■ 吉田篤弘 『あること、ないこと』 平凡社 1800円+税
〈エッセイでも小説でもなく、そのどちらでもあって、どちらでもない本〉
〈詩のようであったり、物語の一部のようであったり、事典のようであった、身辺雑記のようでもあり――。〉
百科事典形式の小説、タイトルだけ並べて本文のない小説集など。
私は作り話とわかって読んでいるのだが、それでも読んでいて一体どうなっているのか、読解できない。自分の頭がおかしくなったのか、とも思ってしまう。特に「まっさかさま」は、接続詞で文章が続くのに話がつながらない。別の話が次々出てくる。ひょっとして前出のタイトルだけの小説の本文がここで出現したのか、と何回もページを戻る。というのも、少し前のページに【申し分のない料理に胡椒をかけた男】という章があり、タイトルだけの小説のなかに似たタイトル「申し分のない料理に胡椒をかけた私」があったから。でもね、話と内容の合うタイトルがありそうでない。混乱、錯乱して読み終わる。「あとがき」を読んで少しほっとする。吉田は子どもの頃、一人で壁新聞をつくって、ニュース、コラム、小説、まんが、広告、レイアウトもデザインも全部やっていたそう。
〈そうしたものを、毎日のようにつくっていたのが自分のルーツなので、自分がなんとなく目指している創作のかたちは、そうした様々な文章がひとつの紙面に集められたものなのです。〉
冒頭の「あの灯りのついているところまで」で、語り手が買った古本『ビスケット・コント』著者の言葉を紹介している。
「この取るに足らない話の集まりを、ぼくは〈ビスケット小話〉と呼んでいる。子供たちにビスケットのおやつを配る心持ちで書いたのであるが、その境地に至るまでには長い紆余曲折があった」
素直な気持ちで読めばいいのだ。
「あの灯りの~」に表された吉田の思いを、「あとがき」で知る。
(平野)
本を読みながら居眠りして、それでも目は字を追っているのだけれど、ガクンときて目が覚めると、本とまったく違うストーリーを読んでいたことに気づく。今の話なに? と思うのだが、もう内容は思い出せない。そういうことがしょっちゅうある。