2023年7月2日日曜日

中上健次短篇集

6.29 5月から6月、ヂヂは身体精神とも不調。愛書家のブログもご無沙汰。久しぶりに林哲夫ブログを開くと、児童詩「きりん」の詩人の本復刊の記事。版元に注文メール。心身、良い方向に向かえ。

 ネットのニュースで、名古屋ちくさ正文館7月末閉店を知る。ヂヂまた落ち込む。

 本屋さん、『ユリイカ臨時増刊号 総特集 大江健三郎』(青土社)、全660ページ超。ゆっくり読もう。内容はこちらを。

http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3823


 

7.1 買い物帰り、元町「こうべまりづくり会館」で青山大介鳥瞰図展。〈「鳥瞰図」に見る神戸都心の景観変遷/青山大介作品展2023〉。新作の函館、姫路城、兵庫津も。会場で鈴さん、セ~ラ編集長お手伝い。

 

 『中上健次短篇集』 道籏泰三編 岩波文庫 910円+税



 中上健次(19461992年)。早く亡くなってしまったなあ、と思う。1976年、『岬』で戦後生まれ初の芥川賞受賞。

 生まれ故郷の「路地」「熊野」、地縁、複雑な血縁、被差別部落、貧困、暴力……、自らの出自を隠さず前面に押し出す。フーテン、クスリ、ジャズ、セックス……、死者に、自分に、安住の地はあるのか。

「眠りの日々」

 祭りの前日、「ぼく」=あきらは東京から故郷に帰ってきた。地元の友が、東京で面白いことがあったか、と問う。

〈「東京か」とぼくはため息をつく口調で言った。「あすこにおるのはみんな死んだ人間ばっかしやな」〉

 都会のフーテン生活、何もせず過ごし、疲れ、眠り、空腹で目覚める。

……ぼくは性衝動のように体の中にわきあがる飢え、たべるだけではどうしようもない飢えを感じて、思いついたように働いた。でもそれは労働ではなかった。めちゃくちゃに薬を飲んでも、それは決して破壊ではなかった。ぼくはほんとうに自分が死んでしまっているのか、それとも生きているのかわからなかった。〉

 兄の死を思う。母は小2の「ぼく」を連れて「路地」を出た。土建屋の男と同棲する。姉たちは働き出て、一人家に残った兄はアル中になり、首をくくった。自分と母が兄を殺したのだ、と思う。

 地元の友も閉塞感を抱えていた。「厄祓いでもやらかそか」と祭り(勇壮な火祭り)に参加する。

(平野)