2018年12月31日月曜日

上方らくごの舞台裏


 小佐田定雄 『上方らくごの舞台裏』 ちくま新書 
940円+税

 小佐田は1952年大阪生まれ、落語作家。77年、桂枝雀のために書いた「幽霊の辻」が最初の作品。本書では、上方落語四天王(六代目笑福亭松鶴、桂米朝、三代目桂春團治、桂小文枝=五代目文枝)をはじめ、今は亡き師匠たちの芸、工夫、人柄などのエピソードをまじえて、38の演題を解説する。お囃子さんのこともあり。視聴可能な音源・映像もくわしく紹介。

落語は歌舞伎や義太夫など他の芸能の影響を受け、芝居を面白おかしくパロディ化したり、芝居を踏まえたオチがあったり、お客もそれをわかって落語を聴いていた。私は知識がなく、マクラで説明してもらえるとありがたい。でも、それは野暮というもの。

落語家たちは時代時代の流行や世相を噺に取り入れてきた。昭和初期にはピアノ演奏で日本舞踊の場面をダンスにしたり、長唄をジャズにしたりしたそうだ。

現役噺家の新作から「例外」として「山名屋浦里」のことを。2012年、タモリが自らの番組で吉原に興味を持ち、独自に調べて笑福亭鶴瓶に落語化を直談判。小佐田と弟子・くまざわが相談に乗り、くまざわが意欲を示し台本。15年鶴瓶が高座で披露すると、中村勘九郎が芝居化を申し出て、今度は小佐田が台本を書いて歌舞伎座で上演。伝統芸能の王道・歌舞伎が落語を取り入れた。

本書で、「手水まわし」(田舎の宿屋が大阪の客人が要求する朝の顔洗い・歯磨きセット「手水」がわからず、大阪まで確かめに行く話)が若旦那と奉公女性との恋物語の後半部と初めて知った。
(平野)
 災害の多い年でした。個人的には前期高齢者になり、孫の成長を喜び、美術展や落語を楽しみ、WEB海文堂書店アーカイブを公開でき、友との付き合いが継続し、良い本に出会い、平凡ながら穏やかに過ごしました。
 来年が良い年でありますよう。