2024年1月16日火曜日

隆明だもの

1.14 「朝日俳壇」より。

〈風花やアンデルセンの世界より (松阪市)石井治〉

1.16 周防大島から〈みずのわ〉一徳社主来神。芦屋~京都~富山行脚の途中。いろいろ打ち合わせして元町居酒屋、一徳は十数年ぶり、ヂヂも六~七年ぶり。

 

 長尾圭・イシサカゴロウ 二人展 「淡白なちから」

1月16日(火)~2月10日(土)

Calo Bookshop &Cafe 

カロ ブックショップ アンド カフェ

長尾圭・イシサカゴロウ二人展「淡白なちから」 – Calo Bookshop and Cafe | Calo Gallery

 



 ハルノ宵子 『隆明(りゅうめい)だもの』 晶文社 

1700円+税



 詩人・文芸評論家吉本隆明の長女による回想記。戦後を代表する思想家。全共闘世代にとっては「教祖」的存在。昔から偉い人の名を音読みするようで、信奉者は「よしもと・りゅうめい」と呼ぶ。

 長女は漫画家、次女は作家、夫人も俳句を詠む人らしい。偉大な父のもとで知的な家庭環境、子どもはのびのび育ったんだろう、と一般庶民は想像する。

 でもね、当事者にとってはかなり異常な家庭だったよう。モノカキはビンボー、家庭内離婚、母は壊れたなど、なんとも言えない状態を告白。

〈ヘンな話、うちの家族は全員がちょっとしたサイキックだ。/母と妹は特に、シンクロニシティーや予知夢など、分かりやすい能力に長けていた。(中略、姉妹は食べ物テレパシー)/父の場合は、ちょっと特殊だった。簡単に言ってしまえば、中間をすっ飛ばして「結論」が視える人だったのだ。(後略)〉

 昔なら高僧とか予言者とか、特別な脳の働きを持つ存在らしい。凡人は吉本の難解な思想をわからなくてあたりまえ。

〈父だってボケていた――と言うと、あれだけの頭脳と知識を持ち、最後まで常に思考を重ねていた吉本さんが、ボケる訳ないだろう! と父の全集の主たる読者である、団塊以上のオジ様たちは主張することだろう。(後略)〉

 無意識に暴れる、眼が悪くなる、歩けず這う……、姉妹は老いの残酷さを思い知る。偉大な父の晩年を包み隠さず語る。

娘たちは父から離れて表現者となった。

〈表現者として生きて行く以上、この世界においては、誰に頼ることもできない。1人荒野を歩いて行く、それは途方もなく孤独な旅路なのだ。〉

(平野)