2.24 髙田郁『星の教室』 角川春樹事務所 1600円+税
著者が小説デビュー以前、漫画原作を土台にした作品。25年ほど前に大阪市立天王寺中学校夜間学級を長期取材した。
主人公・さやかはレンタルビデオ店アルバイト中、もうすぐ二十歳になる。中学一年生の時、いじめの標的になり不登校、卒業証書を受け取っていない。アルバイト先で履歴書を求められるたびに退職を繰り返してきた。店で「学校」という夜間中学が舞台の映画を訊ねねられて、その存在を知る。意を決して学校の様子を見に行く。
生徒たちはそれぞれ事情があって学校に行けなかった。学べなかった。それを自己責任と突き放してはならない。学歴だけの問題ではない。無償かどうかでもない。読み書きから始める人がいる。日本語を学ぶ外国生まれの人もいる。学校という場所、先生・級友・家族や周りの人たち、学ぶことの大切さを改めて知る。
J堂、この本は文芸書で置いてほしい!
本屋さん、注文していた『石垣りんの手帳 1957から1998年の日記』(katsura books、3600円+税)購入。石垣りん(1920~2004年)、高等小学校卒業後、日本興業銀行に就職。ずっと働きながら詩作。遺言により、原稿など遺品は故郷の静岡県の南伊豆町立図書館に寄贈。「石垣りん文学記念室」が設置されている。本書は詩人が愛用していた手帳(1957、65、68、71~96、98年)を撮影して公開。毎日の日記とメモ、仕事のこと、家族、買い物、金銭出納、詩の仲間のことなど記録。ここからたくさんの詩が生まれた。
詩仲間では谷川俊太郎と茨木のり子がしばしば登場。なかよしだった。本書に谷川が寄稿する予定だったが、昨年11月谷川逝去。2005年2月7日、石垣の「さよならの会」で谷川が朗読した詩が掲げられている。
「石垣さん」
〈何度も会ったのに/親しい言葉もかけて貰ったのに 石垣さん/私は本当のあなたに会ったことがなかった/きれいな声の やさしい丸顔のあなたが/何かを隠していたとは思わない/あなたは詩では怖いほど正直だったから〉
2.25 こいしゆうか『くらべて、けみして 校閲部の九重さん 2』
新潮社 1200円+税
出版社「新頂社」校閲部(新潮社同部がモデル)を舞台にしたコミック。「くじゅう」さん。「校閲」とは、文字の間違いだけではなく、文章の間違いはないか、歴史的事実の誤認はないか、話の前後でつじつまが合うか、時間のズレはないか、他者の引用文は正確に適切に用いられているか、などなど調べて、誤りがあれば編集者・著者に質す。正す、直す。「校」には比べる、考える、正す、の意味がある。「閲」も、考える、けみする=調べる、改める。
(1)では校閲の仕事内容や苦労が描かれた。本書では編集者、著者との軋轢というか、表現の自由とか人権意識の問題に関わる。
2.26 やりたい放題米国大統領。ロシアのウクライナ侵攻は終結するのか。
「朝日新聞」2025.2.26、エマニュエル・トッド(フランスの人類学者・歴史学者)インタビュー「敗北する米国」より。
「私たちは世界史の転換点を迎えています。米国はロシアに対して、非常に屈辱的な敗北を経験しつつあります。(後略)」
米国主導の経済制裁が失敗し、ロシアが持ちこたえ、同盟国欧州が深く傷ついた。日本はどうなる?
「屈辱的な経験をする米国は、本来はより大切な存在になるはずの弱いパートナー国に対して、まるでいじめっ子のような態度に出ることが予想されます。(後略)」
(平野)