■ 『山之口貘 詩と語り』
琉球文化研究所編 (株)Ryukyu企画(琉球館)2013年刊
山之口の詩39篇とインタビュー2篇収録。プラス「解説にかえて 琉球人として日本語を生きた詩人 後田多敦(いしただ あつし)」。
1957年のインタビューで結婚のエピソードを語る。見合いの席、貘には金子光晴夫妻同行、相手側は世話人と親戚兄弟も来て、両方で10名以上集まった。そこで結婚が決まった。金子が家賃や衣類、座布団などを工面してくれた。貘の荷物はトランクひとつ、原稿しか入っていない。貘は世話人に無一文で布団もないことを伝えていたが、奥さんはびっくり。自分のお金で所帯道具を揃えた。
畳
なんにもなかった畳のうえに
いろんな物があらわれたまるでこの世のいろんな姿の文字どもが
声をかぎりに詩を呼び廻って
白紙のうえにあらわれて来たように
血の出るような声を張りあげては
結婚生活を呼び呼びして
おっとになった僕があらわれた
女房になった女があらわれた
桐の箪笥があらわれた
薬罐と
火鉢と
鏡台があらわれた
お鍋や
食器が
あらわれた (1940年)
(平野)東灘区岡本《まめ書房》で購入。沖縄の新刊・古書専門書店、工芸品、食品もあり。
https://mameshobo.weebly.com/