■ 山前譲編 『落語推理迷宮亭』 光文社文庫 880円+税
演目
変調二人羽織 連城三紀彦貧乏花見殺人事件 我孫子武丸
崇徳院 伽古屋圭市
幻燈 快楽亭ブラック
落語家変相図 大下宇陀児
落研の殺人 那伽井聖(秋梨惟喬)
落語 味噌漉し 結城昌治
擬宝珠 都筑道夫
落語好きの作家が落語家を主人公にした作品、古典名作落語「その後」噺、大学の落研殺人事件、それに明治の外国人落語家・快楽亭ブラックの創作落語。
本書の解説で、落語とミステリーの深い関係を知った。
《じつは、落語とミステリーはもともと深い縁があるのだ。時はグッと遡って明治の世、江戸の末期から活躍して近代落語の祖と言われる三遊亭円朝が、「松乃操美人廼生埋(まつのみさおびじんのいきうめ)」や「黄薔薇(こうしょうび)」といった翻訳ミステリーを高座にかけたのである。》
ブラックのミステリー落語は海外作品の翻訳ではなくオリジナルで、出版もされた。落語から少し遅れて、黒岩涙香が海外の探偵小説を紹介する。昭和初期になって、浜尾四郎や大下宇陀児が落語とミステリーに注目する。戦後は都筑道夫(兄は落語家、若くして亡くなった)、結城昌治、山田正紀、連城三紀彦、泡坂妻夫、北村薫……、まだまだいる。
落語には怪談あり、お裁きものあり、謎解きもある。落語とミステリーは相性がいいらしい。
(平野)