■ 尾形亀之助 『美しい街』 夏葉社 1600円+税
松本竣介 画 巻末エッセイ 能町みね子
尾形の詩作品から55編。
尾形は1900年宮城県生まれ、42年没。ええとこのボンボンで放蕩者で貧乏して死んだ……というようなことよりも、残された文章を味わおう。
書肆店主が、「まず読んでほしい、何度も何度も読んでほしい」と推す。その言葉どおりにしようと思う。
「幼年」
夜明けの床の中でハモニカを吹きだした
子よ
可哀いそうにそんなに夜がながかったか
ブーブー ハモニカを吹くがよい
お前のお菓子のような一日がもうそこまで来ているのだ
「いつまでも寝ずにいると朝になる」
眠らずにいても朝になったのがうれしい
消えてしまった電燈は傘ばかりになって天井からさがっている
「美しい街」
街よ
私はおまえが好きなのだ
お前と口ひとつきかなかったようなもの足りなさを感じてかえるのはじつにいやなのだ
妙に街に居にくくなっていそいで電車に飛び乗るようなことは堪えられなくさびしい
街よ
私はお前の電燈の花が一つ欲しい
(平野)
《2日間だけの 海の本屋復活スペシャル》3月18日(土)19日(日) こうべまちづくり会館
毎日新聞で紹介してもらった記事、こちらで。平野はやっぱりボケーっと写っています。
http://mainichi.jp/articles/20170219/ddl/k28/040/259000c