2017年1月22日日曜日

もう一度倫敦巴里


 和田誠 『もう一度倫敦巴里』 ナナロク社 2200円+税

話の特集版(1977年)を持っているが、未収録の「雪国」が入っているし、おまけの小冊子がついているので。


目次から
殺しの手帖  拳銃商品テスト、毒入り惣菜レシピなど『暮しの手帖』のモジリ
007贋作漫画集  漫画家の絵・着想も真似る
特集ギャラリー  世界の画家が漫画のキャラクターを描いたら
兎と亀  世界の映画作家たちがイソップ寓話をテーマに映画を作ったら
雪国  川端康成『雪国』の最初のシーン「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。……」を他の作家たちが書いたら

政治家の似顔絵で世相をちょっと突っついたり、ロックミュージカル配役に文化人たちをふりあてたり、メンズファッションのポスターにバカボンのパパを描いたり。でも、やっぱり「雪国」はうまいと思う。

 初めて読んだ時は、「笑撃」だった。贋作というにはあまりに知的でユーモアいっぱい。初期の作品だと50年前のものだが、今も古いと感じない。
 本職はデザイン・イラストだが、多彩な活動で知られる。そのうえ文学・芸術からサブカルチャーまで幅広い分野で造詣が深い。風刺やオチョクリではなく、ただ遊んでいる。遊びが作品になってしまう。

《「パロディ」って言葉をわざと使わないのはね、何か近ごろ、只の真似や亜流にすぎないものを「パロディをやったんだ」なんて本人が弁護するのに使ったり、評論家なんかもそんなふうに使ったりする風潮があるような気がして、ちょっと反発するんだな。それと、本来は「パロディ」って本当に権威を引きずり下ろすくらいの力があるものをそう呼ぶんじゃないかと思うんだ。それに比べれば俺のやってることなんか、やっぱり「モジリ」程度なんだなあ。でもそれが楽しいんだけどね。》

(平野)