2023年10月3日火曜日

左川ちか詩集

10.2 ようやく朝晩過ごしやすくなったけれど、仕事中日射しは強い。

 大狸教授から講演会の案内をいただく。関西学院大学博物館「寿岳文章展」(10.1012.9)の記念講演。マンション労働日、残念。

10.3 図書館で新聞記事探し。目当ては見つからないけど、作家や詩人の記事あり。

BIG ISSUE464、特集は「わたしたち、弱いロボット」。

 


よそ様のイベント

 寿岳文章展――領域なき探究:英文学、民芸、和紙研究――

関西学院大学博物館 1010日(火)~129日(土)

https://www.kwansei.ac.jp/museum/information/detail/114

 

開催記念講演会 1020日(金) 13301500 

同大学図書館ホール 

「寿岳文章――知識人の肖像――

講師・中島俊郎 甲南大学名誉教授、NPO法人向日庵(寿岳文章はじめ家族の功績未来に伝える活動)理事長。

 

■ 『左川ちか詩集』 川崎賢子編 岩波文庫 720円+税



 本書の「小伝」は、誕生から死までわずか10行。1911(明治44)年北海道余市町生まれ、36(昭和11)年25歳を目前にガンのため死去。萩原朔太郎、西脇順三郎、伊藤整らが高く評価したそうだが、生前の著書は、ジェームス・ジョイス詩集を翻訳した『室楽』(椎の木社、1932年)のみ。

 左川の作品は「記憶の海」「波」「海泡石」「海の花嫁」「海の天使」「海の捨子」の題名の他、「海」がよく詠まれる。

「海の天使」

揺籃はごんごん鳴つてゐる/しぶきがまひあがり/羽毛を掻きしつたやうだ/眠れるものの帰りを待つ/音楽が明るい時刻を知らせる/私は大声をだし訴へようとし/波はあとから消してしまふ//私は海へ捨てられた

改作・改題して「海の捨子」に。

編者・川崎は、伊藤整との師弟関係逆転に注目する。伊藤に「海の捨児」という詩がある。左川は伊藤の詩を「踏み越えようとしている」。左川は、病弱、夭折、失恋、詩の天才と、神話になる。

……だが、左川ちかの詩は、それらの実生活の逸話とはほとんど逆接に結びついている。病弱な若い娘であるにもかかわらず表現に衰弱の跡はなく、振れ幅の大きい、躍動感あふれる詩を書いたこと。若い娘に時代が課したジェンダー(性別役割)を越え、それを再編するような「私」と世界の関係を描いたこと。夭折したにもかかわらず成熟し完成度の高い詩を書いたこと。失恋の痛手にもかかわらず、未練の相聞ではなく、相手の男性を凌駕する力作を書いたこと。そんな風に彼女の詩表現そのものは生の苦しみと逆立する。(後略)〉

 カバーの絵は、三岸節子の「月夜の縞馬」。三岸は昭森社版『左川ちか詩集』(1936年)に絵を添えた。

(平野)昨年春『左川ちか全集』(島田龍編、書肆侃侃房)出版されて、名前だけ知った。