2018年12月2日日曜日

神戸 闇市からの復興


 村上しほり 
『神戸 闇市からの復興  占領下にせめぎあう都市空間』 
慶應義塾大学出版会 4200円+税



 著者は1987年生まれ、神戸育ち。神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究員、都市史・建築史。

目次

序章 海港都市・神戸をめぐるせめぎあい

第一部 戦災と占領――近代都市の戦後  第一章 海港都市の近代化  第二章 戦災と復興の初動  第三章 GHQによる神戸の占領政策

第二部 GHQ占領下の闇市  第四章 闇市の生成と変容――三宮・元町・湊川新開地  第五章 記録・表象にみる闇市

第三部 闇市からの復興  第六章 在日朝鮮人のサバイバル――三宮国際マーケット  第七章 業者の台所  第八章 轟音直下のマーケット――鉄道高架下のふたつの店街  第九章 引揚者の拠り所―湊川公園商店街  第十章 暮らしと観光の復興

終章 戦後神戸の都市空間とせめぎあい――占領・復興・震災後

〈本書は、第二次世界大戦敗戦後の神戸にあらわれた「闇市」の発生から衰退までの軌跡を辿り、さらに闇市が姿を変えて新たな商業空間として根付くまでの変容過程を描く。〉

 焼跡に出現した「闇市」。市民は自ら復興しなければならなかった。
 港を中心に発展した神戸はハイカラで華やかなイメージがある。しかし、阪神大水害をはじめ数々の水害に見舞われ、大空襲、大震災を経験して、市民はそのたびに立ち上がってきた。戦後の混乱からも。その時代、GHQ占領下の記録・研究が少ないそうだ。

〈本書は、この歴史の空白として抜け落ちた占領下神戸における闇市の具体相と行政による復興策やGHQ占領との相克を、戦後都市に集散した民衆の視点を中心に描き出そうとするものである。〉

 三宮は行政、ビジネス街、ショッピング街、鉄道ターミナル、まさに神戸の中心地。戦争後、「日本一の大闇市場」と呼ばれた「闇市」があったことを覚えている人も少なくなった。JR高架下商店街(元町・神戸駅間)の耐震化工事による立ち退き、三宮東地区再開発、阪急電鉄神戸三宮駅工事、JR三ノ宮駅建て替えなどなど、三宮の様相が変わろうとしている。今、「空白」の歴史を掘り起こしておかなければならない。
 カバー写真は元町駅高架下から東に広がる闇市。

 著者・村上さん企画・監修の展覧会
《GHQと神戸のまち》
2018.11.20(火)~2019.1.6(日) 
デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)2階ライブラリー
休館日:月曜日(祝日開館、翌火曜日休館)、12.291.3
入場無料



(平野)