2018年6月17日日曜日

国体論


 白井聡 『国体論 菊と星条旗』 集英社新書 940円+税


白井は『永続敗戦論』(太田出版)で、日本の対米従属体制は戦前の軍国主義支配から連続している、と提起。支配層は「敗戦」を「終戦」と言い敗北を認めず、それゆえにアメリカに従属、国民はその構造を経済成長と東西冷戦のおかげで見ずにきた。

「戦前の国体」は、〈万世一系の天皇を頂点に戴いた「君臣相睦み合う家族国家」を理念として全国民に強制する体制〉。反対者・批判者を倒し、破滅的戦争をやめることもできず、多大な犠牲者を出し、〈無惨きわまる敗戦〉と改革を経て、日本は「国体」と無縁になった。しかし、白井は〈現代日本の入り込んだ奇怪な逼塞状態を分析・説明することのできる唯一の概念が、「国体」〉と考える。「国体」は再編されて生き残っている、と。それは日本とアメリカとの関係。アメリカが頂点にいる。

〈……戦後の天皇制の働きをとらえるためには、菊と星条旗の結合を、「戦後の国体」の本質として、つまり、戦後日本の特異な対米従属が構造化される必然性の核心に位置するものとして見なければならない(後略)〉。

 白井は日本近代史を前半・後半に区切り、明治維新から敗戦までの「戦前の国体」=天皇と国民の関係と、敗戦から現在までの「戦後の国体」=アメリカと日本の関係、それぞれの形成・発展・衰退の過程を見る。「戦後の国体」も「崩壊」の局面に差し掛かっている、と説く。

〈「戦前の国体」は、その内的矛盾を内側から処理することができず、解決を体外膨張に求め、そして破滅した。「戦後の国体」は、無論今日では単純な体外膨張など、あらゆる意味で不合理で不可能なものとなっているがゆえにかたちは異なってくるが、やはり同様に内的矛盾を内側から解決する力を欠き、破滅へと向かっている。〉

 原発事故、政権による民主主義無視、市民レベルではヘイトなどの差別、貧困など、私たちは既に「崩壊」の予兆を実感している。
 では、日本、日本人に希望はないのか。
 白井は、冒頭で今上天皇生前退位の「お言葉」に衝撃を受けたと告白。最後に天皇の決断に「人間としての共感と敬意」を表明し、応える。民衆の力、民主主義を信じる。

(平野)
《ほんまにWEB》「奥のおじさん」更新。