2024年2月18日日曜日

広重ぶるう

2.16 週末家人は横浜の孫に会いに行く予定だったが、孫発熱で中止、がっかり。

2.17 朝図書館。先週司書さんにお願いしていた資料撮影の許可おりる。

 午後大阪梅田「川口正さんを偲び感謝する会」2022年逝去された関西出版界・書店界の相談役・まとめ役。遠方からも出席者多数あり、総勢64名。愛された方だった。今後出版関係者のどなたかが亡くなったとして、こんなに人が集まってくれるだろうか。久しぶりに見るお顔がたくさん。話できた人のなかには、家族が増えた人、亡くした人もあり、人生悲喜こもごも。ヂヂはGFたちとはしゃいでおりました。



 会の前に紀伊國屋書店、さすがにお客さん多い。探すに探せず、検索機に頼るのだが、タッチペンが思うとおりに動かない。

 

 梶よう子 『広重ぶるう』 新潮文庫 850円+税



 2022年新潮社から単行本。新田次郎文学賞受賞。

 江戸時代末の浮世絵師・歌川広重を主人公にした人情もの。広重は「東海道五拾参次之内」や「江戸名所百景」で知られる。

 広重こと安藤重右衛門は13歳で定火消し同心、三十俵二人扶持を継ぐ。役目のかたわら歌川豊広に入門し、絵師として身を立てたいが、売れない、注文がない。浮世絵界の中心である歌川一門には役者絵・美人画の豊国、武者絵の国貞というスターがいる。また、葛飾北斎が高齢ながら健在、「富嶽三十六景」で江戸の町を賑わせる。

北斎が使ったプロイセンの絵の具・ベロ藍は鮮やかな青色、水に溶けやすい(プルシアンブルー)。広重は、自分ならこの藍を活かしてこれまでとは違う名所絵を描ける、名所絵で化ける、と版元を口説く。腕利きの摺師・寛治にさらに腕を磨かせる。

〈重右衛門は震えた。/「これだ、これだよ」/藍が空を覆っていた。下に来るほどそれは色を失くし、全面の風景と溶け合っていた。一文字ぼかしよりも、うんとぼかしの幅が広い。下げぼかしとでもいうべきか。その逆なら上げぼかしだ。空だけではない、この摺りは、海にも川にも趣が出せる。〉

 広重は寛治を労う。

〈「なあなあ、広重ぶるうってのはどうだえ?」/「なんですそれは?」/「いいんだいいんだ、こっちの話だ」〉

「北斎ぶるう」があるなら「広重ぶるう」といわしめてやる。名所絵・広重のスタートである。

 以上、前半のハイライト。中盤後半、広重を艱難辛苦が次々襲う。妻、一番弟子、家督を譲った叔父(祖父の後妻の子)が亡くなる。後添えを得て、妹の子を養子にする。その妹の元夫=僧侶の借金後始末。描きたくなかった枕絵でしのぐ。社会は天保の改革、安政大地震、幕末の動乱の時代。

 来月NHKでドラマ化。

(平野)