような街はもうないのだろう。「きれいはきたない、きたないはきれい」、水清ければなんとやら。