2026年10月22日木曜日

レインコートを着た犬

10.18 「朝日歌壇・俳壇」より。

〈本の中ねこがいっぴきやってきて「道教えて」とぼくに言うんだ (名護市)佐藤健太郎〉

〈年金で購(あがな)う本は僅かだが町に残りし本屋応援 (四国中央市)石川明憲〉

〈好奇心ありやすいつちよ本の上 (いわき市)中田昇〉

 ヂヂイの夢の話は退屈でしょうが。本屋店頭、同僚も登場。行儀悪いお客に怒鳴ってしまって、その声で目が覚めた。

「BIG ISSUE」537号、表紙は「ひつじのショーン」。アニメーション映画だが、人形もセットも手作り、撮影も手作業。特集は〈お米の国で米を作る〉、日本の食と農業を考える。



10.20 家族以外で普段接するのは、ご近所さん、仕事先、買い物先の人たち。ほとんど挨拶のみのうっすーい関係。本屋時代の人たちとはイベントや飲み会ある時くらい。久しぶりにギャラリー島田発送作業の呼び出しあり。

 

吉田篤弘 『レインコートを着た犬』 中央公論新社 2300円+税



〈月舟町の物語〉シリーズ第三作。2015年単行本、中央公論新社、18年中公文庫。加筆、訂正して、「あとがき」を加える。

 今回の語り手は「月舟シネマ」の番犬・ジャンゴ。著者の言うには、これまでの登場人物は脇にまわってもらって、隅にいた人でなるべく純朴な「子供」の心を持った人に語ってもらおうと、「月舟シネマ」のアルバイト青年・直を候補にした。しかし、筆が進まず、ジャンゴに目を付けた。彼は町の人たちとなかよしで、皆彼に話をする。彼は映画をたくさん見て知識豊富、難しい言葉は古本屋の親方の説教や独り言から学ぶ。「ジャンゴ」とは直が尊敬するギター奏者の名。 

映画館のマスターが失踪し、直が引き継いで上映している。そこに町の人たちが集まって話が進行。映画館には映画館の悩みがあり、古本屋にも食堂にも町の人たちにも変化や時代の波が押し寄せてくる。人間の世には無情の雨というものがある。ジャンゴも雨の日の散歩には初美さん(映画館でパン販売)にレインコートを着せられる。彼は着たくない。近所の犬では靴屋の秋田犬・テツ君が着ていなかったが、とうとう彼も着せられる。ジャンゴも雨降り先生の言に従い「ありのまま」着せてもらうことにする。

直は映画の紹介をするリーフレットを執筆している。それが評判になってテレビ局の取材が決まる。直の初心が書かれている。この世でいちばん映画館という場所が好き、映画館で映画を観ることが好き、毎日好きなことに浸っていられるこの仕事を選んだ、と。最後の上映を決意する。

〈直さんは本当の思いを封印している。ギター弾きへのあこがれを封印し、自分の神様の名前を私の名前に小さな目印としてのこした。/でも、時間が経つにつれて、〈ここ〉が変わってゆくように、直さんの思いも変化したのかもしれない。〉

 親方も初美さんも食堂のサエコさんもコンビニのタモツさんも……、それぞれが前進を開始する。作者の「あとがき」に従えば、「諦念ではなく、ひとつの希望」。

 次の〈月舟町の物語〉執筆中だそう。楽しみに。

(平野)