■ 『井伏鱒二全詩集』 岩波文庫 600円+税
岩波文庫夏の一括重版の1冊(同文庫初版は2004年)。神戸の新刊本屋さんでは売り切れていた。筑摩版『厄除け詩集』を持っているので、まあいいかと思っていたら、大阪堂島の古本屋《本は人生のおやつです!!》で見つけた。店主は新刊も直接出版社に交渉して仕入れている。
井伏の詩は、漢詩の翻訳、〈……「サヨナラ」ダケガ人生ダ〉などで知られる。
はじめて読んだとき、「懐君属秋夜 散歩咏涼天」の訳は意味がわからなかった。「ケンチコヒシヤヨサムノバンニ アチラコチラデブンガクカタル」
後に、「ケンチ」が親友中島健蔵のことで、彼の体調を気遣っていたと知って、驚いた。
「小魚の群れ(こうをのむれ)」
或る日の雨のはれま、/路の上に竹の皮の包がおち、/なかからつくだにがこぼれ出た。(後略)いろいろ解釈ができるだろう。生と死、大量の死体、残された者の悲しみ……。1925年、この作品は改稿、「つくだ煮の小魚」に。
井伏の漢詩訳には参考書があるという調査研究があって、本書解説者はそのことを考察、井伏訳の自由大胆、推敲の苦心を読み取っている。参考書については、井伏自身も父親のノートの存在(江戸時代の俳諧師による和訳を抜き書き)を語っている。
(平野)《本おや!!》のフェアは「本のヌード展」、〝脱がすとすごい本の古本市〟を同時開催(ともに10.20で終了)。本の装丁や函やカバーと本体表紙のギャップ、装丁家の工夫(いたずら)に着目して、出版関係者たちが選書・出品。
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