2025年2月11日火曜日

下垣内教授の江戸

2.6 雛人形お出まし。



 買い物帰り、元町商店街で呑み仲間の弁護士さんとセ~ラ編集長に遭遇して、冗談ばっかりの立ち話。

2.8 図書館で海文堂顧客の学校図書館司書さんとばったり。以前は中学・高校担当だったが、現在は系列の大学図書館勤務だそう。しばし思い出話。

 午後買い物、雪が舞う。いつものパン屋さん、馴染みの従業員さんが間もなく異動と聞く。ヂヂの心にも雪がちらほら。

 青山文平 『下垣内(しもごうち)教授の江戸』 講談社 1900円+税

 時代小説と思っていたが、「教授」とあるし、冒頭は昭和5年、新聞記者・守屋の語り。昭和恐慌の真っ只中、守屋は小説家を目指す。会社を辞めるその日に書いた記事は、映画館の男女席撤廃決定と、年始に亡くなった下垣内邦雄に関するもの。下垣内は東京美術学校、帝室博物館で要職を務め、「当代きっての日本美術の目利き」と評された人物。生前、守屋取材時に同郷=武州多摩近郷とわかる。下垣内がかつて美術品を見せてもらったという家は親類だった。そこから下垣内の昔語りが始まる。

「俺は人を斬ろうとしたことがあるんだよ」

下垣内は名主の家に生まれ、10歳から江戸で剣術修行の他、一流の師匠のもとで書、画、聞香(もんこう)、古琴(こきん)、茶などを学んだ。剣術は北辰一刀流中目録免許を授かる。年の離れた兄が名主を継ぎ、農業経営他、絹を商い、農兵隊の指揮もする。幕末動乱の時代、浪人や無宿、博徒らが村を襲う。兄は武州一揆で3人斬ったと告白する。兄はどんな思いで人を斬ったのか、その後の心情は? 斬ったことのない自分は兄に寄り添うしかないと思った。

兄を含め、名主たちは文化に造詣深い。外国人と交易するし、交際もするから攘夷派に狙われる。下垣内は幼なじみに紹介されたフランス商人に西欧流の美術鑑賞の手ほどきを受ける。

兄は名主の地位を捨て、商いの道に進む準備をしていたところ、鉄砲の手入れ中に暴発して急死。兄の思いを理解するべく、自分も人を斬るため旅に出る。不良の徘徊浪人・中里を追う。

 背景に江戸の経済がある。外国との貿易で経済の指標は米からカネに移っている。カネは金持ちに流れ、一揆の一因である。江戸郊外・関東は大名家が少なく、旗本領地にも武士はほとんど派遣されておらず、治安悪化するも、警察力が足りていない。

 さて、下垣内の人斬り旅、結末は?。 


                                                                           

(平野)