2024年11月7日木曜日

駄目も目である

10.29 孫電話。姉が新しい絵本を読んでくれる。読み聞かせのお姉さんさながら。ヂヂバカちゃんりん。週末会いに行く。

10.31 10月終了。ここ数日は涼しくなったが、日本は10月も夏。

 

 『駄目も目である 木山捷平小説集』 岡崎武志編 

ちくま文庫 1000円+税



 木山捷平(190468年)岡山県出身、詩人、作家。姫路師範学校卒、東洋大学中退。兵庫県下で教職の後、上京して文学活動。太宰治らと同人誌を創刊し、日本浪漫派にも参加。作品は私小説だが、不幸な生い立ちやドロドロの恋愛ではなく、身辺の出来事を題材にして創作。病や貧困で苦闘の時代が長かったが、軍隊生活も帰還後の苦労も軽妙に描く。

家探し、お酒を求めての散歩。クズ屋に売った古釘の代金3円を持って何が買えるか町をうろついたり、妻に下半身の検査をしてもらったり、電車内で女性の膝小僧を観察したり。

「下駄の腰掛」

「私」は同人雑誌で男の性器は冷たい方が良いという記事を読んで、妻に調べてもらう。妻もバカ正直に従うが、温かいか冷たいか判断に困る。「私」は他人に見てもらう訳にもいかず、やけっぱちというかせっぱつまって、銭湯に出かける。しかし、営業時間までだいぶある。アイスクリームを食べたいがお金は銭湯代しかない。一度家に戻るのも何だし、銭湯の入口で自分の下駄の上に座って待つ。過去を回想。結婚当初のこと、数年前会った幼なじみの種畜業ことなど。そのうち銭湯開店。裸になってから石鹸を忘れたことに気づく。湯舟に一人だが、長く入っていられない。石けんのない手ぬぐいで体をこすっていると、今の分の有様が過去50年の人生を象徴しているように思う。

〈あと何年生きる――か知らないが、あと何年生きたところで、おそらくはこの調子で過ぎて行くのであろうように思われた。〉

文学回想「太宰治」では太宰の非合法活動や小林多喜二の死に言及して、当時の緊迫を伝える。

書名は囲碁好きの木山がよく色紙に書いた言葉から。駄目とは、黒白どちらが打っても陣地にならないことから、意味がない、役に立たない、という囲碁用語。解説の岡崎は木山をこう評する。

〈「駄目」を自認し、そこから作家人生において新しい「目」を打ち出したのだ。〉

(平野)