2018年12月6日木曜日

〈異〉なる関西


 『〈()〉なる関西』 日本近代文学会関西支部編集委員会編 田畑書店 2800円+税

 同委員会が企画したシンポジウム「《異》なる関西――1920.30年代を中心として――」(201517年、全4回)をまとめたもの。

〈この連続企画のねらいは、(一)一九二〇・三〇年代の「関西」に育まれた文芸文化を主たる対象に、(二)埋もれた歴史資料や文化資源を発掘しつつ、(三)人・メディア・社会現象などの関係性を、横断的かつ立体的に再構成することで、(四)人々がイメージしてきた「関西」イメージや認識の枠組みを根本から問い直すことにあった。つまり、「〈異〉なる」関西〉とは、既成の「関西」表象を差()化し、更新しようとする試みだったといえる。〉

 関西と言っても、地理的な「関西」を指す場合があるし、明治維新・遷都による東京中心の政治・経済・文化に対抗する「関西」がある。
 
……両大戦に挟まれた一九二〇・三〇年代の日本は、関東大震災による甚大な被害にもかかわらず、世界規模の経済変動を背景に、急激な産業化・都市化を推し進め、それに伴う社会基盤の変化は、そこに住む人々の生存の条件を根本的に変えていった。こうした社会変動は、「関西」においてはいっそう顕著で、当時、「東洋のマンチェスター」と呼ばれていた大阪が、市域を拡大して東洋一の「大大阪」を形成し、一九二五年に「大大阪記念博覧会」を開催したことは、それを象徴する出来事だったといえる。(後略)〉

「関西」文芸文化の多様な表現者たち、「関西」という場から起きた運動、発信したメディア、その読者など、様々な視点から「関西」を捉える論考の数々。

目次
第一章 移動と差異化  織田作之助と川島雄三(酒井隆史) 〈大阪人〉の視差――直木三十五「五代友厚」をめぐって(尾崎名津子)他

第二章 場と営み  宣言としての言葉をどう再読するか――関西沖縄県人会機関誌『同胞』を読む(冨山一郎)他

第三章 メディアと文化環境  神戸モダニズム空間の〈奥行き・広がり・死角〉をめぐる若干の考察(大橋毅彦)他

第四章 散種されるモダニズム  「理想住宅」と「煌ける城」――一九二〇年代・阪神間の建築表象をめぐって(高木彬) 複数の神戸を散歩すること――横溝正史『路傍の人』のモダニズム(山口直孝)他

 神戸関連では他に、賀川豊彦と労働運動、『大阪朝日新聞神戸版』、及川英雄。詩人・季村敏夫さんのコラムもあり。

(平野)私が思いつくのは、東京に負けへんで~というコンプレックスとか、おもろいおっちゃん・おばちゃんとか、お笑い、阪神タイガース、コテコテの人情。でもね、京都、大阪、兵庫・神戸、奈良、和歌山、それぞれ風土が違うし、そのなかでも地域によって特色がある。「上方文化」と言っても、京都は別格みたいだし。「関西」でくくれない。
 Books隆文堂・鈴木さんの紹介で本書を知った。

●ヨソサマのイベント
 ギャラリー島田 本年最後の展覧会
12.8(土)~12.19(水) 11001800 最終日は1600まで

 林哲夫作品展:父の仕事場 
〈近作油彩画、コラージュ、ブックアート、そして、父の仕事場にあったオブジェたち。〉
 
 

 40周年のしめくくりに――蝙蝠料理エトセトラ――
〈40年の歴史をコレクション・画像・写真・資料で様々に振り返る展示とともに、スタッフが蝙蝠を自在に料理するイベントを企画します。レシピの詳細はお楽しみに。〉
 
 

 トーク会など有料イベントもあり。詳しくはこちら。
http://gallery-shimada.com/

平野註、「蝙蝠」とは島田社長のこと。