2019年5月23日木曜日

まど・みちおという詩人の正体

 
 本日のPR誌は『理(ことわり)No.50』(関西学院大学出版会)。特集は《神戸の出版社「苦楽堂」の本を読む》、人文演習ゼミ生が書評を書いている(拙著まで、すみません、ありがとう)。大手書店で無料配布。同出版会Webサイトでも読めます。
http://www.kgup.jp/news/nc1575.html

 大橋政人 『まど・みちおという詩人の正体』 未來社 
1800円+税
 

 大橋は1943年群馬県生まれ、詩人。詩集『まどさんへの質問』(思潮社、2016年)で第12回三好達治賞受賞。
 本書は、『ガーネット』(購読会員制詩誌)、『未來』(未來社)に連載した詩論集。まど・みちおを中心に、「アンイマジナブル」(「人間の知性には想像だにできない」)に挑戦し続けてきた詩人たち、山村暮鳥、宗左近、阪田寛夫らを取り上げる。
 大橋はまど・みちお(19092014年)の晩年に交流。まどは数多くの童謡詩で知られる。「ぞうさん」や「やぎさん ゆうびん」は多くの人に親しまれている。しかし大橋は、少年少女詩ばかりが有名になりすぎて「大人の詩」が評価されていないことに疑問を持つ。改めて、まどの詩の本質を考える。
 まず思いついたのは「シュールレアリスム詩人」。だが、まどの詩は「簡潔そのもの」、「人間存在の現実それ自身」を見ている。
 次いで「宗教詩人」。まどは、神や聖人を歌うのではなく、「身近な動物や植物の中にも神サマを見ている」。

……私の頭に神秘主義詩人という言葉が閃いた。これで全て、つじつまが合うと感じた。〉

大橋は、ワーズワースやウイリアム・ブレイクら「キリスト教の用語を使わないで宇宙や自然についての深い思想を語る人」を神秘主義者と考える。また、欧米の知識人に大きな影響を与えた鈴木大拙のエピソード(サルトルが足元の底知れぬ深淵の恐怖を語っているが、なぜ飛び込まないのか、飛び込めば新しい世界が拓けると叫んだ)を紹介。キリスト教の神と人間(無限と有限)の仕切りを外して「渾然一体となった状態から言挙げする人々のことを神秘主義者」、と言う。
 大橋はこれまでの人生で大きな激変を2度経験。最初は高2、自我の目覚め。「無限」というものに気づき、「世界は狂っている」感じた。2度目は50歳を過ぎて見えた花の生長の瞬間。高2のときははるか彼方のだった「無限」が目の前に下りてきた。

……一回目の激変は狂おしく苦しいものだったが、二回目の激変は逆に心を落ち着かせてくれるような種類のものだったので助かった。それから全ての生きもの、全ての自然が花と同じ不思議さを持っていることに気づいた。私がまど・みちおさんの「リンゴ」という詩にであったのはそんなときだった。
 「リンゴ」
〈リンゴを ひとつ/ここに おくと//リンゴの/この 大きさは/この リンゴだけで/いっぱいだ//リンゴが ひとつ/ここに ある/ほかには/なんにもない//ああ ここで/あることと/ないことが/まぶしいように/ぴったりだ〉

(平野)ニューヨーク帰り和さんと飲み会して1週間経つ。忙しいでありましょうに、還暦記念図書カードとを飲み会写真を送ってくださる。図書カードは和さん人脈著名人写真が並ぶオリジナル。飲み会写真は皆何の偶然かグーチョキパーしていて、私だけパーであった。記憶にない、やっぱりパーチクリン。