2023年10月1日日曜日

日本語の発音はどう変わってきたか

9.28 カメムシ異常発生らしい。我が家まわりでは見えないけれど、職場マンションはいっぱい。

9.30 海文堂書店閉店して10年。イベントなし。みんな年取って動きなし。

 図書館の新聞で1951(昭和26)年のある芸術家の事故死記事を探す。神戸ゆかりの作家・詩人・編集者が次々出てくる。詩人の竹中郁が月に何度も登場する。

 

 釘貫享 『日本語の発音はどう変わってきたか 「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、音声史の旅』 中公新書 840円+税



 名古屋大学名誉教授、日本語学。奈良時代から江戸時代までの日本語の発音変化の歴史をたどる。

……本書の目的は単に古い発音を復元することではない。(中略)昔の日本語の音声がどのような要因で、どのような経過を経て現代語の音声に近づいたのかを明らかにする。(後略)〉

 奈良時代には母音が8あった。は行は「ぱぴぷぺぽ」だったが、平安時代に「ふは、ふひ、ふ、ふへ、ふほ」という両唇摩擦音になり、18世紀前半ころまでそう発音された。本書帯にあるように、羽柴秀吉は「ふぁしばふぃでよし」だった……

なぜ昔の発音がわかるのか。万葉仮名を読む平安時代人は苦労しただろうし、平安のかな文字を読む鎌倉時代人も苦心した。古今東西の研究の成果だ。万葉仮名の分析、中国音韻学、鎌倉時代ルネサンス、宣教師の記録、江戸時代の近世ルネサンス、時代時代の知識人、後代の研究者らが「言葉の海」に挑んだ。

〈音声は、伝達の機微に抵触することがなければ、些細なきっかけによって地滑り的に変化することがある。古代語の母音消滅、子音変化、音便の発生、ハ行転呼音などは、いずれも語の長大化を景気にして伝達の空白域に入り込んだ。私たちの発音は、伝達総量が同じであれば、常に労力を節約する方向にむかう。〉

「てふてふ」は「ちょうちょう」と読むと知っているけれど、その昔はそのまま「てふてふ」と発音しただろう。てふてう、[eu]の母音の連続が「オー」に変化する。「逢坂の関」は「おーさかのせき」と発音するが、かなでは「あふさか」。あふあう[au]で「オー」に変化する。[eu][ou]は区別されていたが、それもなくなった。

(平野)