2018年4月8日日曜日

みんな昔はこどもだった


 池内紀 『みんな昔はこどもだった』 講談社 1950円+税

 
 芸術家、作家、学者、俳優たち15人の評伝。「大きな、個性的な仕事をした人たちの幼少期」をたどる。

〈それぞれが生きた時代の出来事や世相や風俗が、まさに少年・少女のまなざしで受けとめてあるだろう。また受け手の背丈に応じて正確に縮小されている。小さないきものの小さな日常から見えてこないか――そこでは誰もが即席の詩人であり、即席の思想家であり、即席の科学者であって、何が自分にとって必要であり、何が無用か、よく知っている。必要以上は願わない。そんな幼い者たちの生理を、なるたけ損わずに写しとろうとした。〉

「手塚治虫 永遠のひとりぼっち」
 手塚治虫は宝塚育ち。代表作のひとつ「リボンの騎士」などから、宝塚歌劇に大きな影響を受けたと言われる。手塚自身もそう書いている。
 池内は手塚死後公開された手作りの図鑑に《手塚治虫》の芽生えを発見する。手塚少年は昆虫好きで、ペンネームも甲虫オサムシにちなむというのもよく知られる。並みの虫好きではなかった。克明に観察して写生し分類、自分で図鑑を制作した。息抜きのクイズのページもあった。
 手塚治虫記念館で上演される少年時代を描くアニメで、いじめられっ子の少年はオサムシに誘われて旅をする。池内は幼い頃から手塚マンガに親しんできて、主人公たちが《永遠のひとりぼっち》だと指摘。
 池内はドイツ文学者。ゲーテ「ファウスト」について、手塚治虫マンガ、手塚富雄の名訳、池内紀(おさむ)自身の訳の話も面白い。
 向田邦子《中廊下のある家》、稲垣足穂《飛ぶ機械》、宮本常一《金魚の島》、池波正太郎《ポテ正》、幸田文《紅い一点》、澁澤龍彦《のぞき眼鏡》、野坂昭如《道化志願》他、それぞれの幼少期に立ち入り、「最初の一歩」から「最後の一歩」までを探っていく。

 ヨソサマのイベント
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テーマは稲垣足穂。
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(平野)
《ほんまにWEB》「奥のおじさん」更新。