2016年11月27日日曜日

花森安治装釘集成

 『花森安治装釘集成』 
編者 唐澤平吉 南陀楼綾繁 林哲夫  みずのわ出版 
 8000円+税


 花森(19111978年)は暮しの手帖社初代編集長、同社の出版物以外にも多くの装釘を手がけた。
 唐澤は1948年愛知県生まれ。72年暮しの手帖社入社、花森のもとで編集。8年在職後、病気のため退職。信州伊那谷在住。2010年、花森生誕100年を前にブログ「花森安治の装釘世界」を開設した。著書に『花森安治の編集室』(1997年晶文社刊、2016年改題して『花森安治編集室「暮しの手帖」ですごした日々』文春文庫)。花森装釘本蒐集はこの十数年ほど。花森の家族、南陀楼ら古書蒐集者、暮しの手帖社同僚の協力があった。
 花森は神戸市葺合区熊内町生まれ、雲中小学校から神戸三中。本書出版元が神戸に縁ある〈みずのわ出版〉でうれしい。本書は6年がかりの作業。B5判並製、282ページ、カラー図版1000点。編者の皆さんはじめ関係者に敬意を表したい。


目次
花森安治装釘集成おぼえがき  唐澤平吉
人の縁から生まれた装釘の仕事  南陀楼綾繁
自著・自装本
単行本
雑誌
暮しの手帖研究室写真  河津一哉
掲載書目
蒐集のきっかけは無知から  唐澤平吉
花森のことば
装釘 林哲夫

「装釘と著作権」〈花森のことば〉より
《装釘の仕事をはじめてまだいくらにもならないが、思っていた以上に、この装釘という仕事が、ひどい取扱いをうけているのに驚いている。(略、出版者や編集者も装釘の仕事をわかっていない、書体や構図に註文をつけ描き直しさせ期限を急ぐがせる)
 ひらき直っていえば、一冊の本というものは、著者と装釘者と印刷者の共同作品である。それなのに、装釘だけが、何か出版者の下請け仕事みたいに考えられがちなのは、合点がゆかない。(略)》
 装釘にも著作権を認めよと主張した。
(平野)
 林哲夫さんの完成記念トーク開催。1210日(土)ギャラリー島田。この日から林さんの個展もはじまる。
http://sumus2013.exblog.jp/

 みずのわ社主は本年末をもって出版社を廃業すると決めていたが、撤回した。同社の〈刊行案内〉(2016.11)にその旨告知している
……過日、出版界の良心とされてきた某版元と業務上の交渉をした折、あまりの堕落ぶりと志の低さに怒りを通り越して呆れ果て、こんな奴らに任せてはおけぬと思い直しました。(略)》
 
「朝日新聞」1127日、鷲田清一〈折々のことば 590〉は北田博充『これからの本屋』(書肆汽水域)から。