■ 安水稔和 『一行の詩のためには 未刊散文集1961~2016年』
沖積舎 3500円+税
神戸の詩人、55年間の散文。
Ⅰ 旅の話
Ⅱ 身辺雑記
Ⅲ 詩・ことば・歌
Ⅳ 絵画・映画・ジャズ
Ⅴ 去年今年(こぞことし)
書名はリルケの詩から。
1991年、60歳の安水は旅の途中、姫路で開催されていた〈ベン・シャーン展〉で、この言葉を見た。リトグラフ「マルテの手記」連作。詩は安水に向けられたことばでもある。〈一行の詩のためには〉
〈多くの都市を〉
〈多くの人々〉
〈多くの事物を〉
〈禽獣をしらねばならぬ〉
〈飛ぶ鳥の姿〉
〈小さな草花のたたずまい〉
〈まだ知らぬ国々の道を〉……。
安水も旅する詩人。旅の詩集、旅行記もある。自らの旅を思い返し、旅の語源を探り、「旅とはもともと楽しいものではなく、つらい苦しいものだった」と語る。
《生まれた時が旅立ちの時。生きていることが旅、避けられぬ異郷の旅。生きる旅の終りが旅の終りではあるまい。次の旅が始まるのだ、避けられぬ新しい異郷の旅が。そんな気がする。》
(平野)
〈詩人さん〉から本書を戴いた。驚きと喜び、感謝。オヤジにもクリスマスプレゼントが届いた。私にとっては、駄文を書き散らすな! という警句。
詩人は、一語一句一行を身も心も削って詠む。噛みしめて読まねば。