■ 髙田郁 『あきない世傳
金と銀(六)本流篇』
ハルキ文庫 580円+税
人気シリーズ、1年ぶり。相変わらず主人公に艱難辛苦が襲う。
大阪天満の呉服商「五鈴屋」女房・幸に不幸と試練を与える。今回はいきなり店主で夫・智蔵急死。でもね、幸は強い、勁い。周囲の人たちにも助けられる。
大坂には女性は店主にも家持ちにもなれない「女名前禁止」という掟がある。「五鈴屋」には男性の跡取りがいない。幸は呉服仲間に3年の猶予を訴え、理解を得て、7代目店主となる。病気療養中の元番頭・治兵衛は、「大きな時代の流れを読み取る豪気と、日々の営みに目ぇ光らせる細心」を説く。
幸は夫と約束した江戸進出を果たすべく、焦らず、じっくり、考え、江戸での商売・習慣・人の気質を分析する。赤穂義士が2年かけたように幸も2年かけて調査し江戸入り。さらに半年以上かけて赤穂義士の討ち入りの日に合わせて開店する。奉公人たちも幸の戦略を理解し、それぞれが考え動く。
開店前夜、幸は自分と皆に言い聞かせる。
〈「誰かの恨みを晴らすわけでもなく、また、誰かの命を奪いにいくわけでもない。商いの戦場へ『買うての幸い、売っての幸せ』を掲げて、智恵を武器に討ち入るのだから、笑って勝ちに行きましょう」〉
帯の著者の言、「いざ! 江戸へ討ち入りです!」
(平野)