2019年1月6日日曜日

書店ガール7


 碧野圭 『書店ガール7 旅立ち』 PHP文芸文庫 700円+税

 新刊書店を舞台に書店ガールたちの活躍を描くお仕事小説、ついに完結。出版・書店業界の問題は現場の彼女たちを直撃する。業績不振、閉店、吸収合併、異動……

 学生時代書店でアルバイトし司書教諭になった愛菜(まな)。チェーン書店を辞め故郷でブックカフェ開店を決めた彩加。大手書店店長兼東日本エリア・マネージャーとして傘下書店閉店を担当する理子。本部勤務から現場店長に復帰する亜紀。本シリーズでお馴染みの書店員たちが登場、新しい道を進む。

 著者・碧野圭さんはシリーズ執筆に当たって、書店で実習研修をした。その時の書店スタッフさんが本書の解説を担当。

碧野さんは書店訪問記録をブログにしている。「めざせ! 書店訪問100店舗」。しばらく休止していたが、本書刊行に合わせ再開。こちらを。


 以下、ごくごく私的で思い込みの強い感想。

「理子」の章で、仙台の老舗書店「櫂文堂書店」(かいぶんどうしょてん)が閉店の危機に。シリーズ第3巻で経営悪化から大手新興堂書店の傘下に入ったが、店名はそのまま残されていた。取次を含む業界再編で新興堂も新会社になり、仙台を含む全国五都市で千坪規模の書店一斉開店計画。店を、店名を残したい現場書店員。理子はスタッフの雇用を守り新店舗に移転させたい。本部と現場の狭間で苦悩する。

 碧野さんは書店への熱い思いを書いてくれている。ひとつだけ紹介。理子が沢村店長になぜ名前にこだわるのかと問う。沢村が、店の名前は働く者の誇り、と答える。

「どこで働くにしても、人は何かしらその意味を求めたがる。書店業界が小売業で最低賃金と揶揄されても……それでも本屋で働きたいというのは、お金だけではない何かを人は求めるからなのでしょう。そして、本屋はいくつもあるというのに、売るものはほかと変わらないのに、あえて櫂文堂で働きたい、それだけここの店は仙台の人間に取って意味のある本屋なんです」

(平野)
 
 

3巻は海文堂閉店の後だった。碧野さんが作品中で海文堂を惜しんでくださった、と私は勝手に解釈した。長く書き続けてくださったことも合わせて、改めてお礼を申し上げたい。

余談、名前だけだが「山形店の平野」が出てくる。意味はないでしょう。