■ 小林ふみ子 『へんちくりん江戸挿絵本』
集英社インターナショナル新書 860円+税
ヘタウマ漫画あり、おかしな文様あり、文学史・美術史本流には出てこない江戸の出版物からへんちくりんな挿絵を紹介。それも豊かな出版文化があったればこそ。絵巻や挿絵本によって民衆に広く知識や常識が共有された。その知識・常識を才人たちが遊び心と頓智を利かせて面白がる。古典文学、思想学問、健康実用書、それに春本まで茶化す。神仏も例外ではない。それを受け入れる読者がいた。
七福神が吉原に通い、千手観音は山師と突飛な商売をし、仏さまも品川遊郭で宴会。
〈……とはいえ、それは、当時の人びとが一般に神仏を信じていなかったということではありません。むしろ神仏が身近にあり、世の人の信仰を集めていたからこそ、こうした作品がおかしいのです。笑いの前提に、神さま仏さまがそんなことをするはずがないという権威があります。〉
文学、学問を茶化しパロディにするのも、江戸の人たちの「知」に対する関心、好奇心の現われ。奇想天外、独創的、博学、多様な作者たちが真面目に徹底的に遊びふざける。
(平野)通勤電車読書、春画が出てきてヂヂは恥ずかし本閉じた。