勤務先から徒歩数分、真言宗の古刹・須磨寺に初詣。広い境内には源平の史跡、シベリア抑留者慰霊碑、阪神淡路大震災犠牲者追悼の碑、それに文学碑が多数ある。本堂脇に自由律俳句の尾崎放哉(1885~1926)の句碑が立つ。放哉は寺男として住み込んだ(1924~25)が、僧侶の権力争いのとばっちりで追い出された。
《こんな良い月を一人で見て寝る》
碑は師・荻原井泉水の筆、〈敦盛首洗池〉のそばにある。
放哉は帝大卒のエリートながら、酒癖が悪く、会社をしくじり、家族も離れる。井泉水や句誌同人の支援を受けながら、あちこちの寺で働くが、酒でダメになる。俳句の指導もしていたが、これも酒で評判を落とす。須磨寺にいても、いずれそうなっただろうが、不運と言えば不運。
初参り寺男ただ立っている
咳をして一人佇む寺男 よーまる
(平野)