2018年4月3日火曜日

本屋という「物語」を終わらせるわけにはいかない


 松本大介
『本屋という「物語」を終わらせるわけにはいかない』 
筑摩書房 1500円+税

 著者は宮城県盛岡市の本屋さん《さわや書店フェザン店》店長、1977年生まれ、盛岡出身。
《さわや書店》の書店員さんたちが見つけ出して売り上げを伸ばし、全国に波及してベストセラーになった本がたくさんある。一昨年は《文庫X》が大きな話題になった。一冊一冊の本と真剣に向き合い、その本を売りたい、多くの人に読んでほしい、という熱量が高い本屋。地域の読者に信頼されているということでもある。
 本書は《さわや書店》関係者による4冊目の本になる。

 松本は、入社事情と書店員経験、《さわや書店》仲間たちの活動、新店舗立ち上げ作業、自店と本の今後についてアイデアと覚悟を綴る。
 トイレットペーパー補充の話から始める。たとえ話。トイレと本にどんな関係があるのかについては本書を読んでください。トイレットペーパーを補充するということは、「次の人のために」「誰かのために」日常生活で当たり前にやるべきこと。松本はそのことを《さわや書店》で学んだ。
 本屋閉店廃業、売り上げ減少、ネット通販拡大、雑誌の休刊、取次会社も出版社も、業界全体がしんどい。ベテラン書店員は本来の仕事以上に雑務が増えている。一方、若い書店員たちは将来への希望があるだろうか、本を買って読む余裕はあるだろうか。松本は、「本屋に未来があるのだろうか」と自問する。

〈それでも後進を育てるしかない。そう自らに言い聞かせる自分がいる。僕たちが、受け継いできたものを伝えなければならない、と。まだ本屋という「物語」を終わらせるわけにはいかない、と。年のせいか、そんな使命感を持つようになった。〉

 今は「負け戦」で、松本の世代はその「しんがり」だと自覚している。「反転攻勢」の「先陣」を切る心構えもできている。彼らだけではなく、多くの書店員が現場で日々奮闘している。

(平野)
 私は《さわや書店》を本で知るだけ。同店・田口さん(『まちの本屋』ポプラ社、2015年)の大阪トーク会に行った。
 お気楽な本屋引退者は、近頃現場のことを夢に見る。いちいち覚えていないが、苦情やトラブルで、毎回「なんで~!」と思って目を覚ます。