2024年1月23日火曜日

文庫旅館で待つ本は

1.20 図書館で新聞マイクロフィルム閲覧。よくあることで、目的外の記事が見つかる。じっくり探せばいろいろ出てくるのだけれど、ついつい駆け足。

 内科受診。午後買い物、雨模様ゆえ「BIG ISSUE」販売員さん見かけず。本屋さんで文庫と雑誌。

1.21 「朝日歌壇」より。

〈図書館で働く人も七割が非正規と聞く本が泣いている (菊池市)神谷紀美子〉

〈図書館船の就航を待つ瀬戸内に浮かぶ小さな島々の子ら (観音寺市)篠原俊則〉

 友人・アリス(自称)からメール、新聞記事届く。112日関西学院大学で仙台出版社「荒蝦夷」代表・土方正志が講演、「震災と文学――仙台短編文学賞の7年から」。アリスは聴講。ヂヂは仕事で参加できず、残念。

 


1.22 アリスから郵便で「荒蝦夷」資料着。ありがとさん。

 孫電話、二人とも眠いはずなのに大はしゃぎ。お店屋さんごっこからお医者さんごっこ。

 名取佐和子 『文庫旅館で待つ本は』 筑摩書房 1600円+税



 ノンフィクションだと思って本屋さんで探したら、小説だった。

 海辺の町の老舗旅館・凧屋旅館には古い本を集めた文庫=図書室がある。若女将・円(まどか)が「お客様と同じにおい」の本を薦めてくれる。本は曽祖父が蔵書家から譲られたもの。ところが、円は鼻が利きすぎてアレルギーなのか何なのか、本を開くと「鼻がツーンとして目がチカチカして涙が出て」読むことができない。

〈客の到着時刻は、だいたいわかる。潮風にのって、各々のにおいが運ばれてくるからだ。円は今日も鼻を上に向けて、クンクンと嗅ぐ。子どもの頃、他人様やお客様の前でこれをやると、三千子(引用者註、祖母で女将)に叱られた。(中略)円の体が反応するほどにおう客は、たいがい表に出せない思いを抱えていた。そして凧屋旅館の文庫には、彼らと同じにおいを放つ書物があった。本のにおいに敏感すぎて、ただの一冊も読み通せたことのない円だが、客には同じにおいのする書物をすすめてみることにしている。大抵の客はその書物を読むことで、抱えていた思いの出口を見つけ、喜んでくれるからだ。〉

 お客に寄り添う癒しの旅館、というファンタジーと思って読み進めると、最後に話は大転換する。蔵書家と曽祖父には苦しく悲しい関係があった。本と二つの家族をめぐる因縁。今を生きる者たちはどう決着をつけるのか。鍵はやっぱり、本。

(平野)