2024年2月8日木曜日

安吾さんの太平洋戦争

2.1 2月だ、節分だ、瀬戸内の島から渡って来たオニではなくみずのわ一徳とうみねこ堂書林。横溝正史のことなどいろいろお願い。

神戸市文書館に行って一昨日の続き作業。古い神戸市街図いろいろ出してもらう。竹中郁が出版記念会の後行ったダンスクラブの場所がわかる。

一徳社主は神戸に来る前に愛媛県西条市の本屋さん「佐藤日進堂」を訪問。創業者であるおじいさんは神戸元町にあった「川瀬日進堂書店」で修業し、故郷で開業された。ヂヂが海文堂時代に「川瀬」を調べていて、「佐藤」さんから資料を提供いただいた。「佐藤」さんにはまだまだ「川瀬」関連資料が保存されていて、一部店頭に展示している。一徳社主が改めて取材に行く由。



 熊内の文書館を出ると突風、歩行者は飛ばされそう。新神戸駅で別れて、ヂヂ三宮で家人の雑誌買って帰宅。

2.3 午前中図書館。司書さんにまた頼みごと。ご面倒かける。

 午後買い物。花森書林は今年初訪問、金子兜太聞き書き『語る兜太』(岩波、2014年、3刷)。元町駅前、BIG ISSUE472、特集〈マンガで、社会の問題を読む〉。今回は販売員さんにすんなり会えた。本屋さん、注文品他。



2.4 「朝日歌壇」より。

〈図書室でいつも絵本を読んでいた子が箱根路の一区走りいる (埼玉県)中里史子〉

「朝日俳壇」。

〈真民の詩集と出会ふ冬籠 (高槻市)若林眞一郎〉

2.6 午前中臨時出勤。午後買い物がてら、久々に陳舜臣アジア文藝館。休館みたい。鍵かかり、案内掲示なし。本屋さん、家人の雑誌は雪のため未着、文庫と新書。

 半藤一利 『安吾さんの太平洋戦争』 ちくま文庫 900円+税



 2009年刊『坂口安吾と太平洋戦争』(PHP出版社)に加筆修正して、2013年『安吾さんの太平洋戦争』(PHP文庫)。今回安吾の「特攻隊に捧ぐ」収録。

 昭和の戦争中、坂口安吾は文壇で売れていなかった。おかげで従軍やら大政翼賛会やらにお呼びがかからなかった。その時代、安吾は何をしていたか。碁を打ち、酒を呑み、女性に溺れた。一方で、万一に備えて身体を鍛えていた。歴史研究をしていた。

文壇・軍部から注目されていないおかげで不条理な時局に言いたいことを言い、書いた。本土空襲を予想し、大艦巨砲より飛行機と見通した。そもそも日本人に戦争を徹底的に戦い抜く資質があるか、敵に対してたぎるような憎悪を持続できるか、と問うた。戦後の「堕落論」は思いつきではない。国破れて、家族亡くして、衣食住何にもなし、武士道も道徳もない、お上は助けてくれない。それでも生きねばならない。「生きよ、堕ちよ」と。

〈人間は変りはしない。ただ人間へ戻ってきたのだ。人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。〉『堕落論』

 半藤は「歴史探偵」を自称。歴史史料の欠けた部分を推理して補う。編集者になってすぐに超人気作家・安吾の原稿取りに行かされて以来、「安吾の弟子」を自認する。

 安吾曰く「歴史というものはタンテイの作業と同じものだ」。「チミツで正確なタンテイ眼があってこそはじめて史料を読む仕事が生きた学問となるのである」。

 冒頭、半藤は安吾の純愛物語をタンテイする。安吾は恋しい女性への求愛と失恋を「二.二六事件」当日の出来事として何度も作品に書いているのだが、あまりに劇的。どこまで真実か?

(平野)